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経営・管理ビザ(在留資格)の申請-日本で会社設立する外国人向け
外国人の方が日本で経営者や管理者として活動する場合は、適切なビザ(在留資格)が必要です。
ここで紹介する「経営・管理」のビザ(在留資格)とは、日本で起業したり、 外国から取締役を招きたい企業の方が対象となります。この記事では、経営・管理ビザの取得条件や必要な書類について詳しくご説明します。
「経営・管理」ビザ(在留資格)とはなにか
経営・管理のビザとは、経営の意思決定・運用に関連する役職、もしくは企業の管理に該当する役職の外国人の方のためのビザ(在留資格)です。具体的には、企業の経営者・代表取締役・役員といった経営に参画する立場のポジションや、工場長・営業部長といった役職付きのポジションが対象になります。
外国人が日本で会社を設立したい。お店をはじめたい。海外の子会社を日本に設立して、トップに外国人をすえたい。工場長に外国人を採用したい。そうしたときに、適したビザカテゴリーです。
外国人を専門職で雇用する「技術・人文知識・国際業務」のビザ(在留資格)とは異なり、学歴や職歴の条件に関しては緩和されています。
「技術・人文知識・国際業務」ビザ(在留資格)については、外国人を雇用する就労ビザ・「技術・人文知識・国際業務」の在留資格をご参照ください。
しかし、新しく会社を設立する場合は、詳細な事業計画書を提出する必要があり、事業の継続性と安定性が厳しく審査されます。また、ビジネスの目的にあった事務所(オフィス)をきちんと確保できるかが、重要なポイントです。
条件を満たす資本金があれば、簡単に取得できるビザ(在留資格)でもありません。申請にあたっては、専門家のアドバイスを受け必要な書類を準備することが大切です。
経営・管理ビザ(在留資格)はどんな活動があてはまるのか
経営・管理のビザにあてはまる活動は、以下の3つです。
・日本国内において、起業する
新しくビジネスを日本ではじめたいと思う外国人の方は、経営・管理のビザを取得する必要があります。海外で活動する企業が、日本に子会社や支店を設立するときも、経営・管理のビザ(在留資格)が当てはまります。
・日本国内の既存の企業に投資して、経営に参画する
すでに日本にある起業に投資し、経営に参画し、日本に滞在したいと思う外国人も経営・管理のビザ(在留資格)を申請することができます。投資する対象の企業は日本法人の会社、もしくは外国資本の企業のどちらでも認められます。
・事業の管理に従事する
海外から外国人の方をよんで、監査役や工場長といった事業の運営・管理に参加してもらうさいに、経営・管理のビザ(在留資格)を申請できます。この「管理」に関しては比較的大きな事業規模の会社であることが求められます。
経営・管理する先の企業は、外資系の企業も認められます。経営・管理のビザで申請する際の事業とは、日本国内で合法的な事業である必要があります。法に違反していなければ、特別な業種の制限はありません。また、社団法人やNPO法人、公益法人のような非営利団体も申請の対象となります。
「経営・管理」ビザ(在留資格)を取得する条件
起業のケースでは、日本国内に事務所を有する、もしくは事務所が日本国内に確保されていること
および、以下のいずれかに該当することが必要です。
- ①資本金または出資の総額が500万円以上あること
- ②2名以上のフルタイムスタッフを雇用すること
- ③上記①もしくは②に準ずる規模であると認められること
法律上のルールは上記のとおりです。しかし、法人を設立する場合にはやはり①の資本金として準備をする方がビザ審査上安心です。一方、個人事業主や社団法人のように資本金の仕組みがない形態で事業する場合には、必然的に②の雇用条件を満たす必要があります。
個人事業主でも経営・管理ビザ(在留資格)申請できる
法人ではなく、個人事業主のケースでも経営・管理のビザを申請できます。しかし、事業への投資資金500万円以上、事務所の確保、事業の継続性や安定性という観点から、厳格な審査への準備が必要です。
事務所の確保について
事務所といっても、住所さえあればいいわけではありません。適した事務所の条件について、ご説明します。
経営・管理ビザの取得条件として、まず重要なのが事務所の確保です。これには、ビジネスの目的にあった事務所であることが重要です。形式的に知人の住所や自分をオフィスとして登録する方法では、ビザの申請許可を得ることは難しいといえます。ただし、自宅が2部屋以上あり、住居スペースと事務所スペースが明確に区別できている場合は問題ありません。
経営・管理ビザ(在留資格)を取得する際には、事務所選びから慎重になりましょう。
経営・管理ビザの取得には、事務所があることが条件
経営・管理ビザの取得には「事務所の確保」が絶対必要な条件です。
ビジネスを行うための事務所はすでに持っている、もしくはどこで行うかが決まっていなければいけません。新しく会社を設立したり、お店を始める際には、まずは事務所や店舗を探し契約をすることが、最初のステップです。
事務所の所在(住所)がわかるもの書類として、以下のものがあります。申請の際に、こうした書類が必要です。
- 不動産登記簿謄本
- 賃貸の契約書
- その他、住所がわかる資料
そして、事務所を確保し契約する時点では、次のことに注意しましょう。
- 貸主・借主ともに、スペースを事業目体で利用することに合意している
- 事業目的に合致したスペースが確保されている
- 会社の経営では、賃貸契約の契約者名は会社の名義であること
日本にいる知り合いの方や、雇用する予定の外国人の方の住所を形式的に借りるだけでは、ビザの許可を得ることはできません。事業目的にあったオフィススペースを探し、契約することが重要です。
バーチャルオフィスや、住居共有の事務所に注意
事務所は、電話を転送するだけのいわゆるバーチャルオフィスでは認められません。また、事業の継続性という観点から、マンスリーマンションといった月単位の契約のオフィスも審査を通るのは難しいといえます。
また、原則として事業スペースは住居スペースと分けてあるものが望ましいとされています。
もし住居スペースと共有のオフィスであれば、以下の点が守られていることが、不許可にならないためのポイントです。どのような場所が事務所として認められるかは、契約内容や実際の状況を踏まえケース別に判断されます。住居との共有スペースで事業を検討している場合は、ぜひお問い合わせください。
- 会社の名前が、入り口に掲げられている
- 事業に必要な机や備品がある
- 住居スペースと事業スペースが明確にわかれている
JETROやIBSCのインキュベーションオフィス
JETRO(独立法人日本貿易振興機構)やIBSC(対日投資・ビジネスサポートセンター)など、ベンチャー企業へのアドバイス・橋渡し等を行う団体のインキュベーターオフィスを一時的に利用するケースがあります。こうした起業支援を目的とし、一時的に事業オフィスとしてかりる場合は、事務所確保の要件に適合しているものとみなされます。
事業の規模について
経営・管理のビザを申請する事業は、資本金もしくは常勤スタッフの雇用において、条件を満たしている必要があります。
資本金の500万円は、借金でも大丈夫 ?
経営・管理のビザの取得条件として、事業への資本金または出資した金額が500万円以上必要とされています。500万円以上の出資がある場合は、雇用者2名という基準は免除されます。
このときの資金は、 親族からの借金も認められます。ただし、一時的な出資ではダメで、出資したお金を回収することは想定されていません。
また、お金の取得経路は審査の対象になります。留学生が親のお金を借りて起業するケースなど、その出資金をどこから得たのかを証明する必要があります。
雇用する外国人スタッフのビザは、「特別永住者」「配偶者」「永住者」など
事業規模の資本金・出資額が500万円に満たない場合は、フルタイムのスタッフを2名雇用する必要があります。その際、雇用するスタッフが外国人であれば、「特別永住者」「日本人の配偶者等」または、「永住者」「永住者の配偶者等」「定住者」などの居住資格を持っている外国人でなければいけません。
「技術・人文知識・国際業務」のような就労ビザの者の雇用は、カウントされないので注意しましょう。
「資本金500万」「フルタイムスタッフ2名」に準ずる規模とは
たとえば、フルタイムスタッフが1名しかいないケースでは、事業に250万円投下されていれば、もう1名を雇える規模として考えられます。
事業の管理に従事する際の実務経験
事業の管理に従事する外国人の場合、経営または管理にかかわる実務経験が3年以上求められます。この年数には、大学院で経営・管理にかかわる科目を学んだ年数も含めることができます。大学院は、日本国内・国外のどちらも対象になります。
事業の経営にかかわる場合は、実務経験や学歴はもとめられません。
ほかのビザ(在留資格)との区別
ケースによっては、経営・管理に従事する活動でも、ほかのビザ(在留資格)が優先されることがあります。
社内の外国人が、昇進して役職付きになるとき
企業が外国人の方を雇用するとき、その職種が文系や理系の専門職であれば「技術・人文知識・国際業務」のビザ(在留資格)が対象です。しかし、管理部門や取締役といった役職付きのポジションに外国人を採用する場合は、「経営・管理」のビザが優先されます。
仮に社内の出世で「技術・人文知識・国際業務」のビザを保有する外国人が役職付きになった場合、持っているビザ(在留資格)の満了期間までは「経営・管理」ビザ(在留資格)を新しく申請する必要はありません。
法律・会計業務ビザ(在留資格)
弁護士や公認会計士など、国家資格が必要な職種に外国人が従事するときに申請するビザです。仮に、外国人が弁護士事務所や会計士事務所を設立するケースにおいては、法律・会計業務ビザ(在留資格)が優先されます。
経営・管理ビザ(在留資格)の在留期間
「3ヶ月/4ヶ月」の短期、もしくは「1年/3年/5年」のビザが許可されます。許可される年数は、申請する企業のカテゴリーおよび条件によって異なります。
会社設立前の外国人のための4ヶ月経営・管理ビザ(在留資格)
4ヶ月の経営・管理ビザは、平成26年に新設されたカテゴリーです。
事業を行う準備が出来ていると認められる場合には、会社を設立する前でも4ヶ月の経営・管理ビザが許可されます。しかしこの申請は日本に銀行がなく、資本金を出資できない方向けの申請となります。ですが、「事務所の確保」はしなければなりませんので、日本国内に滞在している人に協力してもらう、もしくは事前に短期ビザで来日する必要があります。
申請に必要な書類
経営・管理ビザへの申請に必要な書類は、企業の属するカテゴリーによって異なります。
【企業区分】
- カテゴリー1
- 日本の証券取引所の上場企業
- カテゴリー2
- 前年度の源泉徴収税額が1,500万円以上の個人・団体
- カテゴリー3
- 前年度の源泉徴収税額が1,500万円未満の個人・団体
- カテゴリー4
- 上記のいずれにも属さない個人・団体(新設企業)
【カテゴリー1~4に共通して必要な書類】
すべてのカテゴリーに共通して求められる書類です。
なおカテゴリー1および2については、下記の書類以外のものは、原則必要ありません。
- 1.申請人の顔写真
- 縦4cm×横3cm
- 申請から3ヶ月以内に撮影されたもの
- 2.在留資格認定証明書交付申請書 1通
- 3. 返信用封筒 1通
- 定形封筒
- 4. 企業カテゴリーに該当することを証明する資料
- カテゴリー1) 四季報、または証券取引所の上場していることの写し
- カテゴリー2または3) 前年度の源泉徴収票等の法定調書合計表
【カテゴリー3および4で、求められるその他資料】
カテゴリー3および4に属する企業では、先ほどの共通書類に加えて、以下の資料を提出します。
ただし、カテゴリー3の企業は、7の資料の提出は必要ありません。
- 1.会社および申請の活動に関する資料
- 1.1.日本法人の役員に就任する
- 役員報酬を定めた資料(定款や株主総会の議事録)
- 1.2.②外国法人内の日本支店に転勤する
- 異動の通知書など、職務や地位・期間等の内容がわかる書類
- 1.3.③日本において、管理者として雇用される “労働条件を記載した雇用契約書など
- 関連する実務経験を3年有することを証明する書類
- 2. 事業内容に関する書類
- 登記事項証明書の写し、定款等の写し、事業内容が詳細に記載された書類など
- 3. 事業規模に関する資料
- 資本金または出資金500万円を証明する資料
- フルタイムスタッフが2名以上いるのであれば、住民票・雇用契約書など
- 4. 事業所の施設に関する資料
- 不動産登記簿謄本、賃貸契約書など
- 5. 事業計画書の写し
- 6. 直近年度の決算文書の写し
日本で発行される書類は、発行から3ヶ月以内のものを用意します。書類が日本語以外の言語で作成されている場合は、日本語への翻訳を添付します。
上記の書類は、経営・管理ビザを申請する際に最低限必要な書類です。新しく会社を立ち上げたり、お店を開くケースでは、事業の継続性や安定性を判断するために事業計画書の作成が重要なポイントになります。
用意する書類や事業計画書の書き方など、申請に必要なアドバイスを行っております。お困りのことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。