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一般的な就労ビザ、技術・人文知識・国際業務ビザ(在留資格)の申請事例

現在海外にいて日本で働くことが内定している外国人の方が、無事に就労ビザ(在留資格)を取得するためにはどのような手続きが必要なのでしょうか。今回は就労ビザ(在留資格)の中でも「技術・人文知識・国際業務ビザ(在留資格)」に関して、実際の事例からご紹介していきます。

「技術・人文知識・国際業務ビザ(在留資格)」とは?

ものすごくざっくりいうと、「日本の国公立団体や一般企業などに就職して、理系・文系の技術や知識、外国人ならではの思考や感覚を生かして働く」という場合に申請できるのが「技術・人文知識・国際業務ビザ(在留資格)」です。

法律の表記では「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野もしくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の文化に属する技術もしくは知識を要する業務または外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務に従事する活動」と規定されています。

ケース1「人文知識に関連する業務を行う者が就労ビザ(在留資格)を得る場合」

学歴 修士課程修了(アメリカの大学、大学院)
専攻 教育学(英語の教授法)
就職先の業種 英会話スクール経営
業務内容 スマホ用アプリケーションの開発、英会話スクールでの講師職

「私は上記の内容で日本での就職の内定が出ている外国人です。

私の就職予定である英会話スクール経営を行なっている会社は、日本人の英語学習用のスマホ用アプリケーションを開発しています。私の業務はアプリケーションのプログラマーに対して、英会話の習得に役立つような機能やデザインを指示すること。実際にプログラミングは行いません。

又、同社が経営する英会話スクールで、1コマ2時間程度の授業を週に2コマ行います。授業内では開発しているアプリケーションを使い、生徒たちの反応に応じてアプリケーションを改良していくという趣旨があります。

どのような点に留意して就労ビザ(在留資格)の手続きをすれば良いのでしょうか?」

業務内容とあなたの専門性がリンクしていることをしっかり伝えましょう

あなたが申請するビザ(在留資格)は「技術・人文知識・国際業務ビザ(在留資格)」の中でも人文知識に該当します。

その場合必須なのが

  • 日本国内で人文知識の知識を要する業務に就くこと
  • 【学歴要件】もしくは【実務要件】を満たしていること
  • 日本人と同等以上の報酬を受けること

です。順に解説していきます。

日本国内で人文知識の知識を要する業務に就くこと

業務内容に虚偽や実際との齟齬がないかはもちろんですが、就職先の経営状態なども審査の対象になります。というのも、在留資格(ビザ)を発行するにあたっては、申請の際に申告した業務を外国人が安定して行うことができる環境である必要があるからです。

また、雇用契約の内容についても審査されます。例えば正社員であれば、一般的には安定した雇用形態と受け取られますが、短期間の委託契約の場合は「長期的で安定している」とは言い難いため、「技術・人文知識・国際業務ビザ(在留資格)」が通るか微妙なところです。

質問者の場合は「あくまでスマホ用アプリケーション開発のためのアドバイスが業務内容であり、その補助的業務として英会話講師の業務がある」ということなので業務内容は人文知識の範囲内です。雇用形態や業務に従事する期間等が長期であるということが伝われば、よりビザ(在留資格)はおりやすくなるでしょう。

「学歴要件」もしくは「実務要件」」を満たしていること

学歴要件とは業務に関係ある科目を専攻して大学を卒業、もしくは同等以上の教育、もしくは「日本国内の専門学校」を卒業していることです。

実務要件とは従事しようとしている業務に10年以上の実務経験があり知識を習得していることです。

学歴要件について

人文知識で在留資格(ビザ)を申請する上では、大卒もしくは短大卒で学士以上の学位を取得していることが必要です。しかし、大学を卒業とは言っても国によって教育課程が異なります。場合によっては卒論や履修科目の資料等を入管に提出して、説明をする必要があります。

また、各国において大卒者や短大卒者と同等の教育を受けたと認定されている場合も申請可能です。日本国内の専門学校を卒業して専門士や高度専門士の称号を付与された者も、学歴要件を満たしています。

さらに重要なのが、先行した科目と従事する業務の関連性です。

例えば建築学士の称号を得ている外国人が日本で一般家屋の設計業務を行うために在留資格(ビザ)を申請する。一見問題がないように見えますが、専攻したのが都市計画だとしたら一般家屋の設計業務との関連性は薄いということになります。(ただし実際には大卒・短大卒であれば文系・理系の縛り程度で、そこまで厳しく関連性について審査はされていないのが実態です。専門学校卒の場合は厳しく審査されます。)

ですので、在留資格(ビザ)を申請する際には、

  • 従事する業務の具体的な内容
  • 専攻した科目や取得した単位の具体的内容
  • 専攻科目の知識が業務に必要であるという立証

が、必要になります。

質問者の場合は大学で教育学(英語の教授法)の修士課程を修了しており、日本国内での業務内容が「英会話学習用のスマホ用アプリケーションの開発に関するアドバイスと、それの補助的業務としての英会話講師」なので学歴と業務内容に齟齬はなさそうです。

実務要件について

10年以上の実務経験によって知識を習得していると立証する必要があります。

例えば、

  • 在職証明書の中でかつて勤務していた会社での具体的な業務内容
  • 給与明細やタイムカード
  • 成果物などの具体的な資料

を提出し、実務経験を立証する活動が必要です。

質問者の場合は、学歴要件での審査のため実務要件の立証は必要ありません。

日本人と同等以上の報酬を受けること

技術・人文知識・国際業務ビザ(在留資格)の交付は、外国人が一定以上の知識を有している前提で行われるので、雇用者はそれに見合った報酬を払わなければいけません。極端に安かったりすると不可となる場合もあります。

また注意しなければいけないのは、この報酬には手当は含まれないことです。住宅手当・扶養手当などを報酬額に含んだ金額で申請し、日本国内で勤務している最中には上記手当等が控除された金額が支給された場合、在留資格更新の際に金額状の齟齬が生じます。虚偽申請が疑われかねず、更新許可が不可になる可能性があります。

質問者はこの点には触れていませんので、実際の申請の際には、給与内の報酬と手当の内訳をよく確認して申請を行うように気をつけて下さい。

ケース2「国際業務に関連する業務を行う者が就労ビザ(在留資格)を得る場合」

職歴 パッケージデザイナー・会場デザイン等
専攻 教育学(英語の教授法)
就職先の業種 広告業
業務内容 デザイン事業部ディレクター(webサイト・イベント会場の演出・店舗の内装デザイン)

「私は上記内容で日本での就職が決まっており、就労ビザ(在留資格)を申請しましたが不交付となりました。

これまで私はグラフィックデザイナーとしてジャンルにも国籍にも縛られない幅広い案件を手がけてきました。就職内定先の日本の広告代理店「○○アド」からは、ボーダーレスな感性を生かして、事業部のディレクターとして活躍して欲しいと言われています。

○○アドは私の代理人として就労ビザ(在留資格)を申請して不交付になりました。理由は『申請人が○○アドで行う業務、日本で行う業務と申請人の経歴の関連性が不明』ということです。どのように対応したらよいでしょうか?」

国際業務カテゴリーの要件をあなたの業務が満たしていることを立証しましょう

あなたが申請する就労資格(ビザ)は「技術・人文知識・国際業務ビザ(在留資格)」の中でも国際業務に該当します。

その場合必要なのが、

  • 日本国内にて、外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務に従事すること
  • 【業務内容要件】を満たしている
  • 【実務要件】を満たしている
  • 日本人と同等以上の報酬を受けること

です。順に解説していきます。

日本国内にて、外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務とは?

「翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾もしくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務」が該当する業務です。これは前述②の業務内容要件でもあります。

質問者の「Webデザイン事業部のディレクター(webサイトやイベント会場の演出・デザイン、場合によっては飲食店等の内装デザイン)」という業務内容はデザイン関係ということで広く捉えれば、一見要件を満たしているようにも見えます。

しかし、業務内容で規定されているのは「服飾もしくは室内装飾に係るデザイン」なので、webサイトやイベント会場の演出・デザインは範囲外ということになります。

PCを使った業務は日進月歩であり、デザインに関しても様々なジャンルがクロスオーバーしていることでしょう。しかし、どうしたら就労資格(ビザ)が許可されやすいかというところでいうと、要件に規定されている業務に当てはまることを立証するのが近道です。

例えば、あなたの担当する演出・デザイン業務が、立ち上げたwebサイトやイベント会場において、外国の雰囲気や異国にいる雰囲気を出すために必要であるという根拠を示す必要があるのです。デザインのポートレイトや発注者の意図など、資料を用いて入管に説明しなければなりません。

業務内容要件とは

前項でも記述した通り、「翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾もしくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務」に従事することが必要です。

実務要件とは

「日本で従事しようとする業務に関連する業務について3年以上の実務経験」が必要になります。

質問者はこの点には触れていませんが、これまでの仕事での成果物や、図面、ポートレイト、写真などを実績として提出し説明することが必要です。これまでの経歴をわかりやすくまとめ、十分な実績と知識を有している根拠を示さなければなりません。

日本人と同等以上の報酬を受けること

こちらは前述の内容と同じなので割愛します。

質問者はどのような報酬体系なのか内訳を把握し、間違いなく申請しなければなりません。

入管は不許可になった理由を教えてくれるのか?

あなた自身が申請した内容の不許可理由を、あなた自身が確認する場合は教えてくれます。

弁護士や行政書士が最初からあなたの代理として就労ビザ(在留資格)を申請した場合も、教えてくれます。

あなたが自身で申請を行った結果不交付になった案件を、弁護士や行政書士に依頼した場合は、教えてくれることもありますが、応じないこともあります。

質問者の場合は○○アドが代理として申請を行っているので、○○アドが不許可理由を確認することができます。

○○アドとしてはどのように対応すべきか

「申請人が○○アドで行う業務、日本で行う業務と私の経歴の関連性が不明」という回答が入管から出ているので、不明点を払拭する必要があります。

再申請の際には、業務内容を具体的かつ詳細に説明する資料を準備すること、申請者の経歴や実績に関して実際の成果物等も添付しわかりやすく説明できるようにしなければなりません。

この時に注意しなければいけないのが、当初の申請内容との齟齬です。万が一、入社日の齟齬や業務内容の齟齬が発生した場合には、その理由についてしっかり説明し、虚偽申請をしようとしたわけではないことを立証する必要があります。

五月雨式な資料提出や不備の多い申請を繰り返すことは、マイナスでしかありません。誰が見てもわかるようにまとまった、見やすく具体的な資料を用意し不備なく提出することが、就労ビザ(在留資格)の許可を通りやすくする上で非常に重要です。

ケース3「日本国内で卒業予定の専門学校の専攻と就職先の業務のマッチングはどの程度必要?」

日本での学歴 専門学校卒予定(通訳・翻訳)
本国での学歴 短大卒に相当(農学関連)
就職先の業種 食品加工会社(野菜や果物の加工)
業務内容 管理部勤務(書類等の翻訳業務があるが主たる業務とは言えない)

「私は来年の3月に日本国内の通訳・翻訳の専門学校を卒業予定ですが、食品加工会社(野菜や果物の加工)に内定が決まりました。管理部なのでオフィスワークにはなりますが、通訳・翻訳の業務がメインとは言えません。在留資格(ビザ)の変更は通るのでしょうか?ちなみに母国では農学関連の専攻で短大卒相当の学歴があります。」

本国で学んだ内容との関連性が重要

通常、専門学校の卒業の場合、専攻した内容と就職先の業務内容はかなり厳密に見られるため、一見在留資格(ビザ)の変更は難しく見えます。

しかし、質問者の場合、本国で農学関連の専攻で短大卒相当の学歴を得ています。農学は「技術・人文知識・国際業務ビザ(在留資格)」で適用でき、しかも農学の中には食品管理・食品衛生なども含まれています。食品管理・食品衛生は、就職先で質問者が担当する食品の輸入貿易業務においては、極めて重要な専門知識と言えるでしょう。

本国で得た学歴・知識が就労ビザ(在留資格)を申請する上で有効であるという側面が一つ。また、現在留学中の専門学校の「通訳・翻訳」といった専攻内容は、本国で学んだ農学関連の知識を、管理部での翻訳業務に活かすのに適していると考えることが可能です。メインの業務ではなくても「技術・人文知識・国際業務ビザ(在留資格)」からは外れていません。

ですので、本国で卒業した短大卒相当の教育機関の卒業証書、科目数やコマ数がわかるもの、また、学習内容がわかるようにホームページ等をプリントアウトしたもの、学歴に関しての細かい説明などを添付し、しっかり説明できれば、「留学」から「技術・人文知識・国際業務ビザ(在留資格)」ヘの在留資格変更許可申請は通りやすくなるでしょう。

参考:中国の学歴・資格に関する特殊な事情

学歴について

学歴や資格要件に関しては、中国の教育機関の独特な仕組みを考慮する必要があります。

中国には独特の教育機関が存在し、わかりにくい部分もあります。学歴要件である「大卒・短大卒もしくはそれと同等以上」に該当するためには、下記に該当しなければなりません。

  • 大学院を卒業した者
  • 大学(学院とも呼ばれる。本科・専科を含む。)を卒業した者
  • 専科学校を卒業した者
  • 短期職業大学を卒業した者
  • 職業技術学院を卒業した者
  • 成人教育機関を卒業し、学位を取得した者

一方、上記以外にも中国には学歴として表れるものがあります。しかしながら下記に関しては学歴要件を満たさないので注意が必要です。

  • 自学考試(学生の自習、社会での研修および国家試験を経て学歴証明書が発行される。)
  • 涵受(成人高考という国家試験の合格者を対象に行われる通信教育。郵送やインターネット配信などで教材や講座の提供を受け、課題をメールや郵送などで提出する。最終段階では実際に授業に出席し、卒業試験を受ける。卒業証書が付与され、これには大卒資格と同等の「大専」「本科」卒と記載されるが、学士の称号は付与されない。)
  • 電視大学(日本の放送大学に該当する。ラジオ、テレビ、インターネット等を通じて講義を受講する。)
  • 業余(夜間や休日に受講できる社会人向けの教育機関です。)

中国人IT技術者の資格について

中国人IT技術者は、中国における試験に合格し該当の資格を取得していれば、学歴要件・実務要件は不要という特例があります。該当する資格を紹介します。

  • 系統分析師(システムアナリスト)
  • 信息系統項目管理師(インフォメーションシステムプロジェクトマネージャー)
  • 系統架構設計師(システムアーキテクト)
  • 軟件設計師(ソフトウェア設計エンジニア)
  • 網路工程師(ネットワークエンジニア)
  • 数据庫系統工程師(データベースシステムエンジニア)
  • 程序員(プログラマー)
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