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この記事では技術・人文知識・国際業務ビザを取得するための条件である「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」について解説します。
「在留資格該当性」と「上陸許可基準」については、在留資格認定証明書や在留期間更新の一般要件をご確認ください。
外国人が取得したいビザが本当に取得できるのか否か、また要件に適合せずに取得できない場合は、日本での在留を諦めるのではなく他のビザの要件に適合するか否か、これらを考える上で実務上はまずこの「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」を正確に把握して検討を進めなければなりません。
技術・人文知識・国際業務ビザについて法で定められた「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」の解説に進めます。
技術・人文知識・国際業務ビザの「在留資格該当性」
まず入管法別表第1の2に定める法文は下記の通りです。
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授の項、芸術の項及び報道の項の下欄に掲げる活動並びにこの表の経営・管理の項から教育の項まで、企業内転勤の項及び興行の項の下欄に掲げる活動を除く。)
これを整理しますと、下記のとおりです。
- 本邦の公私の機関との契約に基づき行う、自然科学の分野に属する知識を必要とする業務
- 本邦の公私の機関との契約に基づき行う、人文科学の分野に属する知識を必要とする業務
- 本邦の公私の機関との契約に基づき行う、外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務
では「本邦の公私の機関」とは何が含まれるのか、「契約」とは雇用契約でも委任契約でもよいのか、「外国の文化に基盤を有する」とはどのようなものか等、法文を見ても分からない事が多いと思います。これらについて解説を進めていきたいと思います。
具体的な分野について
上記123のそれぞれについての具体的な分野と要求される業務レベルについて解説します。
なお、法務省HP-「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等についてに事例集がいくつかまとめられていますのでこちらもご確認ください。
法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野とは
これはいわゆる文系分野であり、幅広く社会科学の分野を包括します。
具体的には、語学、文学、哲学、教育学(体育学を含む)、心理学、社会学、歴史学、地域研究、基礎法学、公法学、国際関係法学、民事法学、刑事法学、社会法学、政治学、経済理論、経済政策、国際経済、経済史、財政学・金融論、商学、経営学、会計学、経済統計学等の分野です。
「等」とあるように、これらは例示であって他の分野でも該当する場合があります。
留意点としては、これらの分野を主の目的としたコンビュータソフトウェアの開発が挙げられます。コンビュータソフトウェアの開発等のプログラミング技術は「自然科学の分野」に該当すると思われがちですが、主の目的や必要とする知識が人文科学の分野である場合は、人文科学の分野に該当します。例えば、会計ソフトの開発などが代表的な事例です。
要求される業務レベルについて
「技術若しくは知識を要する業務」と法に定められているように、人文科学の分野において、単純労働ではなく一定の水準を超える活動が認められています。
ではどのレベルでの水準が要求されるものなのか。
技術・人文知識・国際業務ビザは主に大学卒業者を対象としている資格なので、学術上の素養を背景とする一定水準以上の業務であることを示すものです。しかし実務上は、その水準はそれほどは高くはなく、単純就労ではなく、それなりの知識やスキルを必要とする業務であることを合理的に立証できれば許可の可能性があります。
例えば、結婚式場のカメラマンは、特別な知識を必要としない単純就労であると判断されているのに対し、映画製作会社のカメラマンは専門知識を必要とする業務と認められ、許可の可能性があります。
研修期間などの限定された単純労働について
新卒者を幹部候補社員として採用し、会社全般の理解の為に、研修期間と称して現場の単純就労業務もさせる場合があります。
これについては、基本的に問題ありませんが、説明の不十分によって不許可とされない為にも、しっかりと立証する必要があります。
具体的には、短期間である旨・幹部候補としての全体把握の為の研修である旨、研修後は適正な活動をさせる旨、幹部候補生としての雇用条件である証明等をしっかりと説明し、入管側に理解していもらう必要があります。
理学、工学その他の自然科学の分野とは
これはいわゆる理系分野であり、幅広く理学工学分野を包括します。
具体的には、数理科学、物理科学、化学、生物科学、人類学、地質科学、地理学、地球物理学、科学教育、統計学、情報学、核科学、基礎工学、応用物理学、機械工学、電気工学、電子工学、情報工学、土木工学、建築学、金属工学、応用化学、資源開発工学、造船学、計測・制御工学、化学工学、航空宇宙工学、原子力工学、経営工学、農学、農芸化学、林学、水産学、農業経済学、農業工学、畜産学、獣医学、蚕糸学、家政学、地域農学、農業総合科学、生理科学、病理科学、内科系科学、外科系科学、社会医学、歯科学、薬科学等の分野です。
「等」とあるように、これらは例示であって他の分野でも該当する場合があります。
留意点としては技術営業職が挙げられます。実務的には営業・販売を行っているので人文科学分野と思われがちですが、その背景に自然科学の技術や知識をベースとして行われ、かつ、総合職の立場として業務に従事している場合は、自然科学の分野が該当します。
要求される業務レベルについて
人文科学分野に記載した通り、単純労働は認められず、学術上の素養を背景とする一定水準以上の業務である必要があります。
例えば、機械の設計は認められるが、機械の単純な組立は認められず、また土木設計は認められるが、単なる土木作業員としての活動は認められません。
外国の文化に基盤を有するとは
具体的には、通訳・翻訳・語学指導などの外国言語や、服飾・広告・デザインなどの外国文化に関連する業務のことを意味します。
いわゆる外国人特有の感性、すなわち、外国に特有な文化に根ざす一般の日本人が有しない思考方法や感受性を必要とする業務を意味します。
要求される業務レベルについて
この「外国人特有の感性」についてどこまで「外国人特有」が要求される者なのかは、実務上は決して高いものではありません。
例えば海外で実務経験を有しているデザイナーであって、実務経験に関連するデザイナーに係る活動を日本で行う場合は、その実務経験と目的だけで「外国人特有の完成を有する」と推定され、「その思考・感受性は日本文化の中では育まれないようなものかどうか」までは審査されません。
しかし、一般の日本人が有しない思考方法や感受性を必要とする業務といえるかどうか微妙な案件の場合は、具体的に業務が外国特有の文化・感性を背景とし、申請人がその文化・感性を有している事を立証しなければなりません。
また、これも同様に単純労働か否かを検討しなければなりません。特に通訳・翻訳業務においては、接客としての単純労働なのか、通訳としての専門業務なのかが判断が分かれる事があります。
例えば、ホテルマンとして外国人客の案内等の業務をする場合、主目的が海外からの来客のために通訳業務であっても、単なる接客業としての単純労働として判断されがちです。この場合には、ホテルの規模・外国人客の多さ・ホテルの営業戦略・フロントに通訳をする担当を置くことの重要性などを具体的に立証しておくべきです。
実務上は、高級なリゾートホテルや観光ホテルでは許可の可能性がありますが、ビジネスホテルでは許可は困難な事例が多いです。
「本邦の公私の機関」とは
「本邦の公私の機関」には、国、地方公共団体、独立行政法人、会社法人、公益法人のほか、任意団体も含まれます。但し、任意団体は契約当事者としての権利能力が無いことに注意が必要です。
また、日本に事務所・事業所を有する外国の国・地方公共団体(地方政府)・法人等も含みます。
さらに法人絡を有しない個人経営であっても、日本で事務所や事業所等を有し
ていれば「本邦の公私の機関」に該当します。但し、事業の安定性や継続性の立証が困難な場合が多いので注意が必要です。
なお、事業主体性を持たない単なる個人の場合は「本邦の公私の機関」に該当しません。
「本邦の公私の機関」に要求される要件
「本邦の公私の機関」には「継続性」と「適正性」が要求されます。
外国人がビザを認定される為には、当該外国人が指定される在留期間にわたって継続的かつ適正に活動をする事が見込まれなければなりません。従って、この事は外国人が契約する「本邦の公私の機関」に対しても継続性・適正性が要求される根拠となります。
「継続性」の立証のためには、当該機関の売上や利益、法人か個人か等の組織形態、従業員数や資本金などの組織規模、設立年数等の観点が重要です。
「適正性」については、必要とされる許認可を保有している事や、違法行為や不正行為を行っていないことが必要です。もし過去に不正行為等で行政指導を受けたことのある機関の場合は、再発防止策を講じて二度と発生させない体制になっていること等を立証しなければなりません。
「契約」とは
「契約」には、雇用のほか、委任、委託、嘱託等が含まれます。また派遣契約や請負契約も含まれます。
招勝機関以外の機関において就労する場合は、派遣契約書・業務委託契約書など、その根拠となる契約書が必要です。また派遣先等の機関の概要を明らかにする資料の提出も必要となります。
但し、どんな契約でも継続的な契約でなければなりません。従って短期間の派遣契約等の場合は不許可となる可能性が高くなりますので、派遣契約書に自動的な更新条項を盛り込むなどして、継続的であることを立証しなければなりません。
さらに派遣等の場合は、派遣先において担当する業務内容が在留資格該当性を満たすものか否かが審査されます。複数の派遣先に派遣されることも問題ありませんが、申請時において、派遣先・派遣期間・予定職務が確定しており、かつ常勤職員として雇用されるものである必要があります。また、派遣元が労働者派遣法に基づく許認可を受けている事が必要な事は「適正性」のところで述べた通りです。
契約の当事者について
外国法人が日本に支店を有する場合で、外国人が当該日本の支店で働く場合、支店は法人格が無く契約当事者とはならないので、外国法人との間で契約する事になります。これによって、「本邦の公私の機関」との契約として扱われます。
一方、外国法人の子会社とする日本の法人で外国人が働く場合は、日本法人には法人格を有し、契約当事者となるので、当然に外国人は日本法人と契約を結ばなければなりません。
また契約書の外形上の契約当事者が「外国の公私の機関」「本邦の公私の機関」となっている場合でも、当該契約書に下記の事項が盛り込まれていれば、「外国人本人」と「本邦の公私の機関」との間に労働契約が成立している者として扱われる。
- 我が国に入国する者として当該外国人が特定されていること。
- 当該外国人の使用者たる本邦の公私の機関が特定されていること。
- 本邦の公私の機関が当該外国人と「労働契約を締結する」旨明示されていること。
- 当該外国人の労働条件として,労働基準法施行規則第5条第1項第1号から4号に定
める事項が明示されていること。 - 本邦の公私の機関が我が国の労働基準法を遵守する旨明示されていること。
- 本邦の公私の機関が当該外国人に対し賃金を直接支払う旨明示されていること。
他のビザとの境界
優先されるビザ
「技術・人文知識・国際業務」に該当する活動内容であっても下記のビザに該当する場合は、当該ビザが優先される。
「教授」「芸術」「宗教」「報道」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「企業内転勤」「興行」
「医療」と「技術・人文知識・国際業務」
医療に係る業務に従事する活動であっても、特定の資格を有しなくても行うことができる活動は、技術・人文知識・国際業務ビザに該当する場合がある。
「研究」と「技術・人文知識・国際業務」
研究活動であっても、技術・人文知識・国際業務ビザは、その有する技術や知識を用いて、公私の機関の業務の遂行に直接資する活動であるのに対し、研究ビザは,その技術等の研究をすること自体を目的とする活動である点において相違する。
「教育」と「技術・人文知識・国際業務」
教育機関において語学教育その他の教育をする活動は「教育」が該当する事は当然ですが、当該教育機関との契約に基づき、一般企業等の教育機関以外の機関において上記の活動をする場合にも「教育」が該当します。
一方、教育機関以外の一般企業等の機関との契約に基づいて、教育機関以外の機関において、上記の活動をする場合は技術・人文知識・国際業務ビザに該当します。
「興行」と「技術・人文知識・国際業務」
興行ビザに係る活動には,興行活動者と一体不可分な関係にある者もこれに該当する。自然科学若しくは人文科学の分野に属する技術又は知識を要する業務に従事するスポーツ選手のコーチ、トレーナーや録音、録画技術者等が考えられるところ、これらの者が行う活動は興行ビザに該当する。
「法律・会計業務」「特定活動告示8号」「技術・人文知識・国際業務」
外国法事務弁護士として法務大臣から承認を受けた者が、国際仲裁事件の手続についての代理に係る業務に従事する場合は「法律・会計業務」が該当する。
外国法事務弁護士としての承認を受けない「外国弁護士」が、本邦の公私の機関との契約に基づき、国際仲裁事件の手続についての代理に係る業務に従事する場合は「技術・人文知識・国際業務」が該当する。
外国法事務弁護士としての承認を受けない「外国弁護士」が、本邦の公私の機関とではなく、事業主体性のない個人との契約に基づき、国際仲裁事件の手続についての代理に係る業務に従事する場合は「特定活動告示8号」が該当する。
「企業内転勤」と「技術・人文知識・国際業務」
外国法人の日本支店又は支社で外国人が働く場合、「技術・人文知識・国際業務」に定める本邦の公私の機関との契約は、外国法人との契約で足りる事から、「企業内転勤」と「技術・人文知識・国際業務」の両方のビザが射程範囲となります。
従って、「企業内転勤」に定められる、転勤前に1年間の継続雇用があった事の要件に該当しない場合は、「技術・人文知識・国際業務」の方向で進める検討をすべきです。
この「技術・人文知識・国際業務」と「企業内転勤」の違いを整理すると下記の通りです。
- 資格要件:「技人国」には学歴又は実務要件、「企業内転勤」には直近1年の在籍要件
- 転職可否:「技人国」は転職により他の会社に移る事が出来るが、「企業内転勤」は転勤した特定の事業所で活動することが必要です。
- 派遣業務:「技人国」は他の会社に派遣される事が認められるが、「企業内転勤」は転勤した特定の事業所で活動することが必要です。
これらの違いを把握して、来日する外国人や招へいする機関(転勤元・転勤先機関)は、どちらのビザで進めるか検討しなければなりません。特に資格要件における、大卒者又は10年の実務経験と、1年の在籍要件では、給与支払面で差が表れる事が多いので、その点でも特に招へい機関(転勤元・転勤先機関)にとって重要だと思われます。
「技能」と「技術・人文知識・国際業務」
技術ビザと技能ビザの区別は、技術ビザは一定事項について学術上の素養等の条件を含めて理論を実際に応用して処理するための能力をいい、技能ビザは一定事項について主として個人が自己の経験の集積によって有している能力を指します。
「短期滞在」と「技術・人文知識・国際業務」
本邦の公私の機関との契約に基づき、「技術・人文知識・国際業務」の業務を行う場合であっても、「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」に該当しない場合は短期滞在ビザが該当します。
この「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」については注意が必要です。
基本的な考えは、役務の提供が日本国内で行われ、その対価として給付を受けている場合は、これに該当します。対価を支給する機関が日本にあるか、給付を受ける場所が日本国内にあるかは関係ありません。
但し、海外で行われる主業務に関連する従たる業務を短期間日本国内で行う場合は「報酬を受ける活動」に該当しません。この事例としては、例えば、海外において機械の設計製造を主業務とする者が、販売した後に機械の設置やメンテナンスなどのために来日するような場合です。また、主の業務として国外で従事している者が商談の為に短期間来日するような場合も同様です。
また、この短期間についても、単に1回の滞在期間が短期間であっても、中長期的にみて日本に滞在する期間の割合が相当程度ある場合には該当しません。
また「報酬」に該当しないものとして入管法施行規則19条の2に定められていますので、詳しくは出入国管理及び難民認定法施行規則をご確認ください。
なお、この「報酬」に該当するか否かはは、在留する外国人や雇用主にとって大きな問題となる事が起こり得ます。「短期滞在」保有者が「報酬を受ける活動」を行った場合は、資格外活動罪となります。さらにその雇用主や契約機関に対しても、不法就労助長罪として罰則があります。
日本に在留する外国人は常々、「報酬を受ける活動」に該当するか否かを念頭に置いて活動をするべきだと思われます。
技術・人文知識・国際業務ビザの「上陸許可基準適合性」
技術・人文知識・国際業務ビザの上陸許可基準について、基準省令の本文、1号、2号、3号に分けて解説します。
基準省令本文
基準省令本文に定められている法文は下記の通りです。
申請人が次のいずれにも該当していること。ただし、申請人が、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法(昭和六十一年法律第六十六号)第五十八条の二に規定する国際仲裁事件の手続についての代理に係る業務に従事しようとする場合は、この限りでない。
法文の整理
つまりこれは、下記で解説する1号~3号について、全てに該当する事が要求されています。但し除外事項として、外国弁護士による国際仲裁事件手続きの代理業務については、1号~3号に該当する事は要求されません。
用語の定義
「外国弁護士」とは、外国において法律事務を行うことを職務とする者で弁護士に相当するものです。
「国際仲裁事件」とは、日本国内を仲裁地とする民事に関する仲裁事件であって、当事者の全部又は一部が外国に住所・事務所・本店を有する者が関わっているものをいいます。
また「外国弁護士」に似た言葉で外国法事務弁護士というものがあり、これとの区別は注意が必要です。外国法事務弁護士とは、外国の弁護士に相当する「外国弁護士」が、さらに法務大臣の承認を受けて日本弁護士会に登録された者をいいます。
この本文に定められた「外国弁護士」には外国法事務弁護士を含みません。
基準省令第1号
基準省令第1号に定められている法文は下記の通りです。
一 申請人が自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務に従事しようとする場合は、従事しようとする業務について、次のいずれかに該当し、これに必要な技術又は知識を修得していること。ただし、申請人が情報処理に関する技術又は知識を要する業務に従事しようとする場合で、法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格し又は法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有しているときは、この限りでない。
イ 当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと。
ロ 当該技術又は知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと。
ハ 十年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること。
法文の整理
この第1号は自然科学分野と人文科学分野の学歴要件と実務経験要件を定めており、イロハのいずれかに該当する事が要求されています。
但し、除外事項として下記のサイトで記されている情報処理技術関連の資格保有者・試験合格者についてはイロハに該当する事が要求されていません。
法務省HP-出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令の技術・人文知識・国際業務ビザに係る基準の特例を定める件
用語の定義
では、「従事しようとする業務について、~、これに必要な技術又は知識を修得していること」とはどの程度のレベルが要求されるのか、「大学を卒業」には大学院や短期大学は含まれるのか否か、「これと同等以上の教育」とはどんなものを意味するのか、その他用語の解説に進みます。
大学を卒業とは
学士又は短期大学士以上の学位を取得した者をいいます。
大学院卒業者も当然にこれに含まれ、大学を卒業せずに大学院への飛び入学が認められた者はについても「大学を卒業し又はこれと同等以上の教育を受け」た者に該当するものとして取り扱われます。
「これと同等以上の教育」とは
下記の方が該当するとされています。
- 大学の専攻科・大学院の入学に関し,大学卒業者と同等であるとして入学資格の付与される機関の卒業者
- 短期大学卒業と同等である高等専門学校の卒業者
詳しくは、学校教育法施行規則第155条第1項・第2項をご確認ください。
※中国については異なった概念の教育機関が存在し、少し複雑な問題が生じます。ここでは割愛させていただきます。
※インドにおけるDOEACC制度上の資格レベルA・B・Cを保有する者についても「これと同等以上の教育」に該当します。
本邦の専修学校の専門課程を修了とは
まず、「本邦の専修学校」と記載されているとおり、日本に所在しているものでなければなりません。
また「修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合」とは、以下の①②のいずれかに該当する場合です。
①次のいずれにも該当すること。
- 本邦において専修学校の専門課程の教育を受けたこと (外国において通信教育等により本邦の専修学校の専門課程の教育を受けた場合は本要件に該当しない)
- 専修学校の専門課程の修了者に対する専門士及び高度専門士の称号の付与に関する規程に規定する専門士と称することができること。
②専門士等に係る規程に規定する高度専門士と称することができること。
「専門課程」「専門士」「高度専門士」についてはも補足します。
専修学校には、高校卒業者が入学する「専門課程」、中学卒業者が入学する「高等課程」、入学条件のない「一般過程」の3つの過程があります。専修学校専門課程とはいわゆる「専門学校」と呼ばれています。
そして専門学校卒業者に対して、下記の所定の要件を満たした場合に「専門士」又は「高度専門士」の称号が付与されます。
- 修業年限:高度専門士は4年、専門士は2年
- 授業時間数:高度専門士は3400時間以上、専門士は1700時間以上
- 試験等による成績評価及び卒業認定
「従事しようとする業務について~これに必要な技術又は知識を修得していること」に要求されるレベル(専攻と業務の関連レベル)
上陸許可基準の学歴要件では、単に大学等を卒業していれば足るとされているわけではなく、従事しようとする業務に必要な知識に係る科目を専攻して卒業していなければならないと規定されています。
ではどのレベルでの関連性が要求されているのかについて解説します。
これについては、広く総合的な知識を学ぶ事に主の目的を置く大学と、職業に必要な能力を育成する事に主の目的を置く専修学校専門課程を区別して考えなければなりません。
さらに直接的に上陸許可基準の適用を受ける在留資格認定証明書交付申請(上陸許可)の場面と、「相当性」という要件を介して間接的に上陸許可基準の適用を受ける在留資格変更許可申請の場面でも区別する必要があります。
まず大学における専攻科目と従事しようとする業務の関連性については、専修学校専門課程の者と比べて、比較的緩やかに判断されることとされています。
特に留学生がそのまま日本で就職する場合、つまり留学ビザから技術・人文知識・国際業務ビザに在留資格変更する場合には、さらに緩和されています。現に、平成20年7月17日法務省通達3327号「大学における専攻科目と就職先における業務内容の関連性の柔軟な取扱い」という通達も出されている状況です。
一方、専修学校専門課程卒業者の場合は、大学卒業者よりも厳格に審査され、就職先の職務内容と専修学校における修得内容に相当程度の関連性が要求されます。そして上陸許可基準上、申請人は学歴要件を満たさないとされてしまえば、在留資格認定証明書交付申請(上陸申請)については不許可となります。
この点、在留資格変更の場合は、上陸許可基準の適用を直接は受けないので許可される可能性はまだ存在します。但し上陸許可基準を満たさない以上、「相当性」の観点からも不利な状況なので、他の要素で変更を認められるべき「相当性」を立証しなければなりません。
なお、申請人が教育機関で修得した内容については、成績表や履修要綱等で立証することになります。
基準省令第2号
基準省令第2号に定められている法文は下記の通りです。
二 申請人が外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は、次のいずれにも該当していること。
イ 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること。
ロ 従事しようとする業務に関連する業務について三年以上の実務経験を有すること。ただし、大学を卒業した者が翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合は、この限りでない。
法文の整理
この第2号については、国際業務の活動をする者は、イの業務内容要件に適合し、かつ、ロの実務経験要件に適合する事が要求されています。
但し、大学を卒業した者、かつ、翻訳・通訳・語学指導をする場合は実務経験は不要です。
留意点
1号と2号の関係
第2号イに列挙されている業務内容に従事する場合であっても、大学等において,これらの業務に従事するのに必要な科目を専攻し、卒業したもの又は本邦の専門学校を修了し、専門士の称号を得たものである場合は、第1号が適用されます。
用語の定義
では、「翻訳、通訳、語学の指導」とはどんな言語でもよいのか、「大学を卒業」には大学院や短期大学は含まれるのか否か、その他用語の解説に進みます。
「翻訳、通訳」「語学の指導」
「翻訳、通訳」「語学の指導」をする為に使用される言語は、通常2つの言語能力が必要であるところ、「母国語以外の言語」と「日本語」については注意が必要です。
「母国語以外の言語」を使用する場合は、その言語をいつどこでどのようにどの程度修得したかの立証が必要です。
「日本語」を使用する場合は、日本語能力検定試験4級程度の日本語能力だけでは認められないことが多く、その場合、日本語スクールや大学での日本語習得に係る資料の提出が必要となります。
さらに、申請人が契約する本邦の公私の機関の観点からは、機関の事業内容が「通訳・翻訳」業務を必要としている事が要求されます。審査の中で、商業登記事項証明書の事業目的等が確認され、それだけでは判明しない場合には、採用理由書等において、通訳・翻訳業務の必要性を具体的に立証しなければなりません。
「大学を卒業」
第1号と同様の定義です。
「3年以上の実務経験」
義務教育期間中の「実務」経験は、「3年以上の実務経験」に含まれません。
基準省令第3号
基準省令第3号に定められている法文は下記の通りです。
三 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
用語の定義
では、「報酬」とは通勤手当などは含まれるのか、「日本人~と同等額以上」とはどの程度の範囲まで許されるのかなど、用語の定義についての解説に進みます。
「報酬」とは
ここでいう「報酬」は、役務の給付の対価であり、通勤手当・住宅手当などの実費弁償は含みません。また、扶養手当についても被扶養者の有無による審査上の不平等を生じさせないため、「報酬」に含めないこととされています。
また退職金・結婚祝金・見舞金・現物給付としての住宅・食事等・制服・旅費等については、その実質が見舞金・恩恵的・福利厚生的なものは「報酬」に含まれませんが、労働協約・就業規則・労働契約等で支給条件が明らかなものは「報酬」に含まれます。
「日本人~と同等額以上」とは
基本的には申請人が契約する個々の企業に在する日本人であって同等の地位の者と比較されます。
当該企業に日本人居ない場合は、同種の職種の他の企業に在する同等の地位の日本人と比べ同等であるかで判断されます。
例えば、日本人大卒者の新入社員給与と外国人大卒者の新入社員給与を比較し、同等かどうかという事が審査されることになります。
留意点
在留資格認定証明書交付申請の際に、雇用契約書や在職証明書等を提出し、申請人が受ける予定の報酬額が入国管理局に把握されることになります。
その後の在留期間更新許可申請の際に、納税証明書、源泉徴収票、給与明細書等を提出した際に、当初の報酬予定額と実際に得た報酬額に相違が確認されれば、虚偽申請として疑義が生じます。
従って、下記の「報酬」の定義に解説する「報酬」の範囲をしっかりと理解し、通勤手当などの実費は含まないようにしてください。
在留資格の取得条件 関連コンテンツ
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