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この記事では「日本人の配偶者等」ビザを取得するための条件である「在留資格該当性」と「活動の真実性」について解説します。
「日本人の配偶者等」ビザには、「上陸許可基準適合性」はありませんが、「活動の真実性」というものが厳密に審査されます。
「在留資格該当性」と「活動の真実性」については、在留資格認定証明書や在留期間更新の一般要件をご確認ください。
外国人が取得したい在留資格が本当に取得できるのか否か、また要件に適合せずに取得できない場合は、日本での在留を諦めるのではなく他の在留資格の要件に適合するか否か、これらを考える上で実務上はまずこの「在留資格該当性」を正確に把握して検討を進めなければなりません。
「日本人の配偶者等」ビザについて法で定められた「在留資格該当性」と、入管が厳密に審査する「活動の真実性」について解説を進めたいと思います。
「日本人の配偶者等」ビザの「在留資格該当性」
まず入管法別表第2に定める法文は下記の通りです。
日本人の配偶者若しくは特別養子又は日本人の子として出生した者
法文の整理
入管法の定める「日本人の配偶者等」ビザを有することができる地位・身分は、下記の3点です。
- 日本人の配偶者
- 日本人の特別養子
- 日本人の子として出生した者
用語の定義・解説
では「配偶者」には内縁等は含まれるのか、「特別養子」とは何か、「日本人の子として出生した者」とは具体的にどのような者の事をいうのか等、これらについて詳しく解説を進めていきたいと思います。
「配偶者」とは
現に法的に有効な婚姻関係にある者であって、離別・死別は含まれません。内縁関係の者、外国で有効に成立した同棲婚も含まれません。
また、単に法的に有効な婚姻関係にあるだけでは「日本人の配偶者等」ビザは得ることができず、婚姻の実態を伴う必要があります。つまり、合理的な理由が無い限り、同居して生活している事を要します。
この合理的な理由とは、個別具体的な状況によって異なりますが、仕事の為に単身赴任することが必要な場合には基本的には認められる取り扱いです。
また、別居中だが婚姻関係が修復する余地がある場合にも認められる場合があります。例えば、一度距離をとってお互い冷静になって夫婦関係を見つめなおすなど、理由があれば、別居している事実を包み隠さず、フォローすべきです。虚偽の申請は最も忌み嫌われるものだという事に注意を置く必要があります。
さらに、日本人夫が実刑の有罪判決を受け刑務所に服役中である場合にも、定期的な面会交流が有ることによって、同居していなくとも「日本人の配偶者等」ビザの更新が認められた事例もあります。
「特別養子」とは
「特別養子」とは民法817条の2第1項の規定に基づく実親との親族関係を切り離し、新たに養父母とのみ親族関係を築く養子縁組のことを意味します。
従って、普通養子は認められません。
なお、特別養子は6歳未満、または、一定の場合には8歳未満でなければ特別養子縁組を成立させることが出来ない事には注意する必要があります。
「日本人の子として出生した者」とは
通常、父または母が日本国籍を有する場合の子は日本国籍を取得するが、外国で子を出生した場合で、その国の法律によって二重国籍となり、さらに日本国籍を選択しなければ、子供は外国国籍となります。このように「日本人の子として出生」し、「外国籍」を持つ者が、日本で在留したい場合求めるビザが「日本人の配偶者等」ということになります。
また「日本人の子として出生した者」が国籍離脱をした後に、日本に在留することを希望することになった場合にも「日本人の配偶者等」を求めることになります。
そして「日本人の子として出生した者」とは、出生した時点で父または母のどちらかが日本国籍を有する場合の子を意味しますが、父が日本人・母が外国人であって、出生時点で父が死亡していた場合でも、父が死亡時点で日本国籍を有していれば、「日本人の子として出生した者」に該当します。
このように「日本人の配偶者等」ビザは、「出生時点」と条件を付しているので、外国人が子供を生み、その後に帰化申請により日本国籍を取得した場合は該当しません。
また「永住者の配偶者等」とは異なり、出生場所の制限はなく、たとえ外国で出生した場合でも上記定義に該当すれば「日本人の子として出生した者」に該当します。(永住者が出国中に子を出生した場合、当該子は「永住者の配偶者等」は認められず「定住者」が検討されます。)
また「子」には嫡出子も認知された非嫡出子を含みますが、認知されていない非嫡出子・養子は含まれません。
留意点
生計能力について
「日本人の配偶者等」ビザは「家族滞在」ビザと異なり、必ずしも日本人本体の扶養を受けることを要しません。従って日本人夫が専業主夫で、外
国人妻が就労し、その収入で家族の生計を維持している場合でも、当該外国人妻は「日本人の配偶者等」ビザは取得できます。
ただし、日本人配偶者と外国人の両方が無職な場合は、婚姻生活の安定に影響する経済基盤に問題があるとして、不許可となる場合もあります。
外国人が来日後に働く予定がある場合は、具体的に職が得られる見込み等を記載したり、日本人本体が求職中である場合には、失業手当を受けており当面の生活基盤に問題がないことを立証すべきです。
短期滞在からの変更について
「短期滞在」から「日本人の配偶者等」への変更は、在留資格認定証明書を添付しなくとも、許可され得ます。
但し、これは元々交際歴があって、短期滞在中に婚姻手続きを済ませる場合に許可されやすいものであって、交際歴が無く、短期滞在中に知り合って結婚まで至る場合は、その婚姻の信憑性が疑わしいとされ、不許可となる場合があります。
日本人の配偶者等ビザの「活動の真実性」
日本人の配偶者等ビザの「活動の真実性」について厳密に審査されます。つまり婚姻の実態があるか否か、婚姻に信憑性があるか否か等、個別具体的に審査されます。
この項目では、どのような場合に婚姻の信憑性が疑われやすいかについて解説します。
夫婦の年齢差が大きい場合
夫婦の年齢差が大きい場合は、入管側から婚姻の信憑性を疑われがやすく、年齢差が20歳以上であると極めて厳格に審査されます。
但し年の離れた者同士が真摯な愛情に基づく結婚をする場合もあります。その場合には、結婚が真摯な愛情に基づくものであることを強く立証しなければなりません。
必要書類として提出する質問書には交際経緯等を記入する箇所がありますので、具体的に下記のような事を記載する必要があります。
- 知り合った経緯(知り合った場所や、友人からの紹介なのか等)
- 交際することになったきっかけ(何回目のデートなのか、どちらからのアクションなのか、どのタイミングで告白したのか等)
- 交際の態様(デートに行った場所、共通の趣味、送りあったプレゼント、友人への紹介、互いの長所・短所、コミュニケーションをとるために努力したこと等可能な限り詳細に記載します。)
- 結婚することになった経緯・理由(どちらがいつどこでどのようなタイミングでプロポーズしたのか等)
- 現在の生活状況(住居、仕事、経済基盤、預貯金、互いの呼び名等)
- 将来の家族計画(仕事や子どものこと等)
- 当事者にしか知りえない具体的エピソード
こんなことまで書く必要があるのか疑問に感じる方も多いと思いますが、それぐらいの気持ちで記載することをお勧めします。
またその記載した内容のそれぞれを客観的に証明する写真やメールのコピー、手紙、電話通話記録、渡航記録なども提出したほうが良いでしょう。
交際のきっかけが恋人紹介所・結婚紹介所等の紹介による場合
等
交際のきっかけが恋人紹介所・結婚紹介所等による場合も、入管当局から婚姻の信惣性を疑われる典型的な例です。
日本人配偶者が実際に外国人申請者の本国に数回訪れたことがあっても、なお婚姻の信憑性を疑われて不許可となることもあります。
この場合についても、「夫婦の年齢差が大きい場合」の項で解説したような立証が必要です。
日本人が外国人と、または、外国人が日本人と離婚歴がある場合
日本人が外国人と、または、外国人が日本人と離婚歴がある場合にも結婚の信憑性が疑われます。
特に前婚の婚姻期間が短い場合には、偽装結婚を繰り返しているのではないかとの疑念を抱かれる要素です。
婚姻後に外国人が風俗営業を続ける場合
「日本人の配偶者等」の在留資格は、入管法上の活動範囲に制限はありませんが、結婚後に外国人がホステス等の風俗営業を継続する場合は、「真摯な愛情に基づく結婚であれば、配偶者が水商売を続けることは許さないのではないか」、「風俗営業を継続するため(ビザのため)に結婚するのではないか」などの疑念を持たれます。
同居する住居が狭い場合
同居する住居が狭く、例えばワンルームしかないような場合には、同居の事実が疑われることがあります。
また子どもがいるような場合にはより広いスペースが求められます。
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