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この記事では文化活動ビザを取得するための条件である「在留資格該当性」と「審査のポイント」について解説します。
「在留資格該当性」については、在留資格認定証明書や在留期間更新の一般要件をご確認ください。
外国人が取得したい在留資格を本当に取得できるのか否か、また要件に適合せずに取得できない場合は、日本での在留を諦めるのではなく他の在留資格の要件に適合するか否か、これらを考える上で実務上はまずこの「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」を正確に把握して検討を進めなければなりません。
文化活動ビザの場合は「上陸許可基準」は定められていませんので、文化活動ビザについて法で定められた「在留資格該当性」とその他の「審査のポイント」」について具体的に解説に進めます。
文化活動ビザの「在留資格該当性」
まず入管法別表第1の3に定める法文は下記の通りです。
収入を伴わない学術上若しくは芸術上の活動又は我が国特有の文化若しくは技芸について専門的な研究を行い若しくは専門家の指導を受けてこれを修得する活動(四の表の留学の項から研修の項までの下欄に掲げる活動を除く。)
解説
文化活動ビザは下記の4点に区別されます。
- 収入を伴わない学術上の活動
- 収入を伴わない芸術上の活動
- 我が国特有の文化若しくは技芸について、専門的な研究を行う活動
- 我が国特有の文化若しくは技芸について、専門家の指導を受けて修得する活動
それぞれについて具体的に解説します。
用語の定義
「収入を伴わない」とは
「収入を伴わない」とは、申請者の収益にならないことを意味します。従って、金銭を受領したとしても、その金銭の全額が研究目的のために支出されるのであれば受領者の収益にはならず、「収入を伴わない」ことになります。
また授受される金銭の名目には囚われず、奨励金・滞在費・研究費のいずれであっても、研究のために消化されない残存する金額が受領者のものとなる場合は「収入を伴う」ことになります。
「学術上の活動」とは
下記の活動が該当します。
- 外国の大学の教授、准教授、助教、講師等や外国の研究機関から派遣された者が報酬を受けないで行う調査・研究活動
- 大学教授等の指導の下に無報酬で研究を行う研究生の活動等
- 専修学校等として認可を受けていない外国大学の日本分校に入学して行う学術上の活動(教育を受ける活動)
- 報酬を受けないで行うインターンシップの活動
「我が国特有の文化又は技芸」とは
日本固有の文化や技芸であって、具体的には下記の活動が該当します。
- 生花、茶道
- 柔道
- 日本建築、日本画、日本舞踊
- 日本料理
- 邦楽
また下記のような、日本固有のものではないが、日本の文化の形成・発展に多いな役割を果たすものも含まれます。
- 禅
- 空手
- 等
「専門的な研究を行い」とは
立証資料として、関係団体からの推薦状や、入賞・入選等の実績などが求められます。
従って、単なる趣味レベルでの日本の文化を学ぶ活動では当然認められず、申請以前から当該活動を継続し、かつ、何かしらの実績があることが求められます。
「専門家」とは
専門家として認められるためには下記の条件のすべてに該当する必要があります。
- 各分野において免許を有すること、又は、各分野に精通している肩書を有する事
- 反復継続してその分野で第三者に指導を行っている、又は、行ったことのある事
単に肩書や免許があるだけでは認められません。
「指導を受けて」とは
実績のある師範や先生と呼ばれる日本人指導者の下で、一定期間個人的にレッスンを受け、日本文化に由来する技能を修得することを意味します。
いけばななら、草月流などの流派がありますが、その流派の指導者である方に依頼して指導を受けることを承諾してもらうだけではなく、下記の事項について打ち合わせをし、契約を結ぶ必要があります。
- 具体的な指導日程と指導内容
- 習得レベルの到達目標と帰国予定
- 授業料
また指導日程については注意が必要で、週2回各2時間程度のレッスンであれば、文化活動ビザはおそらく認められません。
文化活動ビザが認められるのは、習い事レベルではなく、あくまでも主となる活動が「日本の文化・技芸を習得する活動」でなければならず、明確な基準はありませんが、最低でも週の半分以上は活動する必要があります。
他のビザとの境界
留学ビザと文化活動ビザ
一定の教育機関等で教育を受ける活動は留学ビザが該当するが、留学ビザが認められないような教育機関の場合は文化活動ビザが該当する場合があるので注意が必要です。
また留学ビザと文化活動ビザの双方に該当する場合は、留学ビザが優先して決定されることになります。
研修ビザと文化活動ビザ
文化活動ビザは、教育機関に受け入れられて収入を伴わない活動を行うこととされており、研修ビザは、教育機関以外の本邦の公私機関に受け入れられて、技能・技術・知識を習得する活動を行うこととされています。
告示特定活動ビザと短期滞在ビザと文化活動ビザ
インターンシップの活動に従事しようとする者には、本邦の公私の機関から報酬を受ける場合にあっては、特定活動ビザ(9号)が該当します。
報酬を受けない場合では、滞在期間が90日を超えるときは文化活動ビザが、滞在期間が90日を超えないときは短期滞在ビザが該当します。
文化活動ビザの「審査のポイント」
文化活動ビザが許可されるか否かは基本的に「在留資格該当性」に沿って判断されますが、それ以外にも審査のポイントが存在します。
ここではそれらについて具体的に解説します。
支弁能力について
文化活動ビザは基本的には滞在中に就労することにより収入を得ることはできませんので、申請人の滞在中の経費を支弁できることを証明する必要があります。
経費支弁者となれる者は、本人でも、海外に在住する第三者でも、日本に在住する第三者でも構いません。また継続的・安定的な奨学金であっても認められます。
どれくらいの預金等が必要かについては明確な基準がありませんが、1年間の在留に対しておおむね300万円前後の預金残高証明書が提出できればよいでしょう。
文化活動をする理由の立証
申請人となる外国人の方が、なぜ日本の文化に興味を持ち、なぜその文化・技芸を習得したいかや、習得した技芸を将来何に活かすのか等について記載した理由書を提出したほうがいいでしょう。
これは必要書類として明示されている提出書類ではありませんが、当該申請人が文化活動をする信憑性を立証しておいたほうがよいです。
日本語能力について
文化活動ビザにおいては申請人に日本語能力があることまでは要求されていません。
特に「専門家の指導を受けて日本の文化・技芸を習得する活動」の場合には、日本語能力が必要ではないかと思われる方も多いですが、実際には外国人向けに外国語による指導サービスを展開しているところもありますので、一概に日本語能力が必要というわけではありません。
但し、指導を受ける専門家の機関がこのような外国語サービスをしていない場合で、申請人の日本語能力が乏しい場合には、文化活動ビザの申請に対して疑義が生じることにより、不許可となる可能性も高まります。
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