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この記事では経営・管理ビザを取得するための条件である「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」について解説します。

 最新の情報に基づいた解説ページはコチラ→【2017年入管内部基準】経営管理ビザの審査について(ビザ) 

「在留資格該当性」と「上陸許可基準」については、在留資格認定証明書や在留期間更新の一般要件をご確認ください。

外国人が取得したい在留資格が本当に取得できるのか否か、また要件に適合せずに取得できない場合は、日本での在留を諦めるのではなく他の在留資格の要件に適合するか否か、これらを考える上で実務上はまずこの「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」を正確に把握して検討を進めなければなりません。

経営・管理ビザについて法で定められた「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」の解説に進めます。

経営・管理ビザの「在留資格該当性」

まず入管法別表第1の2に定める法文は下記の通りです。

本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動(この表の法律・会計業務の項の下欄に掲げる資格を有しなければ法律上行うことができないこととされている事業の経営又は管理に従事する活動を除く。)

法文の整理

入管法の定める経営・管理ビザの活動内容は、「法律・会計業務」の者を除く下記の2点です。

  • 本邦において貿易その他の事業の経営を行う活動
  • 本邦において貿易その他の事業の管理に従事する活動

用語の定義・解説

では「事業」とは何か、「事業の経営」とは具体的にどのような事を意味するか、「事業の管理」も同様にどのような事を意味するか、法文を見ても分かりにくいと感じる方が多いと思います。これらについて詳しく解説を進めていきたいと思います。

「事業」とは

改正前の「投資・経営」ビザは、、外国人や外国法人による投資がなされていなければ認められなかったことに対し、改正後の「経営・管理」ビザは、それらの投資の有無は関係ありません。

従って、外資系企業はもちろん、日本からの投資のみで成立する純粋な日本企業であっても認められます。

また営利目的か、非営利目的かは問われません。

但し、事業の「適正性」と「継続性」がある事を要求されています。決定する在留期間の途中で事業が立ち行かなくなり、在留活動が途切れることが想定されるような場合は認められません。外国人が経営又は管理に従事する事業が安定して営まれるものと客観的に認められることが必要です。

この点、事業の適正性と継続性を立証するための事業計画書の作成は非常
に重要です。事業の継続性がどのようにあるか、仕入れや販売のルート、価格設定の合理性、特殊なノウハウや人脈、特殊な経営能力やツールや経験等、具体的に記載し、さらに裏付ける資料も積極的に提出すべきです。

「適正性」について

飲食店、風俗営業店、製造業、販売店など、業務の制限はなく、日本において適法に行われる業務であれば認められます。

但し、必要な許認可の取得と労働基準法・雇用保険法などの各種法遵守が要求されます。申請時点において取得していない場合には、取得する見込みが確実である事を立証する必要があります。

原料や商品の仕入れなどについても違法ルートである事が発覚すれば許可されません。

「継続性」について

「経営・管理」ビザは、事業が継続的に運営されることが要求されており、この継続性は、事業の直近二期の決算状況や賃借状況等を踏まえて審査されます。

そして事業の継続性に関しする具体的な取り扱いは下記の通りです。

(用語の解説)

  • 直近期:直近の決算が確定している期(損益計算書から確認)
  • 売上総利益(損失):純売上高から売上原価を控除した金額(損益計算書から確認)
  • 剰余金:法定準備金を含むすべての資本剰余金及び利益剰余金(貸借対照表から確認)
  • 欠損金:期末未処理損失、繰越損失(貸借対照表から確認)
  • 債務超過:負債が資産を上回った状態(貸借対照表の「負債の部」の合計が同表の「資産の部」の合計を上回った状態のこと。)

法務省HP-外国人経営者の在留資格基準の明確化についてに、事業の継続性の評価により、継続性が認められた事例・認められなかった事例について公開されていますのでご確認ください。

直近期末において剰余金がある場合又は剰余金も欠損金もない場合

この場合には事業の継続性に問題はないとされます。

たとえ直近期に当期純損失となったとしても、剰余金が減少したのみで欠損金とまで至らないものであれば、当該事業の継続性に問題ありません。

直近期末に欠損金があるが、直近期末に債務超過となっていない場合

原則として事業の継続性があると認められます。

単に直近一期のみだけで判断するのではなく、将来にわたって事業の継続が見込まれる可能性を考慮されます。

但しこの場合は、今後1年間の事業計画書や予想収益を示した資料の提出が求められます。また必要に応じて、公認会計士や中小企業診断士などの第三者が評価を行った書面の提出が求められる場合があります。

直近期末に欠損金があり債務超過となっているが、直近期前期末では債務超過となっていない場合

これも前項と同様に1年以内に具体的な改善が見込める事を前提に事業の継続性を認めることとされています。

但し、前項よりも事業の存続が危ぶまれる状況となっていることから、公認会計士や中小企業診断士などの第三者が評価を行った書面の提出が基本的に求められます。

直近期末・直近期前期末の2期連続債務超過となっている場合

これは前項の状態から1年以内に改善できなかったという事を意味しますので、事業の継続性は認め難いとされています。

但し、増資や他の企業による救済等の具体的な予定がある場合には、その状況も踏まえて事業の継続性を判断されます。

直近期・直近期前期の2期連続売上総利益がない場合

二期連続に売上高が売上原価を下回るということは、通常の事業を行っているものとは認められません。

たとえ営業外損益や特別損益により利益を確保したとしても、本来の事業から生じるものではありません。

但し、増資や他の企業による救済等の具体的な予定がある場合には、その状況も踏まえて事業の継続性を判断されます。

「事業の経営」とは

「事業の経営」とは、活動内容の観点からは下記のものが挙げられます。

  • 事業の運営に関する重要事項の決定
  • 業務の執行
  • 監査の業務

また、従事者の観点からは下記のものが挙げられます。

  • 代表取締役
  • 取締役
  • 監査役
  • その他役員等

さらに具体的な場面としては下記の3つが挙げられます。

  1. 日本で自ら事務所等を開設して、事業の経営を開始して経営を行う
  2. 日本の既存の事業の経営に参画する
  3. 日本で既に事業の経営に行っている者に代わってその経営を行う

なお申請人は、これらの事業の経営に実質的に従事しするものでなければなりません。

「事業の管理」とは

「事業の管理」とは、活動内容の観点からは下記のものが挙げられます。

  • 内部組織の管理的業務に従事する事

また、従事者の観点から下記のものが挙げられます。

  • 部長
  • 工場長
  • 支店長
  • その他管理者等

さらに具体的な場面としては下記の3つが挙げられます。

  1. 日本で自ら事務所等を開設して、事業の経営を開始して、その事業の管理に従事する事
  2. 日本の既存の事業の経営に参画し、その事業の管理に従事する事
  3. 日本で既に事業の経営を行っている者に代わって当該事業の管理に従事する事

管理についても同様に、申請人は、これらの事業の管理に実質的に従事しするものでなければなりません。

活動範囲の留意点

経営・管理に従事する活動と現業に従事する活動の関係

経営・管理に従事する者が、経営・管理に従事する活動の一環として行う現業に従事する活動は、経営・管理ビザの活動に含まれます。

例えば、外国人コックが店舗の経営をしながら調理もする場合などが挙げられます。

但し、現業に従事する活動が主のものと認められるような場合は、「経営・管理」ビザは認められません。

一方、企業の職員として「技術・人文知識・国際業務」ビザで在留していた外国人が、昇進等により経営者や管理者となった場合でも、一定の経営管理活動が認められるので、直ちに「経営・管理」ビザに変更する必要はありません。

複数人による経営・管理に従事する活動について(共同経営・管理)

複数人が事業の経営管理に従事している場合には、単にその人数自体をもって判断されるわけではありませんが、それだけの人数が経営管理をする必要性が要求されます。

そして事業規模・業務量・売上げ・従業員数等を考慮して、申請外国人が事業の経営管理に従事する活動を主としてすると認められるか否かをもって、「経営・管理」ビザが判断されます。

具体的には下記の事項を満たす場合には、それぞれの外国人について「経営・管理」ビザが認められます。

  1. 事業の規模・業務量等の状況を考慮して、各外国人が事業の経営管理を主たる活動として行うことについて合理的な理由が認められる事
  2. 事業の経営管理に係る業務について、各外国人ごとの業務範囲が明確である事
  3. 各外国人が経営管理に従事する対価として相当の報酬の支払いを受けることとなっている

会社の事業規模や業務量がそれほど大きくない場合には、1名しか「経営・管理」ビザが認められない事は多くあります。この場合に、「経営・管理」ビザを取得できないこととなる役員については、「技術・人文知識・国際業務」ビザを検討することになります。

他のビザとの境界

「短期滞在」と「経営・管理」

会議等のための短期来日について

事業の経営等に関する会議、連絡業務等で短期間来日する場合は短期滞在ビザや経営・管理ビザのどちらかに該当するか迷われる方も多いです。

外国法人の子会社である日本法人(日本支社)の経営者に就任した者が、当該日本法人から報酬が支払われる場合は、基本的には経営・管理ビザが該当します。その外国人の生活の基盤が日本以外にある事は関係ありません。

一方、日本法人の経営者に就任していない場合や、就任していたとしても日本法人から報酬が支払われない場合には、短期滞在ビザで入国し、当該会議等に参加することとなります。

事業を開始する準備のための短期来日について

従来は、日本で株式会社等を設立して「経営・管理」ビザを得ようとする場合は,「短期滞在(90日)」で上陸し、その間に、外国人登録を行い、その住居地をもって会社設立の登記をし,「投資・経営」に係る手続を行っていました。

しかし、中長期在留者でなければ在留カードが交付されず、住民票も作成されない為、「短期滞在」の在留資格で在留する者は居住地を証する証明書を持つことができず、法人を設立するための準備行為を行うことが困難でした。

しかし平成24年7月からは、法人の登記事項証明書が無くとも、在留期間「4月」の経営・管理ビザが認められるようになりました。

但し、株式会社等を設立する準備を行う意思があることや、株式会社等の設立がほぼ確実に見込まれることが提出書類から確認できる場合のみに限定されているので注意が必要です。

優先されるビザ

基本的には、他の在留資格に該当するような専門的知識に従事する者であっても、経営・管理に従事する場合は経営・管理ビザが該当します。

例えば、病院の経営に係る活動は、医師の資格を有する者が行う場合であっても、経営・管理ビザが該当します。

但し、法律業務・会計業務については、「法律・会計資格に認められた独占業務に限定した経営・管理業務を専ら行う」の場合に限って法律・会計業務ビザが優先されます。弁護士、外国法事務弁護士、公認会計士、外国公認会計士等の士業資格を有しなければ行うことができない活動のみを事業とする事務所の経営又は管理に従事する活動は、法律・会計業務ビザに該当します。

士業の方は独占業務が認められていますが、誰でも従事できる非独占業務も行っていることが多いです。このような非独占業務をも行うような経営・管理業務の場合には経営・管理ビザが該当し得ます。

経営・管理ビザの「上陸許可基準適合性」

経営・管理ビザの上陸許可基準について、基準省令の本文と1号~3号について、それぞれに分けて解説します。

基準省令本文

基準省令本文に定められている法文は下記の通りです。

申請人が次のいずれにも該当していること。

申請人が次のいずれにも該当していることと規定されていますが、各号の規定からは、「事業の経営に従事する者」と「事業の管理に従事する者」が区別されていることがわかります。

「事業の経営に従事する者」については、下記の1号~2号に該当する事が要求されています。

「事業の管理に従事する者」については、下記の1号~3号に該当する事が要求されています。

基準省令第1号

基準省令第1号に定められている法文は下記の通りです。

一 申請に係る事業を営むための事業所が本邦に存在すること。ただし、当該事業が開始されていない場合にあっては、当該事業を営むための事業所として使用する施設が本邦に確保されていること。

法文の整理

この第1号は、事業所が現に存在する事若しくは確保している事について定めています。

「事業所」とは

「事業所」の定義

「事業所」の定義は、総務省が定める日本標準産業分類一般原則に基づきます。

具体的には、事業所は、工場、製作所、事務所、営業所、商店、飲食店、旅館、娯楽場、病院、鉱業所、農家等が含まれます。

事業所として認められる要件については下記に該当する必要があります。

  • 経済活動が単一の経営主体のもとにおいて一定の場所すなわち一区画を占めて行われていること。
  • 財貨及びサービスの生産又は提供が、人及び設備を有して、継続的に行われていること。

詳細については、総務省HP-日本標準産業分類(平成25年10月改定)(平成26年4月1日施行)をご確認ください。

事業所と認められるための事業の継続性

経営・管理ビザは、継続的に事業が運営されることが求められます。従って下記のような事業所は上陸許可基準に適合していると認められません。

  • 月単位の短期間賃貸スペースの利用
  • 容易に処分可能な屋台等の利用
  • 鉄道会社のコンテナを改良して事業所にする場合
  • バーチャル・オフィスも事業所とは認められない。

バーチャルオフィスとは、実際に事業を行う場所ではなく、住所及び電話番号等を借りて、電話オペレーターによる問い合わせ対応や、郵便物を転送する場所を意味します。

但し、一時的な住所又は事業所であっても、インキュベーターが企業支援を目的として、インキュベーションオフィス等を貸与されている場合は事業所と認められます。(インキュベーターとは、経営アドバイスや企業運営に必要なビジネスサービスの橋渡しを行う団体・組織を意味します。)

事業所が賃貸借契約の場合

事業所は賃貸借契約による賃貸物件が最も多いです。賃貸物件の場合は事業所と認められる為に、下記の要件に該当する必要があります。

  • 賃貸借契約において、その物件の使用目的が事業用であることを賃貸人が承諾し、その事を明らかにしている事
  • 賃貸借契約者についても当該法人等の名義とし、当該法人等による使用であることを明確にすること。
賃借する住居用物件の一部を事業所として使用する場合

住居として賃借している物件の一部を事業所とする場合は下記の要件に該当する必要があります。

  • 住居目的以外での使用を貸主が認めていること
  • 事業を行う設備等を備えた事業目的占有の部屋を有していること
  • 看板類似の社会的標識を掲げていること

また、住居の借主と事業所の利用者が異なる場合、つまり、貸主から住居用として賃借する借主からさらに住居の一部を転貸借して事業所として利用する場合には、上記に加えて下記に該当する必要がある。

  • 事業所として借主と当該法人の間で転貸借されることにつき、貸主が同意していること。
  • 住居の借主も当該法人が事業所として使用することを認めていること
  • 当該物件に係る公共料金等の共用費用の支払に関する取決めが明確になっていること

また「設備等」については最低限、電話・ファックス・コピー機・パソコン備わっていることが必要であるとされています。

法務省HP-外国人経営者の在留資格基準の明確化についてに事業所として認められた事例・認められなかった事例について公開されていますのでご確認ください。

基準省令第2号

基準省令第2号に定められている法文は下記の通りです。

二 申請に係る事業の規模が次のいずれかに該当していること。
 イ その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する二人以上の常勤の職員(法別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者を除く。)が従事して営まれるものであること。
 ロ 資本金の額又は出資の総額が五百万円以上であること。
 ハ イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること。

法文の整理

この第2号は、事業の規模について定めたもので、イロハのいずれかに該当する必要があります。

イは、経営・管理に従事する者を除き、2名以上の常勤職員が居る事が要件とされており、この2名は、日本に居住する日本人・特別永住者・日本人の配偶者等ビザを有する外国人・永住者ビザを有する外国人・永住者の配偶者等ビザを有する外国人・定住者ビザを有する外国人でなければなりません。

ロは、事業が会社形態で営まれる場合を前提とする規定であり、株式会社における払込済資本の額(資本金の額)又は合名会社、合資会社又は合同会社の出
資の総額が500万円以上の事業であることを要件とされています。

ハ、については後述します。

用語の定義・解説

イの「常勤の職員」の定義は何か、ロの「資本金」の範囲とは何か、ハの「準ずる規模」とは具体的にどのような規模なのかなど、詳しい解説に進みます。

イ「常勤の職員」とは

当該事業所において業務に従事している者が「常勤の職員」と認められる為には、一般的な要件として下記に当てはまる必要があります。

  • 勤務が、休日等を除いて毎日所定の時間の中、常時その職務に従事しなければならないものであること。
  • 職務に応じた給与等が設定されていること。

さらに労働基準法上の観点からも要求事項があり、上記に加えて下記に該当する必要があります。

  • 労働日数が週5日以上、年間217日以上、週労働時間が30時間以上であること
  • 入社日から6ヵ月間継続して勤務し、全ての労働日の8割以上出勤した職員に対し10日以上の年次有給休暇を与えられること
  • 雇用保険の被保険者であること。(短期雇用特例被保険者となっている者は除く。短期雇用特例被保険者とは、いわゆる期間工、季節労働者、日雇
    労働者を意味する。)

これらの考えから、パートタイマーは「常勤の職員」とは認められないことになります。

そして「常勤の職員」は事業所に直接雇用されている者に限らない事に留意する必要があります。使用者と労働者との間で締結される契約形態は「直接雇用」のほかに「在籍出向」、「転籍出向」、「派遣」、「請負」があるところ、「直接雇用」と「転籍出向」は従事する事業所において「常勤の職員」と認められます。

「在籍出向」とは、労働者が出向元に労働契約を残しつつ、出向先で業務に従事する場合を意味します。この場合は、労働者は出向元とも出向先とも労働契約を結ぶことになるが、その労働契約は分担する形となります。そして、一般的に退職や解雇に関する事項については出向元に残る者です。従って、出向先は包括的な労働契約を有さず、出向先で業務に従事する労働者は「常勤の職員」とは認められません。

一方「転籍出向」については、出向元と労働者の労働契約は解消され、出向先が包括的に労働契約を結ぶこととなるので、そこで従事する労働者は「常勤の職印」として認められます。

「派遣」により、派遣先で業務に従事する労働者は、派遣先事業所からは指揮命令を受けるだけで、労働契約自体は派遣元と結んでいますので、業務に従事している派遣先での「常勤の職員」とは認められません。

「請負」も派遣と同様に、注文者側で業務に従事しても、労働契約は請負業者と結んでいるので、業務に従事している注文者側での「常勤の職員」とは認められません。

ロ「資本金」の範囲とは

会社の事業資金が借金であった場合は、原則は資本金に含めない取り扱いがなされる。

但し、その事業主である外国人が当該借入金の個人補償をしている等の特別の事情があれば本人の投資額と見る余地もある。

ハ「準ずる規模」の具体的な規模とは

ハは、イ及びロには該当しないが、イに準ずる規模又はロに準ずる規模について定めたものです。

この第2号は事業の規模について定めているところ、「常勤職員2名」又は「資本金500万円」のどちらかが要求されています。そしてこの「常勤職員2名」と「資本金500万円」は区別されていますが、根本的な考えは同一の規模を表しています。要するに「常勤職員2名」は金額に換算すれば500万円相当であるという考えが導かれます。

この考えから、イに該当しないがイに準ずる規模とは、具体的は「常勤の職員は1名しかいないが、概ね250万円程度の費用を投下して営まれているような事業の規模」となります。

次に、ロは資本金について定めているものですが、前述した通り、この規定は事業が会社形態で営まれる場合を前提としています。これに対して、ロに該当しないがロに準ずる規模とは、具体的には、外国人が個人事業の形態で事業を開始しようとする場合に、500万円以上を投資して営まれているような事業の規模がこれに該当します。

「500万円以上の投資」の範囲について

この「500万円以上の投資」の範囲については、事業を営むのに必要なものとして投下されている総額であり、下記の目的で行われている事を要します。

  • 事業所の確保に係る経費
  • 役員・常勤・非常勤を問わず、雇用する職員の給与等に係る経費
  • 事業所の事務機器購入経費や事業所維持に係る経費
引き続き行われている事業の場合について

500万円以上の投資額は、毎年500万円の投資を行うことが必要であるものではなく、一度投資された500万円以上の投資がその後も回収されることなく維持されていれば差し支えありません。

留意点

留学ビザから経営管理ビザへの変更に多い問題

留学生が日本に在留中に起業して、経営・管理ビザに変更する場合には、出資金について厳しく審査されます。

経営・管理ビザは500万円相当の出資が必要としているところ、留学中にどのように調達したものかなど、合理的な理由が必要です。

留学ビザは就労できる資格ではなく、資格外活動許可を取得しても週28時間の範囲内でしか報酬を得る活動に従事できません。親からの送金を受けたなど合理的に説明できない500万円相当の貯金を有している場合は、違法な就労をしていたのではないかと疑義が生じてしまいます。

基準省令第3号

基準省令第3号に定められている法文は下記の通りです。

三 申請人が事業の管理に従事しようとする場合は、事業の経営又は管理について三年以上の経験(大学院において経営又は管理に係る科目を専攻した期間を含む。)を有し、かつ、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

法文の整理

事業の管理に従事する者が、この第3号で要求している従事経験歴と報酬の両方に該当する事が必要です。

但し実務経験には、大学院における専攻期間を含んでよいとされています。

なお本号は、事業の管理に従事する者の場合に適用される規定であって、事業の経営に従事する者については適用されません。

用語の定義

では「報酬」とは通勤手当などは含まれるのか、「日本人~と同等額以上」とはどの程度の範囲まで許されるのかなど、用語の定義についての解説に進みます。

「報酬」とは

ここでいう「報酬」は、役務の給付の対価であり、通勤手当・住宅手当などの実費弁償は含みません。また、扶養手当についても被扶養者の有無による審査上の不平等を生じさせないため、「報酬」に含めないこととされています。

また退職金・結婚祝金・見舞金・現物給付としての住宅・食事等・制服・旅費等については、その実質が見舞金・恩恵的・福利厚生的なものは「報酬」に含まれませんが、労働協約・就業規則・労働契約等で支給条件が明らかなものは「報酬」に含まれます。

「日本人~と同等額以上」とは

基本的には申請人が契約する個々の企業に在する日本人であって同等の地位の者と比較されます。

当該企業に日本人居ない場合は、同種の職種の他の企業に在する同等の地位の日本人と比べ同等であるかで判断されます。

例えば、日本人大卒者の新入社員給与と外国人大卒者の新入社員給与を比較し、同等かどうかという事が審査されることになります。

留意点

在留資格認定証明書交付申請の際に、雇用契約書や在職証明書等を提出し、申請人が受ける予定の報酬額が入国管理局に把握されることになります。

その後の在留期間更新許可申請の際に、納税証明書、源泉徴収票、給与明細書等を提出した際に、当初の報酬予定額と実際に得た報酬額に相違が確認されれば、虚偽申請として疑義が生じます。

従って、下記の「報酬」の定義に解説する「報酬」の範囲をしっかりと理解し、通勤手当などの実費は含まないようにしてください。

 

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