2017年入管内部基準に記載されている、ビザ審査における「企業内転勤ビザの審査」について記載します。
企業内転勤ビザの審査要件(法文)
企業内転勤ビザは、外国に位置する会社から日本の事業所に転勤する場合で、当該外国会社と日本の事業所が資本関係のある系列会社・関連会社である場合に付与されるビザです。また、転勤後に行う業務内容の制限は技術・人文知識・国際業務ビザと同一です。
入管における審査では、入管法に定められたビザ該当性と基準省令に定められるビザ基準省令に従って判断されます。
ビザ該当性(法文引用)
本邦に本店、支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行うこの表の技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる活動
ビザ基準省令本文(法文引用)
申請人が次のいずれにも該当していること
ビザ基準省令1号(法文引用)
一 申請に係る転勤の直前に外国にある本店、支店その他の事業所において法別表第一の二の表の技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる業務に従事している場合で、その期間(企業内転勤の在留資格をもって外国に当該事業所のある公私の機関の本邦にある事業所において業務に従事していた期間がある場合には、当該期間を合算した期間)が継続して一年以上あること。
ビザ基準省令2号(法文引用)
二 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
要件についての詳細解説
要件のまとめ
企業内転勤ビザが認められるためには下記のすべての要件について該当する必要があります。
- 転勤(異動)前後の事業所が、要件に合致する関係であること
- 期間を定めた転勤であること
- 1年以上継続して、転勤前の会社に勤務していたこと
- 転勤前に技術・人文知識・国際業務ビザで認められる業務に従事していたこと
- 転勤後に技術・人文知識・国際業務ビザで認められる業務に従事する予定であること
- 転勤後の会社と契約があること
- 日本人と同等以上の報酬額であること
これらの要件について詳しく解説を進めます。
その前に、技術・人文知識・国際業務ビザと比較して企業内転勤ビザのメリットとデメリットについて簡単に解説しておきます。
企業内転勤ビザと技術・人文知識・国際業務ビザの要件上のメリットとデメリット
企業内転勤ビザを選択する上で、下記のメリットとデメリットが存在します。
高卒や実務経験が乏しい場合でも企業内転勤が認められるという点が企業内転勤の優れた部分です。
メリット
- 大卒または実務経験10年の要件が不要
デメリット
- 期間の定めのある転勤である必要がある
- 資本関係のある企業間の転勤である必要がある
- 転勤前の企業で1年以上の在籍期間があること
- 転勤した特定事業所のみで従事する必要がある
技術・人文知識・国際業務ビザについては、【2017年入管内部基準】技術・人文知識・国際業務ビザの審査について(ビザ)を参照してください。
では要件について詳しく解説していきます。
転勤(異動)前後の事業所の、要件に合致する関係とは
まず転勤前後の事業所には、民間企業だけではなく、公社・独立行政法人などが含まれます。
そして、「転勤」の前後の事業所の関係において、企業内転勤ビザが認められるのは下図のとおりです。
なお、「子会社」、「孫会社」「関連会社」の定義は、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則の第8条に定義されています。
子会社の定義
会社Aが会社Bの、「意思決定機関」を支配している場合に、会社Aを親会社、会社Bを子会社となります。
そして「意思決定機関」を支配しているか否かについて、会社Aが会社Bの意思決定機関を支配しているといえる為には下記①②③のいずれかに該当する必要があります。
- ①50%を超える会社Bの議決権を、会社Aが所有している場合
- ②40%~50%の会社Bの議決権を、会社Aが所有している場合で、下記(A)~(E)のいずれかに該当する場合
- ③下記(A)に該当し、かつ、下記(B)~(E)のいずれかに該当する場合
- (A)会社Aと、議決権・出資・人事・資金・技術・取引等の関係で緊密な関係のある会社Cや会社Dが、合同で会社Bの50%を超える議決権を有している場合
- (B)現在、または、過去に、会社Aの役員・業務執行社員・使用人であった者が、会社Bの現在の取締役会(これに準ずる機関を含む)の構成員の過半数を占めていること
- (C)会社Aと会社Bの間に、会社Aが会社Bの意思決定を支配する契約書が存在する場合
- (D)会社Aが会社Bに融資を行っている場合で、その額が会社Bの貸借対照表の負債の部に計上されている総額の過半である場合(Aと
同様に合同で過半を超える場合でも可) - (E)その他、会社Aが会社Bの意思決定機関を支配していることが推測される事実が存在すること。
孫会社の定義
親会社と子会社の合同で、または子会社単独で、意思決定機関をしている会社がいる場合、その会社を親会社にとっての孫会社となります。
意思決定機関の支配については、「子会社の定義」を参照してください。
関連会社の定義
会社Aが、会社Bの「意思決定」に重要な影響を与えることができる場合に、会社Aと会社Bの関係は関連会社といえます。
「意思決定」に重要な影響を与えることができるとは、下記のいずれかに該当する必要があります。
- ①20%以上の会社Bの議決権を、会社Aが所有している場合
- ②15%~20%未満の会社Bの議決権を、会社Aが所有している場合で、下記(A)~(E)のいずれかに該当する場合
③会社Aと、議決権・出資・人事・資金・技術・取引等の関係で緊密な関係のある会社Cや会社Dが、合同で会社Bの20%以上の議決権を有している場合で、下記(A)~(E)のいずれかに該当する場合
④会社Aと会社Bが共同で支配される契約が存在する場合(共同支配企業)
(A)現在、または、過去に、会社Aの役員・業務執行社員・使用人であった者が、会社Bの現在の代表取締役・取締役(これらに準ずる役職を含む)に就任していること。
(B)会社Aと会社Bが重要な融資関係にある場合
(C)会社Aと会社Bが重要な技術を提供関係にある場合
(D)会社Aと会社Bが重要な事業上の取引がある場合
(E)その他、会社Aと会社Bが「意思決定」に重要な影響を与える関係であると推測される事実が存在する場合
期間を定めた転勤であること
期間を定めた転勤である必要があります。
出向通知書や転勤指示書などで立証する必要があります。
1年以上継続して、転勤前の会社に勤務していたこと
1年以上、転勤前の会社で勤務する必要があります。
これは技術・人文知識・国際業務ビザの要件に該当しない外国人を、企業内転勤ビザに該当させるために雇い入れすぐに転勤させることを防ぐのが趣旨です。
技術・人文知識・国際業務ビザで認められる業務について
転勤前と転勤後の両方において、技術・人文知識・国際業務ビザで要求される業務内容に従事するもでなければなりません。
従って、転勤後に単純労働に従事するような場合には企業内転勤ビザは認められません。
技術・人文知識・国際業務ビザについては、【2017年入管内部基準】技術・人文知識・国際業務ビザの審査について(ビザ)を参照してください。
転勤後の会社と契約があること
同一法人内で転勤する場合は、すでに雇用契約を結んでいるので、転勤後の会社との契約は必要がありません。
一方、子会社や関連会社等への異動の場合、異動先の会社にて新たに契約を結ぶ必要があります。また、役員の場合には定款や株主総会議事録などで、役員報酬を定める決議をしなければなりません。
日本人と同等以上の報酬額であること
企業内転勤ビザを取得するためには、外国人が業務に従事する機関において、日本人と同等の報酬を得る必要があります。
「日本人と同等の報酬」については、例えば外国人が従事する機関において、同等の地位・技術レベル・経験を有する日本人と比較して、明らかに外国人の給料を安くしていないか否かで判断されます。また、他に日本人従業員がいない場合には同一業種の一般的な報酬額で判断されます。
平均的な新卒の月収は下記のとおりですが、これよりも極端に安い場合は、当該企業におけるほかの日本人の給与についても立証資料として提出したほうがよいでしょう。
- 大学院卒:22.8万円
- 大学卒:20.2 万円
- 高専・短大卒:17.5万円
- 高校卒:16.0万円
また、報酬に含まれるものと含まれないものがあります。
報酬には、役務の対価としての給与・賞与のみを含み、通勤手当、扶養手当、住宅手当等の実費弁償の性格を有するものは含みません。課税対象となるかどうかが報酬に含まれるかどうかの見極めとなります。
他のビザとの区別
経営・管理する業務における経営管理ビザ/企業内転勤ビザ
親子会社や関連会社に転勤・異動する場合であっても、転勤後に経営や管理業務に従事する場合は経営管理ビザに該当します。
企業内転勤ビザの場合は、技術・人文知識・国際業務ビザで認められる業務内容に従事する場合で、一般的な大卒レベルの就労者に認められます。
経営管理ビザについては、【2017年入管内部基準】経営管理ビザの審査について(ビザ)を参照してください。
付与される企業内転勤ビザの在留期間について
5年が付与される基準
下記の①②③④、または、①②③⑤に該当することが必要です。
- ① 入管法の届出義務を遵守していること
- ② 義務教育期間の子が居る場合は、子がきちんと通学していること
- ③ 就労予定期間が3年を超えること
- ④ 契約機関がカテゴリー1またはカテゴリー2であること
- ⑤ カテゴリー3以下であり、かつ、3年の企業内転勤ビザを有し、かつ、日本で継続的に5年以上企業内転勤ビザの活動に従事している
3年が付与とされる基準
下記の①、または②、または③のいずれかに該当することが必要です。基本的にカテゴリー2以上(法定調書合計表が1500万円以上)とならなければほとんど認められません。
① 下記のabcd、または、abceに該当すること
- a.入管法の届出義務を遵守していること
- b.義務教育期間の子が居る場合は、子がきちんと通学していること
- c.就労予定期間が1年を超え、3年以内であること
- d.契約機関がカテゴリー1またはカテゴリー2であること
- e.カテゴリー3以下であり、かつ、3年の企業内転勤ビザを有し、かつ、日本で継続的に5年以上企業内転勤ビザの活動に従事している
② 5年の在留期間を決定されていた者が在留期間更新の際に、5年基準の①②のいずれかに該当しなくなった者であり、就労予定期間が1年を超える者
③ 5年、1年、4月又は3月の項のいずれにも該当しないもの
1年が付与とされる基準
他の付与基準に該当しない場合はほとんどがこの1年ビザが付与されます。
特に3年の企業内転勤ビザを有していた者で、入管法上の届出義務などを怠ると1年ビザに降格になることには留意が必要です。
また、在留状況等により3年から1年に降格する場合もあります。
3月が付与とされる基準
就労予定期間が3ヶ月以内のもの