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この記事では入管職員の立場における、入管審査の考えについて紹介したいと思います。

入管審査の目的とその達成の為に

入国審査や在留審査は、下記二つの達成を目的とします。

  1. 日本の外国人受け入れ政策や方針に適合する外国人を円滑に受け入れること
  2. 日本の外国人受け入れ政策や方針に適合しない外国人を確実に拒否すること

上記の目的に対して、事実を正確かつ公正に分析しなければなりません。

大阪においてはAと判断して、東京においてはBと判断するような、場所的不公正が発生してはいけません。また、A国籍の方には許可して、B国籍の方には不許可とするような事もあってはなりません。

入管職員等の主観・価値観を極力排除し、行政の根本である法律や規則等を熟知しそれらに従った、適正な業務遂行が求められます。

入管審査の基本的な流れ

入国審査・在留審査の基本的な流れは、①外国人の状況に対して事実認定をし、②認定事実を法律や規則に照らし、 ③処分を下す、という流れになります。

適切な事実認定(①)

入管審査においては、事実認定が客観的にかつ公正に行われることが何よりも重要となります。

そしてその事実認定の方法は、外国人が提出した申請書類をから判断するものだけではありません。

事実認定は段階的に4つの審査を行うとされています。

1.申請者から提出された書類による事実認定

まずは申請者が入管に提出した書類に基づいて事実認定を行います。

2.実態調査による事実認定

書面による事実認定を行った後、更に事実を確認する必要があるときは、電話・面談・実地調査等によって実態の調査を行うことになります。

3.蓄積した情報による事実認定

国は外国人に関する情報を継続的かつ一元的に把握しており、それらの情報を多角的に収集し、綿密に分析します。

4.社会通念・常識による事実認定

1~3の事実認定によって、未だ判断に迷うことがあれば、社会通念的に妥当であるかどうか、社会常識上妥当であるかどうかによって判断します。

認定した事実を法律・規則に当てはめる(②)

前記で認定した事実に対して、法律・規則に照らして、当てはまっているかどうかを検証しなければなりません。

この点、在留資格認定証明書交付申請と在留期間更新・在留資格変更申請で考えが異なります。

行政処分というものは原則、法令が明示する要件以外の要件は一切あり得ません。

この考えは在留資格認定証明書と在留期間更新等の審査にも当然適用されますが、在留期間更新等の場合は入管法第20条~21条に「適当と認めるに足りる相当の理由があれば許可する」とだけ定められています。

従って在留資格認定証明書の場合は、原則論が適用され、直接的に要件を定める基準省令の規定が適用され、それ以外の要件は考慮すべきではないとされています。これは「裁量がない」「羈束行為」である手続きです。

一方、在留期間更新や在留資格変更の場合は、認定事実を照らす法要件自体が「裁量的な判断」を求めています。

この場合は入管職員の裁量に基づいて判断し、「ガイドライン」に従って、外国人の家族状況や在留状況、勤務する会社等の事業内容の変更、その他の事情を考慮して判断されます。

適切な処分を行う(③)

正確な事実認定に基づいて、法要件に当てはめ、外国人に処分をすることになります。

特に不利益処分を行うに当たっては、外国人がどの法要件に適合しないかを明示されます。

本来は行政手続法の除外から、理由提示は必須ではないですが、入管行政の公正の確保と透明性の向上から明示する取扱いです。

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