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高度専門職ビザとは

高度専門職ビザは、「研究ビザ」や「技術人文知識国際業務ビザ」などの就労ビザを有する外国人が、高度なレベルで就労し日本に貢献できる者と認められれば、取得できます。

そして高度と認められるためには、下記の内容を踏まえて、加点方式で計算されるポイントが70点以上得ることができれば取得できます。

  1. 学歴(博士や修士などを取得しているか否か)
  2. 実務経験年数
  3. 年収
  4. 年齢
  5. 実績・資格・役職
  6. 特別加算項目

一例を紹介しますと、「技術人文知識国際業務ビザ」を有する外国人が、修士を取得していれば+20点、実務経験7年で+15点、38歳で年収650万円なら年齢に対して+5点、年収に対して+20点、日本語能力試験N1に合格していれば+15点となり、合計75点で「高度専門職ビザ」が取得できます。

高度専門職ビザのメリット

高度専門職ビザは1号ビザから2号ビザにステップアップします。

高度専門職1号ビザを取得すれば下記の1~4がメリットを享受することができ、さらに高度専門職1号ビザを保有して3年経過すれば高度専門職2号ビザにステップアップし、下記5~6のメリットを享受することができます。

  1. 在留期間が一律で5年
  2. 配偶者の就労がフルタイムでできる(条件あり)
  3. 本国から親を連れてくることができる(条件あり)
  4. 家事使用人を雇うことができる(条件あり)
  5. 在留期間が無制限
  6. 高度専門職ビザの主活動を妨げない範囲で、それ以外の活動を資格外活動許可なく行うことができる

1.就労ビザの在留期間は6ヵ月~5年で指定されますが、5年の在留期間はなかなか認められませんが、高度専門職ビザの場合は必ず5年が指定されます。

2.「高度専門職ビザ」以外の就労ビザを有する外国人の配偶者は通常は「家族滞在ビザ」を有することになり、その配偶者が働きたい場合は、入国管理局へ資格外活動許可を申請し、週28時間を限度に働くことができます。

しかし「高度専門職ビザ」の外国人の配偶者の在留資格は、「家族滞在ビザ」ではなく「特定活動33号ビザ」を持つことになります。

この「特定活動33号ビザ」を有する方は、下記の条件でフルタイムで就労することができます。

  • 高度専門職外国人と同居する
  • 就労機関で日本人と同等の報酬額を得る
  • 「研究ビザ」「教育ビザ」「技術人文知識国際業務ビザ」「興行ビザ」に認められた活動内容をする

3.高度専門職ビザの場合は、条件付きで親を本国から連れてくることができます。条件は下記のとおりです。

  • 高度人材外国人と配偶者の7歳未満の子を養育する場合、または、妊娠中の高度人材外国人や配偶者の介助等を行う場合
  • 高度人材外国人及び配偶者の世帯年収が800万円以上であること
  • 高度人材外国人と同居すること
  • 高度人材外国人又はその配偶者のどちらか片方の親に限ること

7歳未満の子は、高度人材外国人と配偶者を両親とする子であっても、連れ子であっても構いません。また、養子でもOKです。

4.高度専門職ビザの場合は、条件付きで外国人家事使用人を雇うことができ、その外国人家事使用人は家事使用人となることを目的に日本に在留することができます。

また家事使用人は「入国帯同型」と「家庭事情型」の2類型あり、条件が異なります。

まず「入国帯同型」の条件は下記のとおりです。

  • 高度人材外国人と配偶者の世帯年収が1000万円以上
  • 家事使用人は1名
  • 家事使用人の月額報酬額20万円以上
  • 高度人材外国人が日本に入国前に1年間以上雇っていた家事使用人であること
  • 高度人材外国人が日本から出国する場合、家事使用人も同時に出国することが予定されていること

次に「家庭事情型」の条件は下記のとおりです。

  • 高度人材外国人と配偶者の世帯年収が1000万円以上
  • 家事使用人は1名
  • 家事使用人の月額報酬額20万円以上
  • 病気等で日常の家事ができない配偶者が居る、または、13歳未満の子が居ること

以上が高度専門職ビザのメリットとなりますが、この高度専門職ビザと永住ビザはどちらがいいのかという質問をいただきます。

永住ビザの良いところは、永住ビザを取りさえすれば在留期間が無制限になる事に対して、高度専門職ビザは1号から2号へステップアップしなければ無制限になりません。

また活動内容に関しては、永住ビザは制限がないのに対して、2号にステップアップした高度専門職ビザであっても、あくまで指定された就労を主の活動として継続しなければなりません。(主の活動さえ継続すればほかの活動も無制限に行えます。)

一方、高度専門職ビザの良いところは、親や家事使用人を本国から連れてくることができるということです。これは永住ビザには認められません。

従って、高度専門職ビザとして指定された主の就労活動を続けることは前提の場合には、高度専門職ビザの方が優れていることとなります。

ポイント計算について

外国人が本節で示すポイント計算で70点を超えることができれば、高度専門職ビザを取得することができます。

高度専門職ビザは下記の3つに分類され、ポイント計算表もそれぞれで異なります。

  • 高度専門職1号イ(高度学術研究活動)
  • 高度専門職1号ロ(高度専門技術活動)
  • 高度専門職1号ハ(高度経営管理活動)

簡単に説明すると、高度専門職1号イは研究・研究指導・教育活動が該当し、「研究ビザ」「教授ビザ」「教育ビザ」等を有する外国人が主に対象です。

高度専門職1号ロは自然科学・人文知識を要する業務に従事する活動が該当し、「技術人文知識国際業務ビザ」「企業内転勤ビザ」等を有する外国人が主に対象です。(国際業務は認められません。)

高度専門職1号ハは事業の経営・管理に従事する活動が該当し、「経営・管理ビザ」等を有する外国人が主に対象です。

以下にそれぞれのポイント計算について解説します。

高度専門職1号イ(高度学術研究活動)のポイント計算表

学歴 博士号 ※1 30
修士号・専門職学位 ※2 20

実務経験

※3

7年~ 15
5年~7年 10
3年~5年

報酬

※4

1000万円以上 40
900万~1000万円 35
800万~900万円 30
700万~800万円 25
600万~700万円 20
500万~600万円 15
400万~500万円 10

(備考-年齢ごとの年収下限)

  • 30歳未満:400万円未満は0点
  • 35歳未満:500万円未満は0点
  • 40歳未満:600万円未満は0点
  • 40歳以上:800万円未満は0点
 

年齢

30歳未満 15
30歳~34歳 10
35歳~39歳
実績 ①発明者として特許を受けた発明が1件以上 ※5 20
②外国政府から補助金・競争的資金その他の金銭の給付を受けた研究に3回以上従事 ※6
③学術論文データベースに登録されている学術雑誌に掲載されている責任著者論文が3本以上 ※7
④その他上記に準じると法務大臣が認める実績 ※8
 ①~④の内、2つ以上に該当する場合 25
特別加算 契約機関がイノベーション創出促進支援措置を受けている、かつ、中小企業ではない ※9 10
契約機関がイノベーション創出促進支援措置を受けている、かつ、中小企業基本法に規定する中小企業者 ※10 20
契約機関の試験研究費及び開発費の合計金額が、売上高の3%超 ※11
従事しようとする業務に関連する外国の資格、表彰等で法務大臣が認めるものを保有 ※12
日本の大学を卒業又は大学院の課程を修了 ※13 10
日本語能力試験N1合格相当又は日本語専攻で外国の大学を卒業 ※14 15

以下詳しく解説します。

※1 学歴-博士号について

博士号を有する方は修士号も有していますが、もちろん博士号のみの点数が加算され30点のみです。日本・外国は問いません。

※2 学歴-専門職学位について

専門職学位は、専門職大学院を修了した者が取得するものです。具体的には、法科大学院の課程を修了した「法務博士」、教職大学院の課程を修了した「教職修士」があり、名称に「博士」「修士」が含まれますが、「博士」「修士」の学位とは区別されます。

なお、欧米諸国のJuris DoctorやDoctor of Medicineは修士の学位に該当します。

また、経営管理の専門職学位であるMBAやMOTは、本節の高度専門職1号イ(高度学術研究活動)に加算されません。

※3 実務経験について

ここでの実務経験は、高度専門職ビザで従事する予定の研究・教育内容に関連のある研究・教育活動を行ってきた実務経験について問われています。また、職業活動としての経験年数が対象であり、学生の間に研究アシスタント等のアルバイトに従事した期間は含みません。

※4 いつの時点の年収か、年収に含むもの・含まないものについて

まずここでの年収は、申請した後の1年間に所属機関から受ける報酬を意味します。

そして報酬には、基本給・勤勉手当・調整手当等の労働に対する対価があ含まれます。

一方、通勤手当、扶養手当、住宅手当等の実費弁償の性格を有するものは含みません。

残業手当・超過勤務手当については、労働対価であるものの、申請の段階において予測がつかないものなのでポイント計算の報酬には含めない取り扱いとなっています。

※5 発明者として特許を受けたとは

特許権を有していることではなく、発明して特許が認められた事を意味します。

特許法33条第1項には「特許を受ける権利は,移転することができる。」と規定されており、発明者と特許権利者は必ずしもイコールではありません。

あくまでもその外国人が発明をして、特許が認められたことが重要です。

また、特許は日本のものであっても外国のものであっても差し支えありません。

なお、「特許証」の提出が必要となります。

※6 競争的資金とは

「競争的資金」とは、「資源配分主体が広く研究開発課題等を募り、提案された課題の中から、専門家を含む複数の者による科学的・技術的な観点を中心とした評価に基づいて実施すべき課題を採択し、研究者等に配分する研究開発資金」のことをいいます。

※7 責任著者とは

責任著者(筆頭著者)とは、学術論文執筆の主たる責任者を意味し、責任著者以外にも執筆者名を著者に記載することもありますが、それらはポイント加算の対象となりません。

※8 上記に準じると法務大臣が認める実績

ほかの実績項目以外にも、アピールできるような実績がある場合は、法務大臣が個別にポイント付与の適否を判断できます。

具体的には例えば下記のような場合があります。

  • データベースで確認できない雑誌への論文掲載
  • 著名な賞の受賞歴
  • など

※9 「イノベーションの創出」について

イノベーションの創出とは、「新商品の開発又は生産、新役務の開発又は提供、商品の新たな生産又は販売の方式の導入、役務の新たな提供の方式の導入、新たな経営管理方法の導入等を通じて新たな価値を生み出し、経済社会の大きな変化を創出すること」です。

イノベーション創出促進支援措置を受けるためには、「法務大臣が告示をもって定める法律の規定に基づく認定若しくは承認」が必要です。

この「認定若しくは承認」を受けていれば、各省から通知書等の交付を受けているので、まずは所属機関へご確認ください。

加点対象となるイノベーション創出促進支援措置については、【高度人材ポイント制の加点対象となるイノベーション促進支援措置一覧】をご確認ください。

※10 補足

イノベーション創出促進支援措置を受けている契約機関が中小企業である場合は、20点が加算されます。

※11 試験研究費、開発費とは

試験研究費とは、新製品や新技術のために必要な試験研究費の事で、試験のための原材料・試験研究にもっぱら携わる人の人件費・委託研究経費が含まれます。

開発費とは、新技術や新たな経営組織の採用、資源開発、市場開拓等のために必要な費用のことであり、開発のための原料費・専ら開発業務に携わる人件費・委託経費を含みます。

※12 法務大臣が認めるものとは

どのような資格・表彰が認められるかは個別に判断されます。認められる資格については公表されておりません。

※13 大学とは

学校教育法上の大学を意味します。

大学の別科・専攻科・短期大学・大学院・大学付属研究所も含まれます。

また、放送大学は含みますが、防衛大学校・航空大学校等の「大学に準ずる機関」は含みません。

※14 日本語能力について

本項目は独立行政法人国際交流基金と公益財団法人日本国際教育支援協会が実施する「日本語能力試験」のN1のレベルに合格する能力と記載していますが、それ以外でも同等の能力が認められるものでもOKです。

例えば,財団法人日本漢字能力検定協会が実施する「BJTビジネス日本語能力テスト」において480点以上を得点した者等ががあげられます。

「日本語専攻の外国の大学を卒業」とは、日本語学科・日本語通訳科・日本語教育科等が挙げられ、また大学には短期大学・大学院も含みます。

高度専門職1号ロ(高度専門技術活動)のポイント計算表

学歴 博士号 ※1 30
修士号・専門職学位 ※2 20
経営管理の専門職学位(MBA・MOT)を保有 ※15 25
大卒又はこれと同等以上の教育 ※16 10

実務経験

※3

10年~ 20
7年~10年 15
5年~7年 10
3年~5年

報酬

※4

1000万円以上 40
900万~1000万円 35
800万~900万円 30
700万~800万円 25
600万~700万円 20
500万~600万円 15
400万~500万円 10

(備考-年齢ごとの年収下限)

  • 30歳未満:400万円未満は0点
  • 35歳未満:500万円未満は0点
  • 40歳未満:600万円未満は0点
  • 40歳以上:800万円未満は0点
 

年齢

30歳未満 15
30歳~34歳 10
35歳~39歳
実績 発明者として特許を受けた発明が1件以上 ※5 15
外国政府から補助金・競争的資金その他の金銭の給付を受けた研究に3回以上従事 ※6
学術論文データベースに登録されている学術雑誌に掲載されている責任著者論文が3本以上 ※7
その他上記に準じると法務大臣が認める実績 ※8

資格

※17

業務に関連する日本の国家資格を保有、または、IT告示に定める試験合格・資格を保有(1つ)
業務に関連する日本の国家資格を保有、または、IT告示に定める試験合格・資格を保有(複数) 10
特別加算 契約機関がイノベーション創出促進支援措置を受けている、かつ、中小企業ではない ※9 10
契約機関がイノベーション創出促進支援措置を受けている、かつ、中小企業基本法に規定する中小企業者 ※10 20
契約機関の試験研究費及び開発費の合計金額が、売上高の3%超 ※11
従事しようとする業務に関連する外国の資格、表彰等で法務大臣が認めるものを保有 ※12
日本の大学を卒業又は大学院の課程を修了 ※13 10
日本語能力試験N1合格相当又は日本語専攻で外国の大学を卒業 ※14 15

以下詳しく解説します。

※1~※14 高度専門職1号イ(高度学術研究活動)の項目で解説しておりますのでご確認ください。

※15 MBA・MOT以外の経営管理に関する専門職学位について

代表例としてMBA・MOTがありますが、それ以外でも海外において授与されたこれに相当する学位も含まれます。

※16 「大学を卒業し又はこれと同等以上の教育を受けた」とは

「大学を卒業し又はこれと同等以上の教育を受けた」には、大学・短期大学・大学院・高等専門学校・防衛大学校等の各省所管の大学校卒業者・専修学校の専門課程卒業者が含まれます。

※17 本項目の資格について

日本の国家資格を保有については、いわゆる「業務独占資格」「名称独占資格」を指しています。

「業務独占資格」「名称独占資格」とは、法律で資格を有していなければ従事できない業務がある資格、または、当該資格に係る名称を使用することができないこととされている資格をいいます。

IT告示の試験・資格については、出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令の技術・人文知識・国際業務の在留資格に係る基準の特例を定める件をご確認ください。

高度専門職1号ハ(高度経営管理活動)のポイント計算表

学歴 博士号 ※1 ・ 修士号・専門職学位 ※2 20
経営管理の専門職学位(MBA・MOT)を保有 ※15 25
大卒又はこれと同等以上の教育 ※16 10

実務経験

※3

10年~ 25
7年~10年 20
5年~7年 15
3年~5年 10

報酬

※4

3000万円以上 50
2500万~3000万円 40
2000万~2500万円 30
1500万~2000万円 20
1000万~1500万円 10

役職

代表取締役、代表執行役又は代表権のある業務執行社員 10
取締役、執行役又は業務執行社員
特別加算 契約機関がイノベーション創出促進支援措置を受けている、かつ、中小企業ではない ※9 10
契約機関がイノベーション創出促進支援措置を受けている、かつ、中小企業基本法に規定する中小企業者 ※10 20
契約機関の試験研究費及び開発費の合計金額が、売上高の3%超 ※11
従事しようとする業務に関連する外国の資格、表彰等で法務大臣が認めるものを保有 ※12
日本の大学を卒業又は大学院の課程を修了 ※13 10
日本語能力試験N1合格相当又は日本語専攻で外国の大学を卒業 ※14 15

※1~※14 高度専門職1号イ(高度学術研究活動)の項目で解説しておりますのでご確認ください。

※15~※16 高度専門職1号ロ(高度専門技術活動)の項目で解説しておりますのでご確認ください。

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