外国人を適正にサポートし在留許可へ向けて実務をこなすビザ専門行政書士の私としては、入管側の審査処理の権限のしくみを理解しておきたいものです。
ここでは、2017年入管内部基準に記されている、入管側の権限のしくみである、進達・請訓・上申・専決について詳しく記述します。
進達・請訓・上申とは
進達
進達とは、下から上級官庁に届けることを意味します。
入管法に基づく多くの法務大臣の権限は,地方入国管理局長に委任することができるとされていますが、永住許可申請に対する処分など,委任されていないものもあります。これらの委任されていない事項について、法務大臣の判断を求める場合は,地方局長は法務大臣に対して進達を行うものとされています。
請訓
請訓とは下から上級官庁へ命令・指示を求めることを意味します。
在留資格変更や在留資格変更に関する処分など、在留に関係する申請に対する処分の権限は地方入国管理局長に委任されています。
しかし、処分に当たって地方入国管理局長のみで判断することが困難な案件や,より高度な判断を必要とする案件として入国管理局長があらかじめ定めたものについて,地方
局長は法務大臣に対して請訓を行います。
上申
上申とは意見・情況などを、上官・上役などに申し上げることを意味します。
請訓には該当しないが,地方入国管理局長のみでは取扱いの方針を判断することが困難な案件や,本省の判断が必要であるとしてあらかじめ定めたものについて,地方局長は本省に上申を行います。
留意点
まず地方入国管理局長は,請訓及び上申を行うことが本当に必要であるか否か、事実関係等の調査した上で迅速かつ適正に判断を行わなければなららないものとされています。
そして進達・請訓・上申をする場合は、以下の事項を明確にした上で行うものとされています。
- 事案の概要
- 事実関係及び事実認定
- 処分や措置の方針に係る判断が困難となっている点
- 法令上の考え方
- 地方局長の考える対応案及びその理由
- その他特筆すべき事項
そして事実関係として整理しなければならない事柄は、個別の案件によって異なりますが、下記のようなことを見られております。
- 出入国歴
- 在留状況
- 親族状況
- 経歴
- その他参考事項
(在日・在外親族のほか内縁関係にある者等も含め,本人との関係,住居地,職業,在留資格,収入等を含む。)
(賞罰等も含む。)
(配偶者と同居することを目的として入国しようとする者である場合においては,婚姻経緯を含む。)
該当案件
進達
地方入国管理局長は,次のいずれかに該当する場合は,法務大臣に進達するものとされています。
- 永住許可および永住者の在留資格の取消し案件
- 特別永住許可申請案件および特別永住許可の取消し案件
- 意見聴取通知または在留資格取消通知書の公示送達案件
- 新たに指定医として指定する案件
- 在留カードの交付案件
- 特別永住者証明書の交付案件
・新規上陸に伴う在留カードの交付(上陸許可後の交付)
・新規上陸に伴う在留カードの交付(後日交付)
・住居地以外の記載事項の変更
・在留カードの有効期間の更新
・在留カードの紛失再交付
・在留カードの汚損等再交付
・在留カードの交換希望による再交付
・在留資格変更許可,在留期間更新許可,永住許可及び在留資格取得許可に伴う在留カードの交付
・特別永住許可に伴う特別永住者証明書の交付
・住居地以外の記載事項の変更
・特別永住者証明書の有効期間の更新
・特別永住者証明書の紛失再交付
・特別永住者証明書の汚損等再交付
・特別永住者証明書の交換希望による再交付
請訓
地方入国管理局長は,次のいずれかに該当する場合は,法務大臣に請訓するものとされています。
(一部黒塗りのため未公開)
- 上陸特別許可に関する在留資格認定証明書交付申請案件
- 人身取引等の被害者に対する措置への該当性が明らかではないが,被害者の保護の必要性その他の事情を考慮し,在留を認めることが相当と考えられる案件
- DV被害者の外国人からの在留期間更新許可申請または在留資格変更許可申請案件
- 在留資格の取消しの決定案件
- 入国管理局長が指定した案件
- 別途、通達・通知等により本省が指定した案件
なお、入国管理局長が指定した案件とは、下記以外の特定活動ビザへの在留資格変更許可案件を意味します。
- 告示内特定活動案件
- 告示外特定活動案件のうち、高度人材の就労配偶者・家事使用人案件
- 継続就職活動及び就職先内定者の継続在留活動案件
- 出国準備のための活動案件
- 人身取引等被害者の在留活動案件
上申
地方入国管理局長は,次のいずれかに該当する場合は,法務大臣に上申するものとされています。
(一部黒塗りにより未公開))
- 技能実習ビザに規定されている外国機関・監理団体の告示への追加に関する案件
- 技能実習ビザに規定されている外国機関・監理団体の告示からの削除に関する案件
- 留学ビザに規定されている日本語教育機関等の告示への追加案件
- 留学ビザに規定されている日本語教育機関等の告示からの削除案件
- 研修ビザ・技能実習ビザに規定されている「不正行為」に該当すると認められる案件
- 取次弁護士、取次行政書士の不正行為に関する案件
- 別途,通達・通知により本省が指定した案件
専決事項
地方入国管理局長は,下記の案件について管下の支局長または出張所長に専決させることができるとされています。
しかしながら、ほとんど黒塗りで未公開となっております。