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外国人を適正にサポートし在留許可へ向けて実務をこなすビザ専門行政書士の私としては、入管側の内部基準も理解しておきたいものです。ここでは、2017年入管内部基準に記されている、在留資格の取消(総則)について詳しく記述します。

第1節 総則

第1 制度の趣旨

1 本邦に在留する外国人で、偽りその他不正の手段により上陸許可の証印等を受けている者、正当な理由がなく現に有する在留資格に該当する活動を行うことなく一定期間が経過している者及び住居地の届出を行うことなく一定期間が経過している者等については、公正な出入国の管理を実現する観点から、入管法第22条の4に基づき、当該者が有する在留期間が満了する前に現に有する在留資格を取り消すことができることとしている。

2 在留資格取消処分は、当該者の在留の法律上の根拠を失わせるものであることから、在留資格の取消しに当たっては、相手方に主張、立証の機会を与えるため、取消しの対象となる外国人から意見を聴取することとされている。

3 在留資格を取り消す場合、入管法第22条の4第1項第1号又は第2号に該当するとしたときは、入管法第24条第2号の2の退去強制事由に該当する。また、入管法第22条の4第1項第5号に該当し、かつ、同条第7項ただし書に該当するときは、入管法第24条第2号の3の退去強制事由に該当する。これら以外の取消事由に該当するとしたときは、出国のために必要な期間が指定されることとなる。他方、在留資格の取消事由に該当すると認められた場合であっても、在留状況、家族状況その他当該外国人を取り巻く状況に鑑み、在留資格を取り消さないことが相当と認められるときは、引き続き在留を認めることとなる。

なお、現に有する在留資格に該当する活動を行わないこと、現に有する在留資格に該当する活動を行っておらず、かつ、他の活動を行い若しくは行おうとしていること又は住居地の届出を行わないことに正当な理由があるときは、在留資格を取り消すことはできない。

4 入管法第22条の4第1項第7号に掲げる事実が判明したことにより在留資格の取消しをしようとする場合には、在留資格の変更の申請又は永住許可の申請の機会を与えるよう配慮しなければならない。これ以外の場合においても、在留資格の変更の申請等の機会を与えることが適切と判断できるときは、これらの申請等の機会を与えるよう配慮する。

5 なお、本制度の創設に伴い、上陸許可の証印等、在留資格変更許可、在留期間更新許可、永住許可、在留資格取得許可及び在留特別許可については、行政法の一般法理による取消しを行ってはならない。

第2 取消しの対象

1 入管法第22条の4第1項の規定により取り消すことができるのは、入管法別表第1又は別表第2の上欄の在留資格である。

ただし、同項第5号又は第6号については、入管法別表第1の上欄の在留資格のみ、同項第7号については、日本人の配偶者等又は永住者の配偶者等(いずれも配偶者の身分を有する者の在留資格のみ、同項第8号から第10号までについては、中長期在留者のみを在留資格取消しの対象としている。

また、入管法第22条の4第1項の規定による取消しの対象となるのは、本邦に在留資格をもって在留する外国人が現に有する在留資格であり、取消しの原因となるのは上陸許可等の許可に係る事情(同項第1号から第4号まで)及び許可後の特定の事情(同項第5号から第10号まで)である。

(注)

① 在留資格の決定を伴わない、仮上陸許可、特例上陸の許可、仮滞在許可及び特別永住許可については、本条の規定による取消しの対象とはならない。

② 在留資格をもって在留する者が既に退去強制手続中である場合においても、その在留資格は取消しの対象となるが、この場合は、手続の性質上、退去強制手続が優先される(後記第5節第1参照)。

③ 偽変造旅券又は他人名義旅券を行使の上、上陸許可を受けたことが判明した場合は、旅券自体が無効なものであるため、当該許可は当然に無効であり、本条の規定による在留資格の取消しを行うことなく、不法入国者として取り扱う。

④ 在留資格の取消しが行われた場合、当該在留資格を有することを前提とする再入国許可や資格外活動許可は当然に失効する(在留資格取消処分時の措置については、後記第4節第2の2(2)イ参照)。

⑤ 中長期在留者の在留資格の取消しが行われた場合、入管法第19条の14第1号に該当し、当該外国人が所持する在留カードは失効する。したがって、当該外国人には在留カードの返納義務が生ずる(在留カード返納時の取扱いは第9編の2第3章第5節第2参照)。

2 入管法第22条の4第1項第1号に該当するものについては、偽りその他不正の手段により上陸許可を受けた後、在留資格変更許可又は在留期間更新許可等を受けている場合であっても、現に有する在留資格が取消しの対象となる。

3 入管法第22条の4第1項第2号及び第3号に該当するものについては、取消しの原因となる事情が直近の許可に係るものである場合に限定されており、過去にこれらの事実のあったことが判明した場合であっても、直近の許可に係る申請において同項第2号及び第3号に該当する事実がない場合は、在留資格の取消しの対象とはならない(同項第2号括弧書)。

4 入管法第22条の4第1項第4号に該当するものについては、取消しの原因となる事情が直近の許可に係るものである場合に限定されており、過去にこれらの事実があったことが判明した場合であっても、直近の許可に係る場面において同号に該当する事実がない場合は、在留資格の取消しの対象とはならない(同号括弧書)。

5 在留資格の取消しの効果は取消しの時点において在留資格を消滅させるものであり、既往に遡らない。なお、再入国許可、資格外活動許可のように在留資格の存在を前提とする許可は在留資格の取消しに伴い、その効力を失う。

第3 取消事由(入管法第22条の4第1項)

1 第1号

偽りその他不正の手段により、当該外国人が第5条第1項各号のいずれにも該当しないものとして、前章第1節又は第2節の規定による上陸許可の証印(第9条第4項の規定による記録を含む。次号において同じ。)又は許可を受けたこと。

上陸拒否事由に該当する外国人が、偽りその他不正の手段(後記第4の1参照)により、入管法第5条第1項各号のいずれにも該当しないものとして、上陸許可の証印又は許可(入管法第9条第1項(同条第4項の記録を含む。)、第10条第8項若しくは第11条第4項に規定する上陸許可の証印又は第12条第1項に規定する許可をいう。以下本節において同じ。)を受けた場合が本号に該当する。

例えば、我が国から退去強制され上陸拒否期間中にある者が氏名を変更するなどして、旅券を取得の上、上陸拒否事由該当者でないと偽って上陸許可を受けた場合や、覚せい剤等の薬物を不法に所持している者が、それを所持していないと偽って上陸許可を受けた後に税関で発見された場合などがこれに当たる。

また、再入国許可(みなし再入国許可を含む。)を受けて出国中に上陸拒否事由に該当することとなった者が、当該事実を隠蔽し、上陸拒否事由該当者でないとして再入国許可による上陸許可の証印(自動化ゲートを利用した場合を含む。)又は許可を受けた場合も、本号に該当する。

2 第2号

前号に掲げるもののほか、偽りその他不正の手段により、上陸許可の証印等(前章第1節若しくは第2節の規定による上陸許可の証印若しくは許可(在留資格の決定を伴うものに限る。)又はこの節の規定による許可をいい、これらが2以上ある場合には直近のものをいうものとする。以下この項において同じ。)を受けたこと。第1号に該当するもののほか、偽りその他不正の手段(後記第4の1参照)により、在留資格該当性があり、上陸許可基準等の許可要件に適合しているとして、上陸許可の証印等(上陸許可の証印若しくは許可(在留資格の決定を伴うものに限る。)又は在留資格変更許可、在留期間更新許可、永住許可若しくは在留資格取得許可をいう。以下本節において同じ。)を受けた場合(具体的には、偽りその他不正の手段により、本邦で行おうとする活動を偽り、上陸許可の証印等を受けた場合又は本邦で行おうとする活動以外の事実を偽り、上陸許可の証印等を受けた場合(注))が本号に該当する。

例えば、我が国で単純労働を行おうとする者が「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当するものであると申告して上陸許可を受けた場合や日本人との婚姻を偽装して「日本人の配偶者等」の在留資格の変更許可を受けた場合のほか、自己の芸能人としての経歴を偽り基準に適合するかのように装って「興行」の在留資格による上陸許可を受けた場合や学歴や職歴を偽り基準に適合するかのように装って在留資格の変更許可を受けた場合などもこれに当たる。

(注)出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律(平成28年法律第88号。以下「平成28年入管法改正法」という。)により、偽りその他不正の手段により、本邦で行おうとする活動を偽り、上陸許可の証印等を受けた場合(改正前の入管法第22条の4第1項第2号)と本邦で行おうとする活動以外の事実を偽り、上陸許可の証印等を受けた場合(改正前の入管法第22条の4第1項第3号)が入管法第22条の4第1項第2号に統合されたが、平成28年入管法改正法附則第2条の規定により、この法律の施行の日(平成29年1月1日)前に受けた上陸許可の証印等について改正前の入管法第22条の4第1項第3号に掲げる事実が判明した場合における在留資格の取消しについては、改正前の入管法が適用され、また、平成28年入管法改正法附則第3条の規定により、この法律の施行の日前に改正前の入管法第22条の4第1項第3号の規定により在留資格を取り消された者及びこの法律の施行の日後に改正前の入管法第22条の4第1項第3号が適用された者に対する退去強制についても、改正前の入管法が適用されることとされている。

3 第3号

前2号に掲げるもののほか、不実の記載のある文書(不実の記載のある文書又は図画の提出又は提示により交付を受けた第7条の2第1項の規定による証明書及び不実の記載のある文書又は図画の提出又は提示により旅券に受けた査証を含む。)又は図画の提出又は提示により、上陸許可の証印等を受けたこと。

第1号及び第2号に該当する場合以外(申請人による偽りその他不正の手段の行使がないもの)であって、不実の記載のある文書又は図画(後記第4の3参照。以下3において同じ。)の提出又は提示により上陸許可の証印等を受けた場合及び不実の記載のある文書又は図画の提出又は提示により在留資格認定証明書の交付又は査証の発給を受け、これに基づいて上陸許可の証印等を受けた場合が本号に該当する。

例えば、受入れ機関が虚偽の書類を提出して、在留資格認定証明書の交付を受け、申請人がそのことを知らずに上陸許可を受けた場合や、日本の雇用主、受入れ機関等が虚偽の内容の文書を作成し、申請人がそのことを知らずに当該文書を提出して上陸許可の証印等を受けた場合などがこれに当たる。

(注)第1号及び第2号の取消事由に該当するためには、「偽りその他不正の手段」によることの認識を要するが、第3号においては「不実の記載のある文書」であることの認識は要しない(後記第4の1及び3参照)。

なお、虚偽の内容の申立てが行われても、文書として提出又は提示されなければ本号による取消しの原因とはならない。偽変造の旅券も文理上は当該文書に含まれ得るが、当該旅券に受けた上陸許可の証印等はそもそも無効なものと考えられるので、本規定による取消しの対象とはならず、不法入国者として取り扱う。

4 第4号

偽りその他不正の手段により、第50条第1項又は第61条の2の2第2項の規定による許可を受けたこと(当該許可の後、これらの規定による許可又は上陸許可の証印等を受けた場合を除く。)。

偽りその他不正の手段(後記第4の1参照)により、退去強制手続又は難民認定手続における在留特別許可を受けた場合が本号に該当する。

例えば、退去強制手続中において、日本人との婚姻を偽装するため虚偽の書類を提出する等、偽りその他不正の手段により在留特別許可を受けた場合がこれに当たる。

なお、取消しの対象となるのは、現に有する在留資格であるため、在留特別許可で受けた在留資格・在留期間をもって在留している場合に限定され、その後に在留資格変更許可等を受けて在留している場合は本号の取消しの対象とならない。

(注)本号の規定は、平成24年7月9日以後に偽りその他不正の手段により、入管法第50条第1項又は第61条の2の2第1項の規定による許可を受けた者に適用される。

5 第5号

別表第1の上欄の在留資格をもつて在留する者が、当該在留資格に応じ同表の下欄に掲げる活動を行つておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうとして在留していること(正当な理由がある場合を除く。)。

第5号は、平成28年入管法改正法により追加されたものである。改正前においては、3か月(高度専門職の在留資格(別表第1の2の表の高度専門職の項の下欄第2号に係るものに限る。)をもって在留する者にあっては6か月)以上にわたり在留資格に応じた活動を行っていないと認められる場合(第6号に該当する場合)にのみ在留資格の取消しが可能であったが、実際には、例えば、実習先から失踪した技能実習生が全く別の事業場で就労しているのを発見した場合でも、失踪から3か月を経過していないため在留資格を取り消すことができず、3か月を経過する前に再び失踪されてしまうなど、取消しが可能となる前に本人が所在不明となることも少なくない。そこで、正当な理由がないのに、単に所定の活動を行っていない場合にとどまらず、「他の活動を行い又は行おうとして在留している場合」には、本邦において行おうとする活動が既に当初の申告内容から変質し、在留資格が形骸化しており、在留資格制度の適正な管理の観点からも、もはや当該在留資格を与え続けておくことは適当でないといえることから、3か月の経過を待たずに在留資格を取り消すことが可能とされたものである。第1号から第4号までとは異なり、申請及びそれに基づく許可に問題はなかったが、入管法別表第1の上欄に掲げる在留資格を許可された後、正当な理由がなく、本来行うべき活動を行わず、かつ、他の活動を行い又は行おうとして在留している場合が本号に該当する。

例えば、技能実習生が、正当な理由がないのに、実習先を無断で去り、遠隔地で就労しながら生活を始めたような場合には「他の活動を行い在留している」場合に該当し、また、技能実習生が、正当な理由がないのに、他の活動を行うため、その職の当てがある土地に転居した場合には「他の活動を行おうとして在留している」場合に該当する。

6 第6号

別表第1の上欄の在留資格をもつて在留する者が、当該在留資格に応じ同表の下欄掲げる活動を継続して3月(高度専門職の在留資格(別表第1の2の表の高度専門の項の下欄第2号に係るものに限る。)をもって在留する者にあっては6月)以上わないで在留していること(当該活動を行わないで在留していることにつき正当な由がある場合を除く。)。

第5号と同様に、申請及びそれに基づく許可に問題はなかったが、入管法別表第1の上欄に掲げる在留資格を許可された後、本来行うべき活動を行わず、正当な理由がなく継続して3月(高度専門職の在留資格(別表第1の2の表の高度専門職の項の下欄第2号に係るものに限る。)をもって在留する者にあっては6月)以上現に有する在留資格に応じた活動を行うことなく在留している場合が本号に該当する。なお、本号は、現に有する在留資格に係る活動を一定期間行っておらず、かつ、今後も行う見込みがない者の在留資格を取り消すものである(第7号について同じ。)。

7 第7号

日本人の配偶者等の在留資格(日本人の配偶者の身分を有する者(兼ねて日本人の特別養子(民法(明治29年法律第89号)第817条の2の規定による特別養子をいう。以下同じ。)又は日本人の子として出生した者の身分を有する者を除く。)に係るものに限る。)をもつて在留する者又は永住者の配偶者等の在留資格(永住者等の配偶者の身分を有する者(兼ねて永住者等の子として本邦で出生しその後引き続き本邦に在留している者の身分を有する者を除く。)に係るものに限る。)をもつて在留する者が、その配偶者の身分を有する者としての活動を継続して6月以上行わないで在留していること(当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除く。)。

入管法別表第2の上欄に掲げる在留資格をもって在留している者のうち、配偶者の身分を有する者(日本人の特別養子、日本人の子として出生した者の身分を有する者又は永住者等の子として本邦で出生しその後引き続き本邦に在留している者の身分を有する者を除く。)として「日本人の配偶者等」又は「永住者の配偶者等」の在留資格をもって在留する者が、正当な理由がなくその配偶者の身分を有している者としての活動を継続して6月以上行わないで在留している場合が本号に該当する。

例えば、配偶者と離婚又は死別した場合や、婚姻の実態が存在しない場合が該当する(配偶者としての活動を行わないで在留することにつき正当な理由がある場合を除く。)。

8 第8号

上陸許可の証印若しくは許可、この節の規定による許可又は第50条第1項若しくは第61条の2の2第2項の規定による許可を受けて、新たに中長期在留者となつた者が、当該上陸許可の証印又は許可を受けた日から90日以内に、法務大臣に、住居地の届出をしないこと(届出をしないことにつき正当な理由がある場合を除く。)。

上陸許可の証印等又は入管法第50条第1項若しくは第61条の2の2第2項に規定する在留特別許可を受けて新たに中長期在留者となった者が、当該上陸許可の証印等又は在留特別許可を受けた日から90日以内に、正当な理由がなく住居地の市区町村長を通じて法務大臣に住居地の届出をしない場合が本号に該当する。なお、届出義務の不履行が存在し、継続する限り、現に有する在留資格が取消しの対象となる(第9号及び第10号について同じ。)。

(注)第8号に該当するものとして在留資格取消手続を開始したものの、意見聴取通知書の送達又は通知を行う前に住居地の届出を行ったものについては、在留資格取消手続を終止とする(第9号について同じ。第4節第5を参照。)。

9 第9号

中長期在留者が、法務大臣に届け出た住居地から退去した場合において、当該退去の日から90日以内に、法務大臣に、新住居地の届出をしないこと(届出をしないことにつき正当な理由がある場合を除く。)。

中長期在留者が、法務大臣に届け出ていた住居地から退去し、当該退去の日から90日以内に、正当な理由がなく新住居地の市区町村長を通じて法務大臣に新住居地の届出をしない場合が本号に該当する。

10 第10号

中長期在留者が、法務大臣に、虚偽の住居地を届け出たこと。

中長期在留者が、法務大臣に虚偽の住居地を届け出た場合が本号に該当する。

(注)取消事由の併立

前記1から3までの在留資格取消事由は不正行為又は在留状況等によって適条が併立することがある。

また、前記1から3までの在留資格取消事由、前記5から7までの在留資格取消事由と、前記8から10までのいずれかの在留資格取消事由は適条が併立することがある。

第4 各用語の意義等

1 「偽りその他不正の手段」(第1号、第2号及び第4号)

「偽りその他不正の手段」とは、偽変造文書若しくは虚偽の記載のある文書の提出若しくは提示又は虚偽の申立てなど、申請人である外国人がその旨の認識をもって行う不正行為をいい、当該不正手段の行使が、当該許可処分に影響を与えていない場合(両者の間に因果関係がない場合)は、入管法第22条の4第1項第1号及び第2号に該当しない。

例えば、第1号の場合は、EDカードの質問事項に虚偽の記載をすること、第2号の場合は、大学を卒業していない者が偽造の大学の卒業証明書を提出したり、婚姻の意思がない者が入籍事実の記載された戸籍謄本を提出したりすること等がこれに当たる。

(注1)その旨の認識をもって行ったことが客観的資料や供述等により立証できない場合や、過失、過誤によるものと認められる場合は、「偽りその他不正の手段」には該当しない。

(注2)不正手段の行使と許可処分の間に因果関係がない場合とは、例えば、専ら日本語で授業を受ける留学生が、過去に取得した英語能力の検定結果を偽る等の場合が該当する。

また、同項第4号については、例えば偽装婚の場合など、特別に在留を許可すべき事情があると誤認して在留特別許可を行ったことが必要である。

2 「在留資格の決定を伴うものに限る」(第2号及び第3号)

入管法第22条の4第1項第2号及び第3号に規定する取消事由は、在留資格の決定に関する瑕疵を取消しの原因として規定するものであるので、入管法第9条第3項ただし書により在留資格の決定が行われない再入国許可による上陸許可の瑕疵は、これらの取消原因とはならない。

3 「不実の記載のある文書又は図画」(第3号)

「不実の記載のある文書又は図画」とは、客観的に真実又は真正ではない記載のある申請書その他の文書等をいい、入管法第22条の4第1項第3号に係る取消しを行うためには、これらの文書等の提出又は提示により、許可を行ったことが必要である。例えば、所属機関が作成した虚偽の決算書や出席率を水増しした出席証明書がこれに当たる。なお、これらの文書等の提出等が当該許可処分に影響を与えていない場合(両者の間に因果関係がない場合)は、第3号に該当しない。

申請人が不実の記載があることを知って提出すれば、「偽りその他不正の手段」に該当し、第1号及び第2号の適用の対象となる。第3号の適用の対象となるのは申請人が不実の記載のあることを知らない場合であり、第1号及び第2号と異なり、「不実の記載」についての申請人の認識は不要である。

(注)不実の記載のある文書等の提出等と許可処分の間に因果関係がない場合とは、例えば、前記1(注2)記載の事例において、在留資格認定証明書交付申請時に手続を行った学校が記載する等の場合が該当する。

4 「他の活動を行い又は行おうとして在留している」(第5号)

「他の活動」とは、付与された在留資格に応じた活動以外の活動をいう。「他の活動」は、本邦において行おうとする活動が当初の申告内容から変質しているといえる程度に、生活の重要部分を占め、又はこれから重要部分を占めようとしている活動でなければならず、たまたま行った一日限りの活動などはこれに当たらない。

他方、必ずしも当該活動を一定期間以上継続して行った実績がなければならないものではなく、また、有償の就労活動に限られるものでもない

「他の活動」に該当するかどうかは、本来の活動からの離脱の程度と、本邦での生活に占める「他の活動」の位置付けを総合的に考慮し、在留の目的が当初の申告内容から変質しているといえるかどうかによって判断されるものである(注1)。

「行おうとして在留している」かどうかを認定するに当たっては、対象となる外国人が本来の在留資格に応じた活動を行わなくなった経緯や「他の活動」に向けた準備の状況等の客観的事実が重要な意味を持つ(注2)。

在留資格の取消しに当たっては、これらの事実関係を踏まえて、当該外国人の本来の活動への復帰見込みや「他の活動」を開始する可能性等を検討し、当該在留資格が既に形骸化していると認められるかどうかを判断する必要がある。

なお、入管法第22条の4第1項第5号に該当する在留資格の取消しの対象者については、当該活動を行わず、かつ他の活動を行い又は他の活動を行おうとして在留していることにつき正当な理由があるか否かを個別具体的に判断の上、在留資格の取消しの可否を決定することとなる。

特に、本来の活動を行っていないことについて、元の勤務先等における人権侵害行為があったことを理由に挙げている案件等については、その申立内容を十分に調査した上で判断することが必要である。

(注1)「他の活動を…行おうとして在留している」と認められる典型的な場合として、例えば、下記が想定される。

  • 技能実習生が、ブローカーから不法就労先のあっせんを受けて、実習先から失踪し、不法就労のあてのある地に転居した場合
  • 留学生が日本語学校を退学し、通学と両立し得ないフルタイム勤務の雇用契約を締結した場合

5 「正当な理由がある場合」(第5号)

入管法第22条の4第1項第5号に該当する在留資格の取消しの対象者については、個別具体的に、当該活動を行っておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうとして在留していることにつき「正当な理由」があるか否かを判断の上、在留資格の取消しの可否を決定することとなる。

「当該活動を行って」いないことにつき正当な理由がある場合と、「他の活動を行い又は行おうとして在留している」ことにつき正当な理由がある場合が考えられるところ、前者については第6号の「正当な理由」と同様であり、後述のとおり。後者の具体例は、次のような活動である。ただし、以下は飽くまで例示であるので、正当な理由の有無は個別事案ごとに判断することが必要である。

  • (1)在留資格に沿った活動に係る再就職先を探すための活動
  • (2)「留学」から「技術・人文知識・国際業務」への変更など近々他の在留資格への変更を受ける具体的なあてがある場合におけるその準備活動

6 「当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合」(第6号及び第7号)

入管法第22条の4第1項第6号又は第7号に該当する在留資格の取消しの対象者については、個別具体的に当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由があるか否かを判断の上、在留資格の取消しの可否を決定することとなる。

「正当な理由」がある場合の具体例は、次のような場合である。ただし、以下は飽くまで例示であるので、正当な理由の有無は個別事案ごとに判断することが必要である。

(1)第6号における具体例

ア 「技術・人文知識・国際業務」等就労のための在留資格で在留する者本邦内における稼働先を退社後、再就職先を探すために会社訪問をするなど具体的な就職活動を行っていると認められる場合

イ 「技能実習」の在留資格で在留する者

実習先の経営難や不正行為等によって当該実習先で技能実習を続けることができなくなったが、他の実習先に移って技能実習を続ける意思を有している場合

ウ 「家族滞在」又は「特定活動」(本体在留者の配偶者の身分を有する者に限る。)の在留資格で在留する者

(ア)一時的に不仲になり別居しているものの、今後正常な扶養関係の回復が見込める場合

(イ)DV被害者(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号。以下「DV法」という。)第1条に規定する配偶者からの暴力を受けた外国人をいう。以下同じ。)が配偶者からの暴力を理由として避難又は保護を必要としている場合

なお、DV法上「配偶者」については法的な婚姻手続を経ない事実上の婚姻関係を含み、「離婚」には法的な離婚手続を経ない事実上の離婚状態を含むため、DV被害者については、その在留資格が婚姻関係を前提とするものに限定されるものではないことに留意する(以下同じ。)。

(注)DV被害者であるかについては、市区町村又は警察による支援措置の有無を問わないため、支援措置決定通知書等の提示を条件としてはならない。

(ウ)本国の親族の傷病等の理由により、再入国許可による長期間の出国をしていた場合

(注)以下の例は、基本的には在留資格取消事由に該当しない。

  • 子供の養育等やむを得ない事情のために配偶者と別居して生活しているが生計を一にしている場合
  • 当該外国人又はその配偶者が病気治療のため長期入院中の場合

エ 「留学」の在留資格で在留する者

  • 在籍していた教育機関が閉校した後、他の教育機関に入学するために必要な手続を進めている場合
  • 病気のため長期間の入院が必要でやむを得ず教育機関を休学している者が、退院後は復学する意思を有している場合
  • 専修学校を卒業した留学生が本邦の大学への入学が決定している場合
  • 在職・在学等したまま再入国許可により出国していた場合
(2)第7号における具体例
  • ア 配偶者からの暴力(いわゆるDV(ドメスティック・バイオレンス))を理由として一時的に避難又は保護を必要としている場合
  • イ 本国の親族の傷病等の理由により、再入国許可による長期間の出国をしている場合
  • ウ 離婚調停又は離婚訴訟中の場合
  • エ 一時的に不仲となり別居しているものの、今後正常な婚姻関係の回復が見込める場合

(注)以下の例は、基本的には在留資格取消事由に該当しない。

  • 子供の養育等やむを得ない事情のために配偶者と別居して生活しているが生計を一にしている場合
  • 当該外国人又はその配偶者が病気のため長期入院中の場合
  • 当該外国人又はその配偶者が刑事施設に入所中で、当該入所中の者と面会を継続して行っている場合

7 「届出をしないことにつき正当な理由がある場合」(第8号及び第9号)

入管法第22条の4第1項第8号又は第9号に該当する在留資格の取消しの対象者については、個別具体的に住居地の届出を行わないで在留していることにつき正当な理由があるか否かを判断の上、在留資格の取消しの可否を決定することとなる。

「正当な理由」がある場合の具体例は、次のような場合である。ただし、以下は飽くまで例示であるので、正当な理由の有無は個別事案ごとに判断することが必要である。

  • 勤めていた会社の急な倒産やいわゆる派遣切り等により住居を失い、経済的困窮等によって新たな住居地を定めていない場合
  • 配偶者からの暴力(いわゆるDV)を理由として避難又は保護を必要としている場合
  • 住居地を届け出ることにより、身体・生命に危険が及ぶおそれがあるとき

(注)以下の例は、基本的に在留資格取消事由に該当しない。

  • 転居後急な出張により再入国出国した場合等再入国許可(みなし再入国許可を含む。)による出国中である場合
  • 頻繁な出張を繰り返して1回当たりの本邦滞在期間が短いもの等、在留活動の性質上住居地の設定をしていない場合
  • 病気治療のため医療機関に入院している等、医療上のやむを得ない事情が認められ、本人に代わって届出を行うべき者がいない場合

8 「住居地から退去した場合」(第9号)

実際に住居地から退去している場合が該当するため、事実の調査により、そのような場合に該当するか否かの事実認定を行う必要がある。

(注)住民基本台帳法上の転出届(住基法第24条)がなされているか否かにより「住居地から退去した場合」の該当性を判断することは適当ではない。

9 「虚偽の住居地を届け出たこと」(第10号)

例えば、実際には配偶者と別居しているにもかかわらず、同居を装って配偶者と同一の住居地を届け出た場合等がこれに当たる。

10 在留資格取消対象者の代理人(施行規則第25条の4)

法定代理人のほか、「意見聴取通知書の送達(又は通知)を受けた在留資格取消対象者(以下「被聴取者」という。)」が代理人として委任した者をいう。

代理人の選解任の手続を行うことができるのは法定代理人又は被聴取者本人であり、この代理は任意の代理を指すものであって、その対象となる者の範囲は限定されない。

(注)弁護士以外の者が、業として被聴取者の代理人としての活動を行うことは、弁護士法第72条に抵触するおそれが高い。したがって、弁護士以外の者が、代理人として意見聴取期日に出頭し、意見聴取に業として参加することを認めること(第3節第1の4(2))は適当でない。

(1)権限

被聴取者の代理人は、被聴取者のために意見聴取に関して、意見聴取期日における意見陳述、証拠資料の提出、資料等の閲覧等をすることができる。ただし、代理人が意見聴取の期日に被聴取者に代わって出頭することについては、地方局の長の許可を要する(施行規則第25条の8第2項、第3節第1の4(2))。

(2)代理人の数

代理人の数については、施行規則に特段の定めはなく、人数を制限する規定もないが、このことは行政不服審査法等も同様である。しかし、代理人が多数選任され意見聴取の場に入場しきれないなどの事態が生じた場合には、被聴取者の防御権を妨げないと判断される範囲において意見聴取の場に出席できる人数を制限することができる。

意見聴取担当入国審査官は、意見聴取手続を主宰するに当たっては、理由なく代理人の人数を制限したり、多数の代理人の参加により意見聴取手続に支障が生ずることのないように配慮しなければならない。

11 利害関係人

被聴取者である外国人の在留資格の取消しについて、利害関係を有することとなる親族、雇用主、教育機関、受入れ機関又は招へい機関の職員等をいう。利害関係人の参加を求め、又は許可できるものとしているのは、利害関係人が直接に不利益処分の効果を受けるものではないが、その法律上の利益に影響を受けることもあり得るので、利害関係人の権利利益の保護を図るために、意見聴取手続に参加させることによって意見聴取手続の公正の保持と当該処分の適正さを確保し、もって事後の無用な紛争の防止にも資するためである。

12 利害関係人の代理人

利害関係人の代理人については、原則として前記10と同様であるが、施行規則第25条の5第4項において準用する同第25条の4に規定する代理人の選解任の手続を行うことができるのは「意見聴取への参加を許可された利害関係人(以下「参加人」という。)」である。

(注)弁護士以外の者が、業として代理人としての活動を行うことについては、前記10と同様。

なお、参加人に代わって意見聴取の期日に出頭することについて、地方局の長の許可を要しない点については、被聴取者の代理人とは取扱いが異なるので注意が必要である。

第5 取消事由該当性の判断に係る留意事項

1 「定住者」の在留資格の取消し

「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の規定に基づき同法別表第二の定住者の項の下欄に掲げる地位を定める件」(以下「定住者告示」という。」)に掲げる地位を有する者としての活動への該当性を偽って「定住者」の在留資格の決定を受けた者に係る「定住者」の取消しのうち、入管法第22条の4第1項第2号(以下第5において「2号」といい、同項第1号及び第3号をそれぞれ「1号」、「3号」という。)若しくは3号又は平成28年入管法改正法による改正前の第3号(以下「旧3号」という。)の該当性については、許可の場面ごとにその該当性を判断する必要があり、以下の区分に応じ、それぞれ掲げる事項に留意する。

(1)上陸許可において決定された「定住者」の取消し

ア 2号への該当性について

上陸拒否事由以外の場合で偽りその他不正の手段を用いて、上陸許可の証印等を受けた場合、2号に該当する。具体的には、①偽りその他不正の手段により、本邦で行おうとする活動を偽り、上陸許可の証印等を受けた場合、②偽りその他不正の手段により、本邦で行おうとする活動以外の事実を偽り、上陸許可の証印等を受けた場合である

在留資格のうち「定住者」に関しては、上陸の許可において、入国審査官(特別審理官を含む。以下(1)において同じ。)が「定住者」の在留資格を決定できるのは、当該外国人が行おうとする活動が定住者告示に掲げる地位を有する者としての活動に該当する場合に限られている。

したがって、定住者告示に掲げる地位を有しないにもかかわらず、有すると偽って上陸の申請を行い、入国審査官から「定住者」での上陸許可を受けた者は、上記①に該当し、何らかの事実関係を偽り、当局の判断を誤らせて、定住者告示に該当しないにもかかわらず上陸特別許可により「定住者」を決定された者は、上記②に該当する。(注)したがって、取消対象となる上陸許可の証印等を平成29年1月1日より前に受けた場合であって、上記②に該当する場合には、旧3号に該当することとなる。

2号該当性の判断においては、次の点に留意する。

(ア)「偽りその他不正の手段」

定住者告示に掲げる地位に関して不実の記載の内容の書面(例えば、日本人の子として出生した者の実子でないのに、実子であるとする書面)を提出して在留資格認定証明書(3号括弧書に該当する認定証明書)の交付を受け、上陸申請に際し、当該在留資格認定証明書を提出して入国審査官から上陸の許可を受けた場合において、当該在留資格認定証明書交付の経緯を承知の上、当該在留資格認定証明書を入国審査官に提出したと認定することができれば、「偽りその他不正の手段」に当たる。

(イ)「偽りその他不正の手段」の認識

「偽りその他不正の手段」によることの認識がなければ、2号には該当しない。

(注)年少者を除くと、通常、「偽りその他不正の手段」によることの認識を有していることを認定できるものと考えられる。また、上陸申請時の入国審査官との質問・回答によっても認定できるものと考えられる。

(ウ)上陸特別許可を受け定住者告示に該当しないにもかかわらず「定住者」を決定された者上陸特別許可において、「定住者」を決定する場合、入国審査官が上陸の許可をする場合のように、その者が行うことができる活動は、定住者告示に掲げる地位を有する者としての活動に限定されない。

そのため、定住者告示に掲げる地位を偽った場合は、「法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者」としての地位を偽ったこととはならない(前記ア①には該当しない)が、本邦で行おうとする活動以外の事実を偽り、上陸許可の証印等を受けた場合には、上記ア②に該当することとなる。

(注)したがって、平成29年1月1日より前に上陸許可の証印等を受けた場合は、旧3号に該当する。

イ 3号への該当性について

前記ア(イ)の場合や、「偽りその他不正の手段」の認識を認定できない場合等において、在留資格認定証明書交付申請に際し、身分関係を偽る等虚偽の内容の資料を提出して認定証明書の交付を受けていたときは、3号に該当する。

この場合、次の点に留意する。

(ア)提出した「不実の記載のある文書」の不実性の認識は必要ない。当該外国人の認識がない場合で、文書の内容が客観的事実に反していれば、「不実の記載のある文書」に該当する。

(イ)「不実の記載のある文書」が提出されていたとしても、認定証明書交付の許否の判断に影響しない記載であった場合は、3号には該当しない。

(注)3号は、不実の記載のある文書の提出により交付を受けた認定証明書の提出により、許可を受けたことを要件としているので、不実の記載が存在しなければ(真実の記載がなされていれば)、認定証明書を交付しなかったという因果関係が必要である。

(2)在留資格変更許可、在留期間更新許可において決定された「定住者」の取消し

ア 2号への該当性について

「定住者」の在留資格を有する者が行うことができる活動は、「法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者の地位を有する者としての活動」である。実際に行うことができる活動に制限はない。

したがって、当該外国人が、在留資格変更許可及び在留期間更新許可等に際し、何らかの事実関係を偽り、それにより「定住者」の在留資格を決定されたとしても、「活動」への該当性を偽ったものではない(前記(1)ア①には該当しない)。ただし、「偽りその他不正の手段」により、何らかの事実関係を偽り、当局の判断を誤らせて在留資格変更許可・在留期間更新許可を受けたときは、前記(1)ア②に該当することとなり、2号に該当する。

(注)したがって、平成29年1月1日より前に上陸許可の証印等を受けた場合には、旧3号に該当する。

この場合、次の点に留意する。

(ア)「偽りその他不正の手段」の認識について

「偽りその他不正の手段」によることの認識がなければ、2号には該当しない。

(イ)「偽りその他不正の手段」があったとしても、許否の判断に影響しないものであった場合は、2号には該当しない。

(注)2号は、「偽りその他不正の手段」により、許可を受けたことを要件としているので、「偽りその他不正の手段」がなければ、許可をしなかったという因果関係が必要である。

イ 3号への該当性について

「不実の記載のある文書」を提出等して変更許可・更新許可を受けた時は、同号に該当する。

留意点については、前記(1)イを参照。

2 「永住者」の在留資格の取消し

(1)2号への該当性について

「永住者」の在留資格を有する者が行うことができる活動は、「法務大臣が永住を認める者の身分又は地位を有する者としての活動」であり、実際に行うことができる活動に制限はない。

したがって、当該外国人が、永住許可に際し何らかの事実関係を偽り、それにより永住許可を受けていたとしても、「活動」への該当性を偽ったものではない(上記1(1)ア①には該当しない)が、前記1(2)アと同様、「偽りその他不正の手段」により、何らかの事実関係を偽り、当局の判断を誤らせて永住許可を受けたときは、前記1(2)ア②に該当するので、2号に該当する。

留意点については、前記1(2)アを参照。

(2)3号への該当性について

前記1(2)イと同様、「不実の記載のある文書」を提出等して永住許可を受けた時は、3号に該当する。

留意点については、前記1(1)イを参照。

3 代理人により在留資格認定証明書交付申請を行い、同申請に対し交付された在留資格認定証明書を提出して行った上陸申請において決定された在留資格の取消し

(1)2号への該当性について

在留資格認定証明書の交付申請が本人により行われたか、代理人により行われたかにかかわらず、在留資格に該当するとして交付を受けた在留資格認定証明書を、在留資格該当性又は基準適合性がない者が上陸申請において提出した場合において、上陸申請の時点において、「偽りその他不正の手段」と上陸許可に因果関係があることを認定することができれば、2号に該当する。

この場合、2号に該当するためには、上陸申請を行う者が「偽りその他不正の手段」によることの認識を有していることが必要であるところ、同認識の有無は、上陸申請の時点において判断する。在留資格認定証明書交付申請の時点における認識の有無は問わない。

なお、未成年者等については法定代理人の認識により判断する。

(注)例えば、貿易会社で稼働するとして「技術・人文知識・国際業務」で在留資格認定証明書の交付を受けたが、入国前に雇用契約が解消されて、受入れ側から、実際は、別の水産加工会社で単純作業に従事すると知らされながら、上陸申請において「技術・人文知識・国際業務」の在留資格認定証明書を提出し、上陸許可を受けた場合は2号に該当することとなる。

(2)3号への該当性について

前記(1)において、「偽りその他不正の手段」の認識を認定できない場合等において、在留資格認定証明書交付申請に際し、身分関係を偽る等虚偽の内容の資料を提出して在留資格認定証明書の交付を受けていたときは、3号に該当する(3号括弧書)。

この場合、次の点に留意する。

ア 3号への該当性について、提出した「不実の記載のある文書」の不実性の認識は必要ない。当該在留資格認定証明書の交付申請が代理人に行われた場合でも変わりはなく、申請人本人が「不実の記載のある文書」の提出を知らなかったとしても、3号に該当する。

イ 「不実の記載のある文書」が提出されていたとしても、在留資格認定証明書交付の許否の判断に影響しない記載であった場合は、3号には該当しない。

第6 権限委任・専決

1 権限の委任

(1)入管法及び施行規則においては、永住者の在留資格の取消しに係る権限は地方局の長へ委任されていないため、永住者の在留資格取消しに関して、意見聴取担当入国審査官の指定(第3節第1の1)、意見聴取通知書の送達(第3節第1の2)、意見聴取期日における代理人の出頭に係る許可(第3節第1の4)、文書等の閲覧(第3節第1の7)、意見聴取期日又は場所の変更(第3節第1の8)、取消しの決定(第4節第1)、在留資格を取り消さないことの通知(第4節第2の1)及び在留資格取消通知書の送達(第4節第2の2)の各権限は、いずれも、法務大臣の権限によるものとなる。

(注)この場合において、施行規則及び本要領別記の様式用紙を交付する場合は、その発付権者は法務大臣であるので注意する。

(2)公示送達については全て法務大臣の権限によるものとなる。

2 専決

本要領による「地方局の長」の権限については、地方入国管理局決裁区分により、「支局の長」に専決させることができる。ただし、本要領第3編第2章第1節及び第2節において本省に進達又は請訓することとされている事項を除くものとする。

第7 管轄等

1 管轄

在留資格の取消手続は、在留資格取消対象者の住居地又は居所(刑事施設を含む。)を管轄する地方局において行うものとする。

2 移管

(1)地方局の長は、在留資格取消対象者が自局の管轄外に住居地又は居所を変更した場合で、以後の手続を当該住居地又は居所を管轄する地方局において行うことが相当と認めるときは、当該地方局に在留資格の取消事案を移管することができる。

(2)地方局の長は、在留資格の取消事案を他の地方局へ移管する場合には、「移管書」(別記第1号様式)に在留資格の取消手続に係る書類を添えて行うとともに、FEISに移管の入力を行う。

(注)在留資格取消通知書の出会送達(第4節の2の第2の3(1)イ(ア)参照。以下同じ。)等のために移管するときは、移管書及び関係書類を入管WAN等で送付し、原本を追って送付するなど、速やかな移管に努めるものとする。

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