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新ビザ(在留資格)「特定技能」-閣僚会議(2018年10月)の考察
2018年10月12日に新しいビザ(在留資格)「特定技能(仮称)」について閣僚会議が行われました。
この記事では、その中で配布された資料と議事録に基づき、これまで入管業務を専門に扱ってきた行政書士による考察を加えたいと思います。
参考:首相官邸サイト-政策会議-外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議
閣僚会議について
本会議は「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」という中で、下記議事について議論されたものです。
「『出入国管理及び難民認定法』及び『法務省設置法』の一部を改正する法律案」の骨子等
議事を見ると、『出入国管理及び難民認定法』の改正案と、『法務省設置法』の改正案の2つがテーマであることが分かります。
『法務省設置法』の改正案については、これまで法務省の内部部局として入国管理局がぶらさがっておりましたが、法務省の外局に出入国在留管理庁を置くかたちに変更しようというお話です。
そして、『出入国管理及び難民認定法』の改正案が、今回考察をする新しいビザ(在留資格)「特定技能」についてです。
公開資料は下記のとおりです。それぞれについてお話しします。
- 資料1:出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律案の骨子について
- 資料2:新たな外国人材の受入れに関するビザ(在留資格)「特定技能」の創設について
- 会議議事録 (10/21時点、未公開)
まず、資料1から見ていきましょう。
資料1:出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律案の骨子について
1ページ目に新たな外国人材受入れのための在留資格の創設について書かれています。(2ページ目に出入国在留管理庁の話がありますが省略します。)
1 在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」の創設
「1 在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」の創設」とあるように、特定技能にも2段階設置するようです。そして1号は「相当程度の知識又は経験を要する技能」、2号は「熟練した技能」と区別しているようですが、この辺りはまだ明確になっておりませんね。
ここで、着目しておくべき文言は「不足する人材の確保を図るべき産業上の分野」というところですね。
技能実習の場合は、「発展途上地域への技術移転を図り~、当該地域への経済発展に寄与し~、国際協力を目的とする~」と建前を並べておりましたが、今回の「特定技能」ビザに関しては、日本の実態を今更ながらきちんと捉えて「人材の確保が目的」と言っておられます。
ただしやはり「人材が不足している分野」と書いているように、移民政策とならないように分野で制限するというところはしっかりと守られております。
分野はまだ未定ですね。分野は皆さんが一番知りたいところだと思いますが、予想しても仕方がないので、あまり話すべきではないと考えております。
2 受入れのプロセス等に関する規定の整備
「特定技能」ビザ(在留資格)全般に関する規定と、分野ごとの規定を整備するようですね。
あと着目すべき点は、「受入れ機関等を変更する際に審査を経る旨の規定」とあります。つまり転職する際には事前に、何かしらの申請を要し、審査を経る必要があるのですかね。
3 外国人に対する支援に関する規定の整備
「特定技能」ビザの申請には、やはり「技能実習」ビザと同様に、支援計画が必要となります。
恐らく申請から来日までの必要時間も技能実習と同様に長くなるでしょう。
この点、一般の就労ビザと呼ばれる「技術・人文知識・国際業務」ビザの方が、雇用者側にとっては優位だと考えられます。
4 受入れ機関に関する規定の整備
「特定技能」ビザの報酬要件は、報酬額が日本人と同等以上ということです。これは「技術・人文知識・国際業務」ビザの要件と同じです。
ただし、「特定技能」ビザの場合は、管理費なのか支援費なのか名目は分かりませんが、支援機関への支払いが追加されると思いますので、雇用者側としては負担が大きい制度となると思います。
ちなみに「日本人と同等以上」という文言は、簡単に言えば「外国人従業員を差別的に安く雇用するな」という意味です。業務差や能力など合理的な理由に安くしている場合は認められます。
もう一つちなみにですが、「技能実習」の場合の雇用者の負担は「最低賃金」+「監理団体へ支払う管理費」となります。
最初は安く雇用できると噂された「技能実習」ビザでも、雇用者側は最近は管理費も含めるとそこまで安くないことに気づいております。「特定技能」ビザはそれよりもさらにコストがかかるだろうと予想されます。
ただし、この資料にもう一つ気になる文言があります。次で説明します。
5 登録支援機関に関する規定の整備
ここに、「 受入れ機関は、特定技能1号外国人に対する支援を登録支援機関に委託すれば、4(2)②の基準に適合するものとみなされる。」とあります。
「登録支援機関に委託すれば」とあります。
言い換えると、「登録支援機関に委託せずに、自社でしっかりと体制を整え、4(2)②の基準に適合すればok」ということなのか。
もしこれが正しいのであれば、前項の支援費も削減できるので、企業にとっての人件費削減に大きく寄与できます。
「登録支援機関に委託せずに、自社でしっかりと体制を整える」という部分については、私らのような行政書士も何かしらのお手伝いができるかもしれませんね。
次は6を飛ばして7です。6は特に書きたい事がありません。
7 特定技能2号外国人の配偶者及び子に対し在留資格を付与することを可能とする規定の整備
「相当程度の知識又は経験を要する技能」の「特定技能2号」ビザから、熟練した技能の「特定技能2号」ビザにステージアップすれば、配偶者や子を本国から呼び寄せることが可能となります。
配偶者や子に付与するビザ(在留資格)は恐らく「家族滞在」だと思われます。
次にもう一つの資料2を見ていきます。
資料2:新たな外国人材の受入れに関する在留資格「特定技能」の創設について
資料1について書かれている事を、資料2さらに具体的に書かれております。
個人的に気になった文言について、自由に書いていきます。
日本語能力について
ページ1の「2.受入れ対象」の欄に、「ある程度日常会話ができ,生活に支障がない程度の日本語能力を有することが基本」とあります。
次にページ2の「3.「特定技能1号」の技能水準・日本語能力水準」の欄に、
- 受入れ分野ごとに業務上必要な能力水準を考慮して定める試験等によって確認する
- 技能実習2号を修了した者は,上記試験等を免除
とあります。
分野ごと必要な能力水準が変えるという原則のようですが、実際には分野ごとで差を設けるのは各業界団体からの反発等もあり、難しいのではないでしょうか。
また、試験免除者は技能実習2号以上を修了した外国人のようですね。技能実習1号の方は免除されないようです。
技能水準について
ページ2の「3.「特定技能1号」の技能水準・日本語能力水準」の欄に、「各業界の所管省庁が定める試験等によって確認する」とあります。
そして、ページ3の「11.「特定技能2号」への移行」の欄で、「試験に合格すること等で移行することが可能」とあります。
後述しますが、「特定技能1号」ビザの場合は在留期間上限が5年で、家族の帯同も認められないですが、ある試験に合格すれば、「特定技能2号」ビザに移行可能となるようです。
登録支援機関の必要性について
ページ1の「3.外国人への支援」の欄で、
『「特定技能1号」外国人に対し』、『受入れ機関又は登録支援機関において』~~~支援を行う。
とあります。
「特定技能2号」外国人は支援の対象から外れるのですね。
そして前述もしましたが、雇用者にとって、登録支援機関に支援を委託するのは必須ではないのかと、ここからも見て取れます。というのは、『受入れ機関又は登録支援機関において』とあり、「又は」です。
つまり、受入れ機関がしっかり体制を整備し、「特定技能1号」外国人を整備すれば、委託費の支払いは不要となり人材コストの削減ができます。
在留期限の上限について
ページ1の「6.その他」の欄に、
「特定技能1号」は,在留期間の上限を通算5年とし,家族の帯同を基本的に認めない
とあります。
転職について
ページ3の「9.外国人材の活動内容」の欄で、「 許可された活動の範囲内で転職を認める」とあります。
やはり転職は可能です。ただし前述したような転職前に入管の審査が必要なのかどうなのか、これはまだわかりません。
雇用形態について
ページ3の「10.雇用形態」の欄で、原則は直接雇用だが分野の特性に応じて派遣形態も可能)のようです。
これはもう少し情報が欲しいところですね。派遣もokなら大分と幅が広がります。
その他について
技能実習で決められている下記のような事項についてはまだわかっておりません。
- 講習科目と講習時間
- 入国前講習の有無
- 分野や職種
- 人材募集のルート
- 登録支援機関の支援範囲
議事録
まだ未公開です。