この記事では宗教ビザを取得するための条件である「在留資格該当性」と「その他実務上の要件」について解説します。
「在留資格該当性」については、在留資格認定証明書や在留期間更新の一般要件をご確認ください。
外国人が取得したい在留資格が本当に取得できるのか否か、また要件に適合せずに取得できない場合は、日本での在留を諦めるのではなく他のビザの要件に適合するか否か、これらを考える上で実務上はまずこの「在留資格該当性」を正確に把握して検討を進めなければなりません。
そして「在留資格該当性」だけではなく、在留審査の中で行われている「その他実務上の要件」というものも非常に重要となります。
教授ビザについて法で定められた「在留資格該当性」と法にはない「その他実務上の要件」の解説に進めます。
宗教ビザの「在留資格該当性」
まず入管法別表第1の2に定める法文は下記の通りです。
外国の宗教団体により本邦に派遣された宗教家の行う布教その他の宗教上の活動
用語の定義・解説
具体的な該当範囲は?
具体的には、下記の方が宗教ビザに該当します。
- 神官
- 神父
- 僧侶
- 牧師
- 司祭
- 宣教師
- 司教
- 伝道師
- 等
「外国の宗教団体」とは
宗教ビザは、「外国の宗教団体」から日本に派遣されなければなりません。
従って、活動財源がすべて日本にあるような「外国の宗教団体」への参加は宗教ビザの活動に該当しないこととなります。
なおこの「外国の宗教団体」は、特定宗派の本部である必要はなく、支部等でも差し支えありません。
「その他の宗教上の活動」とは
「その他の宗教上の活動」とは何か、つまり、宗教ビザ保有者として認められる活動はどのような範囲が含まれるのでしょうか。
まず、布教や祭事等の皆さまが宗教家にイメージする活動は当然認められます。
他にも様々な活動が想定されますが、個別に解説します。
所属宗教団体の施設運営・物品の販売
他にも、宗教ビザ保有者が所属する宗教団体の運営施設職員を兼任する事も認められますが、物品の販売等に従事する活動には注意が必要です。当該活動が所属する宗教団体の宗教活動に密接に関連し、かつ、通常宗教団体が行う事業を目的とする場合に限り宗教ビザが認められます。
語学教育・医療・社会事業等の活動
所属宗教団体や所属宗教団体の運営施設内でこれらの活動に従事することは、下記を満たせば認められます。
- 当該活動が所属宗教団体の指示に基づく宗教活動の一環として行われるものであること
これらの活動が、所属宗教団体や所属宗教団体の運営施設外で行われる場合には、下記を満たす必要があります。
- 当該活動が所属宗教団体の指示に基づく宗教活動の一環として行われるものであること
- 無報酬であること
宗教団体の指示がない場合や、報酬が発生する場合には資格外活動許可を取得する必要があります。
また宗教ビザをもって在留する外国人の方が、結婚式の司式を執り行う場合は下記の要件を満たす必要があります。
- 当該活動が所属宗教団体の指示に基づく宗教活動の一環として行われるものであること
- 無報酬であること
これも同様に宗教団体の指示がない場合や、報酬が発生する場合には資格外活動許可を取得する必要があります。さらに報酬が発生する場合は、受入機関の同意も必要です。
なお、宗教ビザ以外のビザを保有している方も、資格外活動許可によって結婚式の司式を執り行う事は可能ですが、資格外活動許可の要件として、当該外国人が司式を執り行うことが認められる宗教資格を有していることが必要です。
認められない活動
宗教に関連する活動であっても下記の活動は宗教ビザには該当しません。
- 自ら布教その他の宗教上の活動を行わない者の活動
- 専ら教会の雑役に従事する活動
- 単なる信者としての活動
- 専ら修業をする活動
- 専ら宗教上の教義等の研修を行う活動
他のビザとの境界
「経営・管理」と「宗教」
外国の宗教団体によって日本に派遣された宗教家がキリスト教系幼稚園を経営するような場合には、経営・管理ビザが該当します。
なおキリスト系幼稚園は、カトリック系・プロテスタント系問わず全キリスト教系を指します。
宗教ビザの「その他実務上の要件」
宗教ビザにも法に定められた在留資格該当性以外にも、実務上考慮される要件というものが存在します。
施設要件
外国の宗教団体から派遣されて宗教活動を行う宗教家が宗教ビザを認められるためには、日本に拠点となる施設が設置されていなければなりません。
この施設について、ホテルの1室や短期契約賃貸の場合は当該要件を満たさない取り扱いとなります。
報酬要件
宗教活動については、基本的に宗教団体又は受入れ機関の財源で賄われるものですが、宗教ビザ保有者の生活費・滞在費等の日本における社会生活の為の費用については別途報酬等から得る必要があります。従って、報酬要件としても、当該外国人の方が日本で社会生活を送ることが可能な程度の報酬を得る事が要求されています。
なお報酬は、外国の宗教団体である派遣元から支給される報酬、日本の受入機関支給される報酬のいずれであっても構いません。