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この記事では教授ビザを取得するための条件である「在留資格該当性」と「その他実務上の要件」について解説します。

「在留資格該当性」については、在留資格認定証明書や在留期間更新の一般要件をご確認ください。

外国人が取得したい在留資格が本当に取得できるのか否か、また要件に適合せずに取得できない場合は、日本での在留を諦めるのではなく他のビザの要件に適合するか否か、これらを考える上で実務上はまずこの「在留資格該当性」を正確に把握して検討を進めなければなりません。

そして「在留資格該当性」だけではなく、在留審査の中で行われている「その他実務上の要件」というものも非常に重要となります。

教授ビザについて法で定められた「在留資格該当性」と法にはない「その他実務上の要件」の解説に進めます。

教授ビザの「在留資格該当性」

まず入管法別表第1の2に定める法文は下記の通りです。

本邦の大学若しくはこれに準ずる機関又は高等専門学校において研究、研究の指導又は教育をする活動

用語の定義・解説

では「大学」には何が含まれるのか、「大学に準ずる機関」とは具体的にどのようなものが含まれるか、教授ビザが認められる具体的な役職はなにかなど、法文を見ても分かりにくいと感じる方が多いと思います。これらについて詳しく解説を進めていきたいと思います。

「大学」とは

「大学」には、4年制大学以外でも、短期大学や大学院、大学の専攻科、大学の別科、大学に附属する研究所までをも含みます。

大学の別科とは、大学に入学できる資格を有する者が、簡易的な技能教育を受ける目的とする過程であり、修業年限が1年以上、進路先が就職とあるものです。

大学の専攻科とは、大学の卒業生や卒業生と同等以上の学力を有する者に対して、勉学の教授・研究指導をすることを目的とする、修業年限1年以上の学校に設けられる課程です。

なお、「本邦の」とあるように、日本の教育機関である必要があります。

「大学に準ずる機関」とは

下記の6つが該当します。

  1. 設備及びカリキュラム編制において大学と同等と認められる機関
  2. 大学共同利用機関
  3. 大学入試センター
  4. 大学評価・学位授与機構
  5. 大学の専攻科・大学院の入学に関して大学卒業者と同等であるとして入学資格を付与される機関
  6. 教育職俸給表(一)(一般の職員の給与に関する法律別表第六)の適用を受ける者

1.「設備及びカリキュラム編制において大学と同等と認められる機関」とは、下記の教育機関が該当します。

  • 海技大学校(分校を除く。)、海上保安学校、海上保安大学校、国立海上技術短期大学校(専修科に限る。)、航海訓練所
  • 航空大学校、航空保安大学校
  • 防衛大学校、防衛医科大学校
  • 水産大学校、国立看護大学校、気象大学校
  • 職業能力開発総合大学校、職業能力開発大学校、職業能力開発短期大学校
  • 学校教育法施行規則第155条第1項第4号に基づき文部科学大臣が告示により指定する外国の教育機関及び国際連合大学

2.「大学共同利用機関」とは下記の期間が該当します。

  • 国文学研究資料館、国立国語研究所
  • 国立民族学博物館、国立歴史民俗博物館、国立極地研究所、国際日本文化研究センター
  • 国立遺伝学研究所、基礎生物学研究所、生理学研究所
  • 国立天文台核融合科学研究所、素粒子原子核研究所、分子科学研究所
  • 統計数理研究所、国立情報学研究所
  • 総合地球環境学研究所、物質構造科学研究所

3.「大学入試センター」とは、大学入試のためのセンター試験や法科大学院への入学のための適性試験を運営する文部科学省管轄の独立行政法人のことです。

4.「大学評価・学位授与機構」とは、教育機関の教育活動状況の評価を行い、教育水準の向上を図ることを目的とする機関であり、高等教育段階での学習状況を評価して学位の授与を行うこともあります。

5.「大学の専攻科・大学院の入学に関して大学卒業者と同等であるとして入学資格を付与される機関」とは、言い換えると、卒業すれば、大学専攻科・大学院の入学資格が認められる、そのような機関を指しています。具体的には外国大学の日本分校のことであり、下記の機関があります。

  • テンプル大学ジャパン
  • 専修学校ロシア極東大函館校
  • 天津中医大学中薬学院日本校

6.「教育職俸給表(一)(一般の職員の給与に関する法律別表第六)の適用を受
ける者」とは、具体的には、海上保安大学校・気象大学校の副校長・教頭・教授・准教授・講師・助教のことです。

上記が「大学に準ずる機関」に該当する機関となりますが、「大学に準ずる機関」に含まれない代表例について下記に示します。

  • 各省所管の大学校(警察大学校等)
  • 社会保険大学校
  • 中小企業大学校
  • 道府県立の農業大学校
  • 株式会社・職業訓練法人・学校法人・財団法人・特定非営利法人等が設置する大学校

教授ビザが認められる具体的な役職とは

原則は、大学・準ずる機関・高等専門学校において、下記の役職を有する者が研究・研究指導・教育をする活動が該当します。

  • 学長・所長・校長・副学長・副校長・教頭
  • 教授・准教授・講師・助手

但し、上記はあくまでも例示のものであって、常勤か否かは関係なく、実質的に研究・研究指導・教育に従事しているかどうかによって在留資格該当性が判断されます。

他のビザとの境界

「教授」と「研究」と「文化活動」

教授ビザは、大学・大学に準じる機関・高等専門学校において研究・研究指導・教育をする活動です。

研究ビザは、教授ビザに該当する場合を除き、日本の公私機関との契約で研究する活動です。

従って、大学・大学に準じる機関・高等専門学校で活動をする場合は、教授ビザが優先されます。

また教授ビザの場合は、教育や研究指導に従事する活動も認められますが、研究ビザは研究に従事する活動しか認められません。また、教授ビザには上陸許可基準がないのに対して、研究ビザは上陸許可基準がある事も重要な違いです。

なお、教授ビザも研究ビザも報酬を受ける必要があり、無報酬で研究活動等を行う場合は文化活動ビザが該当します。

文化活動ビザは、報酬を受け取ることはなく、原則は外国人本人が日本での滞在費を負担しながら、大学の研究所や研究室で教授等の指導を受けて研究を行うものです。なお、研究所や研究室、その他機関や個人から研究手当・滞在費用という名目で支給を受ける場合でも、その金額が実費弁償の範囲内であれば、無報酬であると認められます。

「教授」と「教育」

教授ビザは、大学・大学に準じる機関・高等専門学校において研究・研究指導・教育をする活動です。

教育ビザは、小学校~専修学校において教育を行う活動です。

機関の違いから分類されています。

「教授」と「技術・人文知識・国際業務」

大学に準じる機関で教育・研究等に従事する活動は教授ビザに該当しますが、大学に準じる機関に該当しない機関で活動をする場合には技術・人文知識・国際業務ビザが該当する場合があります。

活動内容や当該外国人の状況によって判断されます。

教授ビザの「その他実務上の要件」

教授ビザにも法に定められた在留資格該当性以外にも、実務上考慮される要件というものが存在します。

報酬要件

教授ビザが認められるためには、申請者が日本で教授ビザに該当する活動を継続的に行い、かつ、安定した生活を送る十分な収入を得ることが必要です。

収入を得る方法は教授ビザに該当する活動に対する報酬が原則ですが、例外として、資格外活動許可を取得して、教授ビザの活動以外の活動による報酬を含めることも認められます。

そして報酬に含まれる範囲ですが、大学等からの直接報酬だけではなく、大学等機関以外の国内外の機関や個人からの支援・報酬も含みます。また、滞在に必要な実費の範囲を超える奨学金や、同レベルの日本人教育者に対するモノを超える奨学金も報酬とみなされます。

一方、「業として行うものでない講演に対する謝金」や「日常生活に伴う臨時の報酬その他の報酬」については、「報酬」に含まない取り扱いがなされています。

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