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「帰化申請により日本の国籍を取得したい」
このような要望を解決するために、帰化・帰化許可申請書について少し知っていきましょう。
この記事では、帰化申請をする前に理解するべき5つの基本について解説します。その5つの内容は下記のとおりとなっていますので、興味のある方はこのまま読み進めてください。
- 帰化とは
- 帰化が認められる条件
- 帰化申請の方法
- 帰化申請が不許可になった場合の対処
- 帰化が認められた後に必要な手続き
また、下記キーワードについても気になった方はこのまま読み進めてください。
- 帰化するメリット
- 永住と帰化の違い
- 簡易帰化や大帰化について
- 国籍取得後の名前について
帰化とは
帰化(きか)とはその国の国籍を取得することを意味します。外国人が法務局へ帰化申請をすることによって日本国籍を取得できます。正確な手続きの名称は帰化許可申請といい、英語では「Permission for Naturalization」と表記されます。
帰化申請が認められると、帰化した外国人は日本人と区別して帰化人と呼ばれますが、基本的にすべてにおいて日本人として生きていくことになります。
日本人としての権利を得ることが出来るので、帰化をするメリットについては下記のようなものがあります。
- 選挙権(参政権)の付与、さらに立候補もできます。
- 公務員への就職も可能です。
- 年金、教育、福祉など社会保障の面で日本人と同じ扱いになります。
- 土地の所有が容易になります。
- 日本の旅券(パスポート)を持つことができ、海外出張・海外旅行の際の海外渡航手続が容易になります。
- ローンや仕事の資金の借り入れ等、銀行との取引・融資が容易になります。
- 日本人と結婚した場合、同一の戸籍に入ることができます。
その反面、帰化の条件として母国の国籍を放棄しなければならないので、下記のようなデメリットも存在します。
- 母国の旅券(パスポート)が無くなり、国によっては日本からの渡航が不便になります。
- 再び母国の国籍を取得する事は非常に困難です。
帰化は人生に大きく関わるものです。家族の方と相談し、これから日本人として生きていくのか慎重に考えることが大切です。
「永住」と「帰化」の違い
日本の永住権を取得する為に理解すべき3つの基本-「永住」と「帰化」の違いにて記載していますので、ご確認ください。
帰化が認められる条件
帰化の種類は、通常の帰化・簡易帰化・大帰化の3つがあります。
簡易帰化とは、特定の者に対して帰化を認める条件を緩和したものです。
大帰化とは、特別な者が対して認められる帰化です。大帰化はこれまでに認められた前例がありませんのであまり考えなくてよいと思います。
通常の帰化条件
帰化申請が許可される条件、つまり日本国籍の取得条件について解説します。
下記の条件をすべて満たせば、おそらく帰化が認められるとお考えください。許可処分の決定は、法務省の自由裁量とされていますので他に特別な事情があれば認められない場合もあります。
またこの条件は総合的に考慮されるものであり、一部満たさない場合でも許可されることも多々あります。
- 1.住所要件
-
- 5年以上日本に住所を有すること。
- 継続して日本に在住する事が必要であり、長期または頻繁に出国する場合はリセットされます。(再入国許可の期間に関係ありません)
- 当然、適法に在住することが必要であり、不法入国者は認められません。
- 住所要件で一番大事なことは「定着性」です。その外国人がこの先ずっと日本人として生活し、日本に住んでいくのかという定着性について、「ただ決心したという」主観的事情ではなく、例えば家族全員が帰化申請する等のような客観的事実について確認されます。(家族のうちの一部のみが帰化許可の申請をする場合は、他の家族が申請しない理由を提供する事が必要)
- 2.能力要件
-
- 日本における成人年齢である満20歳以上であることが必要です。
- 3.素行要件
-
- 素行に問題がないことが必要であり、過去の刑罰、違反や、税金の滞納状況等が考慮されます。
- 過去と現在を問わず、私生活に何か後ろめたい事がある場合は、当事務所または他の専門機関に正直に相談した方がよいでしょう。
- 4.生計要件
-
- 生計を営むに足りる資産または技能があることが必要です。
- これは世帯単位の資産で構いません。
- そして申請時にはその証拠となる給料明細等が必要となります。
- 5.重国籍防止要件
-
- 帰化が認められているのは、日本国籍取得によって母国籍を放棄する者、または、元々無国籍者だった者である必要があります。
- 6.憲法遵守要件
-
- 暴力的活動を企てる団体に参加したことがない必要があります。
- 親族などの身近な人もチェックされるのでご注意ください。
- 7.日本語要件
-
- これは法律には規定されていませんが、小学校3年生以上の日本語能力を有することが必要とされています。
- 読み書きや会話について、チェックされます。
簡易帰化-帰化条件の緩和
上記の条件に対して、一定の条件を有する方は、住所要件の緩和や能力要件・生計要件の免除が認められています。
このように緩和・免除された条件で帰化をすることを簡易帰化といいます。
- 1.日本国民であった者の子(養子を除く)
-
- 住所要件緩和:3年以上日本に住所または居所を有すること
- 2.日本で生まれた者
-
- 住所要件緩和:3年以上日本に住所または居所を有し、またはその父母(養父母を除く)が日本で生まれたこと
- 3.10年以上日本に居所を有する者
-
- 住所要件緩和:「住所」でなく「居所」でよい
- 4.日本国民の配偶者たる外国人
-
- 住所要件緩和:3年以上日本に住所・居所を有し、かつ、現に日本に住所を有すること。 または、婚姻の日から3年を経過し、かつ、1年以上日本に住所を有する者
- 能力要件緩和:能力要件は免除
- 5.日本国民の子(養子を除く)
- 住所要件緩和:日本に住所を有すること
- 能力要件緩和:能力要件は免除
- 生計要件緩和:生計要件は免除
- 6.日本国民の養子
-
- 住所要件緩和:1年以上日本に住所を有し、かつ、縁組時に本国法により未成年であったこと
- 能力要件緩和:能力要件は免除
- 生計要件緩和:生計要件は免除
- 7.日本の国籍を失った者(日本に帰化後、日本の国籍を失った者を除く)
-
- 住所要件緩和:日本に住所を有すること
- 能力要件緩和:能力要件は免除
- 生計要件緩和:生計要件は免除
- 8.日本で生まれ、かつ、出生時から国籍を有しない者
-
- 住所要件緩和:出生の時から3年以上日本に住所を有すること
- 能力要件緩和:能力要件は免除
- 生計要件緩和:生計要件は免除
大帰化
日本に特別の功労を与えた方が認められる帰化であり、国会の承認が必要です。
極めて特別な制度であり、これまでに前例はありません。
帰化申請の方法
帰化申請の方法について基本的な事項を解説します。
帰化申請の手続きの流れ・申請者・許可が下りるまでの期間・申請先・費用・必要書類について知りたい方は読み進めてください。
帰化申請の流れ
- 法務局での事前相談、必要書類のアドバイスを受ける
- ↓
- 申請書と必要書類を法務局へ提出
- ↓
- 法務局による審査
- ↓
- 面接と家庭訪問・職場訪問
- ↓
- 法務大臣による許可処分
- ↓
- 通知(官報による告示)
- ↓
- 帰化後の手続き
帰化申請の申請者
原則は外国人本人がする必要があります。但し、本人が15歳未満の場合は、本人ではなく親権者や後見人などの法定代理人が申請しなければなりません。
他の在留資格に関する手続きとは異なり、帰化申請の場合は申請取次者として認められた弁護士や行政書士でも、外国人本人に代わって申請することはできません。しかし、帰化申請の必要書類も非常に多く複雑です。申請代行を依頼することはできませんが、書類の作成や事前相談の同席、面接に関するアドバイスを受けるために弁護士・行政書士にコンサルティングを依頼するケースが非常に多いです。
帰化申請の許可が下りるまでの期間
標準処理期間は規定されていませんが、1年程度要するケースが多いです。
帰化申請の申請先
外国人が住む場所を管轄する法務局または地方法務局。
法務局のHP-法務局・地方法務局所在地一覧-においてご確認ください。
帰化申請の費用
ひとりでする場合の帰化申請についての手数料は必要ありません。
弁護士や行政書士などにコンサルティングを依頼する場合はその費用が必要です。
帰化申請の必要書類
提出書類はそれぞれの案件によって異なりますが、事前相談時に担当者からアドバイスを頂けます。
しかし最低限のアドバイスしか頂けない場合が多いので、追加書類が必要となる事は覚悟しておいた方がよろしいでしょう。
基本的には下記書類が必要です。
- 帰化許可申請書
- 親族の概要を記載した書類
- 帰化の動機書
- 履歴書
- 生計の概要を記載した書類
- 事業の概要を記載した書類
- 住民票の写し
- 国籍を証明する書類
- 親族関係を証明する書類
- 納税を証明する書類
- 収入を証明する書類
- 在留歴を証する書類
官報の検索
帰化申請の結果は官報に掲載されますのでご自身で確認しなければなりません。
インターネット上で官報を読むこともできますので、確認したい方は「インターネット版官報」にアクセスしてください。
インターネット版官報のサイトでは検索は有料となっておりますので、詳しく検索したい場合は、「官報検索!」が便利です。
帰化申請が不許可になった場合の対処
不許可通知を受けた場合、その後の対処方法としては下記の手段が考えられます。
- 処分を不服として裁判所に訴える
- 諦めずにもう一度再申請する
- 一度自分の生活状況を見直して、次の機会を待つ
実質は3.のみと考えた方がよいでしょう。
1.の裁判所に訴えることは法律上可能ですが、裁判により法務大臣の不許可判断が覆った前例はありません。法務大臣が何か重大な事実誤認をしている等の特別な事情があれば可能性としてはゼロではありませんが、手段としてはお勧めできません。
2.の諦めずにもう一度再申請する事については、やはり一度不許可として処分を下したのにもう一度再申請して覆るとは考えにくいです。
そう考えると、実質は自分の生活状況を見直して次の機会を待つ方法しか考えられません。
どのように見直せばよいかについては、面接や帰化申請手続きの中で言われた事や聞いた事から推察して自分の問題点を修正しなければなりません。不許可にはもちろん理由がありますが、その理由は教えてくれません。
また生活状況を修正すればすぐに申請できるというわけではありません。修正した生活状況を継続し、反省期間としてある程度の期間を待たなくてはいけません。
さらに一度不許可になった場合はその不許可の事実が履歴に残ります。過去に帰化申請が不許可になった外国人を審査する場合は、初めて帰化申請する場合より慎重な審査をする傾向があります。
過ぎてしまったことは仕方ありませんが、初めてする帰化申請の時点で自分の生活状況をしっかり把握して綿密な帰化申請計画を行う事により、一度で許可を得る事が非常に大切です。そしてそれが出来ない場合は、今回の帰化申請は保留にして次の機会を待つ事をお勧めしたいです。
帰化が認められた後に必要な手続き
膨大な手続きを経て帰化申請が許可され、日本国籍を取得できる事となった場合でもまだ安心してはいけません。
帰化が認められた後にも様々な手続きが残っています。
帰化届
官報による告示を確認して帰化が許可されている事を確認した後、まずは法務局で帰化人の身分証明書を受け取りに行きます。
その後、住所地もしくは帰化後の本籍地の役所に帰化届と身分証明書を提出します。
帰化届は告示の日から1ヵ月以内にする必要があります。
在留カード・特別永住者証明書の返納
在留カードや特別永住者証明書は日本に在留する外国人の方が持つ証明書であるので、日本人となった帰化人の方は不要になるので返納しなければなりません。
在留カード・特別永住者証明書を住所地を管轄する入国管理局へ持ち込んで返納するか、東京入管おだいば分室に郵送しなければなりません。
期限は告示日から14日以内です。
入国管理局のHP-組織・機構-にて地図から検索できますので、そちらで「管轄又は分担区域」をご確認ください。
また、郵送先住所は下記のとおりです。
〒135-0064 東京都江東区青海2-7-11 東京港湾合同庁舎9階 東京入国管理局おだいば分室あて
その他手続き
上記の他にも、外国人から日本人に変わったことによって様々な手続きが必要です。
下記に一例を記載します。
- 本国の国籍喪失の届出
- 運転免許所の名義変更
- 銀行の名義変更
- 日本のパスポート取得
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