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2017年入管内部基準に記載されている、「<元日本人・帰化日本人・定住者> の <配偶者・子> に関する定住者ビザ」における詳細要件について記載します。

本記事を読む前に、【2017年入管内部基準】定住者ビザの種類について(ビザ)を読んでください。

上記記事の、定住者3号・定住者4号・定住者5号イロハ・定住者6号イロハニ・定住者7号イロハニ、に該当する場合が本記事の対象となります。

これらの各号の定住者ビザの留意点や詳細要件について解説します。

<元日本人・帰化日本人・定住者> の <配偶者・子> に関する定住者ビザの詳細要件

それぞれの定住者ビザの留意点・詳細要件

留意点・詳細要件の俯瞰

ここで留意点・詳細要件について箇条書きで記載しますので、該当する事項を確認してください。

  • 「全ての号」の定住者ビザにある、生計維持要件
  • 「全ての号」の定住者ビザにある、日本語能力要件
  • 「3号・4号・5号ハ・6号ハ」の定住者ビザにある、素行要件
  • 「5号ロハ・6号ロハニ」の定住者ビザにある、本体人となる者の定住者ビザの在留期間要件
  • 「5号イロハ」の定住者ビザにある、婚姻要件
  • 「5号ロハ」の定住者ビザにある、離婚に関する除外要件
  • 「6号イロハニ」の定住者ビザにある、実子の年齢要件と未婚要件
  • 「7号イロハニ」の定住者ビザにある、養子の年齢制限と養子の定義

それぞれについて解説します。

「生計維持要件」について

「公共の負担となるおそれがある」と判断できる場合は、不許可となる場合があります。

「公共の負担となるおそれがある」とは、生活保護の支給される可能性のあるような者を指し、滞在費支弁人の収入・預金・その他資産で判断されます。

金額については入管からは公表されていないので伏字で記載しますが、外国人の経費支弁人となる方の「扶養を受ける者(国内外含む)」「滞在費支弁人本人」「申請する外国人」「他に身元保証している外国人」の合計人数に〇〇〇万円を乗じた金額が1年間の基準滞在費として判断されます。

従って、その金額に応じて滞在費支弁人の資産を示す資料で立証することになります。

立証資料は下記のようなものがあります。

  • 住民税の納税証明書
  • 在職証明書、または、確定申告書控え・営業許可書の写し
  • 所得が記載された源泉徴収票
  • 預貯金通帳の写し
  • 年金等を受給していることを証明する文書
  • 不動産の固定資産税書類
  • 雇用予定証明書
  • その他資産を証明する書類
  • その他資産を有するに至った経緯を証明する資料

なお滞在費支弁人となる者は、申請人の滞在費を支弁するに合理的な理由がある者であり、例えば「配偶者」「申請人の親族」「配偶者の親族」などが挙げられます。

上記立証資料により許可を得て入国した後、比較的早い段階で生活保護を受給するようになった場合には、更新申請が不許可となる可能性が高いです。

「日本語能力要件」について

定住者ビザが認められれば、「1年」「3年」「5年」などの在留期間が指定されます。

そして、未成年者を除き、「5年」の在留期間が認められるためには日本語能力が必要となります。

具体的には下記のレベルの日本語能力が必要です。

  • 日本語教育機関において6月以上の日本語教育を受けた者
  • 日本の小学校以上の学校で1年以上の教育を受けた者
  • 日本語能力試験N2に合格した者
  • BJTビジネス日本語能力テストJLRT聴読解テストにおいて400点以上あった者(財団法人日本漢字能力検定協会の実施)

「素行要件」について

「3号・4号・5号ハ・6号ハ」の定住者ビザを取得するためには、素行が善良でなければなりません。

素行が善良か否かは下記のように審査されます。

素行が善良と認められるためには下記のすべてに該当しない者でなければなりません。

  • ①日本・海外の法令違反で懲役・禁錮・罰金・これらに相当する刑に処せられたことがある者。(注1)
  • ②少年法による保護処分(1号・3号)が継続中の者。(注2)
  • ③違法行為や風紀を乱す行為を繰り返し行うなど、素行善良と認められない事情がある者。(注3)
  • ④不法就労のあっせんや、自己または他者のビザ手続きにおいて不正行為を行った者。

(注1)

道路交通法違反による罰金は除かれます。ただし、道路交通法違反による罰金を何度も繰り返しているような場合には③に該当する可能性もあります。

また「刑の消滅の規定の適用を受ける者」又は「執行猶予の言渡しを受けた場合で当該執行猶予の言渡しを取り消されることなく当該執行猶予の期間を経過し、その後更に5年を経過した者」は、これに該当しないものとして扱われます。

刑の消滅の規定とは下記のとおりです。(刑法第34条の2)

  • (1)禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで10年を経過したときは、刑の言渡しは効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで5年を経過したときも、同様とする。
  • (2)刑の免除の言渡しを受けた者がその言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで2年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。

また、海外における刑罰も審査の対象なので、犯罪経歴証明書や無犯罪証明書を求められる場合があります。

日本の法令違反の審査は前科照会等がなされます。

(注2)

保護処分の1号とは保護観察所の保護観察に付することであり、3号とは少年院に送致することです。

(注3)

「①日本の法令違反で懲役・禁錮・罰金に処せられたことがある者」に該当しないような軽微な法令違反であっても同様の行為を繰り返し行うような場合や、地域社会に多大な迷惑を及ぼす活動を繰り返し行う者が該当します。

例えば、交通違反の反則金は罰金ではありませんが、何度も繰り返すような場合にはこれに該当します。また反則金や罰金がなくとも街宣活動などで何度も指摘を受けているような場合にもこれに該当します。

これらの事情については、関係機関からの報告や一般人からの通報などを調査し、事実と認定した場合に素行善良と認められない特段の事情があるものと判断されます。

「本体人となる者の定住者ビザの在留期間要件」について

「5号ロハ・6号ロニ」の定住者ビザを取得するためには、本体人の在留期間が1年以上である必要があります。

「5号ロハ」の定住者ビザは、定住者ビザを有する本体人の配偶者に与えるビザであり、「6号ロニ」の定住者ビザは、定住者ビザを有する本体人の実子に与えるビザです。

そして当該本体人の定住者ビザの指定されている在留期間が1年以上でなければなりません。

この「1年」というのは、滞在期間が1年という意味ではなく、在留カードに記載されている在留期間が1年という意味です。

なお、1年未満の在留期間が与えられる事例はそこまで多くありません。

「婚姻要件」について

配偶者身分に与える「5号イロハ」の定住者ビザは、実態のある婚姻がなければ認められません。

つまり法律上の婚姻届けがなされているのみではなく、同居し互いに扶助しあっている状態でなければなりません。

なお、特別な事情により別居するような場合は、特別な事情のある旨を立証し、認められることもあります。

「離婚に関する除外要件」について

「5号ロハ」は、定住者ビザを有する本体人の配偶者に与える定住者ビザです。

本体人が定住者ビザ「5号イロハ」の場合で、現在指定されている在留期間中に離婚→再婚した場合、再婚相手となる配偶者には定住者ビザは認められません。

これを認めてしまうと、定住者ビザ外国人と結婚した配偶者を海外から呼び寄せ、配偶者に定住者ビザを付与した後、その夫婦が離婚すれば定住者ビザの外国人が2人となります。そしてそれぞれ別の者と結婚し、配偶者を海外から呼び寄せるという、入管法の趣旨にそぐわない不正な定住者ビザ外国人が無限に増えることになります。

例えば、2017年11月1日にビザ更新により、新たに在留期間3年の定住者ビザ「5号」を取得した者(A)がいたとします。(A)がその後に離婚した場合、2020年11月1日の在留期限まで、(A)の再婚相手に定住者ビザを付与できません。

一方、(A)が2017年11月1日のビザ更新より前に離婚し、今回新たに在留期間3年の定住者ビザ「5号」を取得したとします。この場合は、以前の在留期間に離婚したものなので、2020年まで待たずに(A)の再婚相手に定住者ビザを付与できます。

「実子の年齢要件と未婚要件」について

「6号イロハニ」の定住者ビザは、日本人・永住者・定住者の実子に与えるビザですが、当該定住者ビザが認められるためには、実子が「未成年」かつ「未婚」でなければなりません。

この要件の趣旨は、「6号イロハニ」の定住者ビザが本体人から扶養を受ける実子に認めるビザであることを鑑み、成人であることや結婚歴がある場合は、実態的に扶養する必要がないと判断できるためです。

この点、入国後一定期間在留した後に、成人した場合や結婚した場合は、そのことをもって在留が不許可になるわけではありません。

「養子の年齢制限と養子の定義」について

養子は6歳未満でなければなりません。

しかしこの「6歳未満」というのは、不正な形式上の養子縁組による入国を防ぐ目的であって、6歳に達してしまったからといって、それだけで不許可になるわけではありません。

また、養子には日本の法律上、特別養子と普通養子がありますが、この要件における養子は両方を含みます。

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