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2017年入管内部基準に記載されている、ビザ審査における「永住者の配偶者等ビザの審査」について記載します。
永住者の配偶者等ビザの審査要件(法文)
永住者の配偶者等ビザは、「永住者・特別永住者の配偶者」「永住者・特別永住者の子として日本で出生した者」に該当する外国人に付与されるビザです。
入管における審査では、入管法に定められたビザ該当性に従って判断されます。
ビザ該当性(法文引用)
永住者の在留資格をもって在留する者若しくは特別永住者(以下「永住者等」と総称する。)の配偶者又は永住者等の子として本邦で出生しその後引き続き本邦に在留している者
ビザ該当性(要件)についての詳細解説
永住者の配偶者等ビザを取得する外国人のパターンは2つに分類されます。
- (類型1)永住者・特別永住者の配偶者の身分を有する者
- (類型2)永住者・特別永住者の子として出生した者の身分を有し、かつ、日本で生まれた者
ビザ該当性に内包される要件
上記の類型を踏まえて、ビザ該当性に内包される要件を知るためには下記の事を理解しなければなりません。
- 「配偶者」に含まれるもの
- 「子」に含まれるもの
- 「日本で生まれた」について
- 収入要件について
「配偶者」に含まれるもの
配偶者とは、「現在進行形」で「法的に有効」な「実態的」な婚姻関係にある場合を意味し、下記は含みません。
- 配偶者と死別・離婚した者
- 内縁の配偶者
- 外国で有効に成立した同性婚の者
- 夫婦の共同生活を営む実態のない婚姻関係(合理的な理由がある場合を除く)
婚姻の実態性が疑わしい場合と立証方法
婚姻の実態性については、提出書類(要求される追加提出を含む)により判断されますが、下記のような場合には婚姻に実態性がないと判断される可能性があります。
- 単身赴任や入院などの合理的な理由がなく同居していない
- 合理的な理由なく離婚・再婚が繰り返されている
- 出会いから婚姻までの経緯に関する信ぴょう性に疑義がある
- 身元保証人が配偶者ではない
- 夫婦が意思疎通可能な言語能力を有していない
- 結婚式に夫婦の親族が参加していない、または、夫婦のどちらか一方の親族しか出席していない
- 重婚状態になっている
婚姻関係に疑われそうな場合には、追加書類が求められる場合もありますが、基本的に立証責任は申請者側にあります。特に婚姻までの経緯では、下記の資料を提出してしっかり立証しましょう。このうち写真が最も立証能力があります。出会った当初・デート中・親族と写った写真・友人と写った写真・結婚式の写真などと、期間を分けて複数枚準備できればベストです。
- 写真
- 電話記録
- メール送受信記録
- 証印・航空券控え等の渡航記録
- 送金証明書
合理的な理由のある別居について
永住者の配偶者等ビザは、合理的な理由なく別居していれば不許可となります。同居していないことについては、納税証明書の納税地や配偶者控除や実地調査などで発覚する場合もありますので注意が必要です。
合理的な理由のある別居には下記のような場合があります。
- 永住者である配偶者が転勤や出向のために住所を移転したが、申請人は子供の通学の為に別居している場合
- 夫婦関係悪化を理由に、夫婦関係修復のために一時的に別居している場合
しかし上記の場合なら必ず認められるというわけではなく、下記を総合的に考慮して判断されます。
- 別居した経緯
- 別居期間
- 連絡・訪問などの有無を含めた別居中の夫婦関係
- 送金などの協力・扶助の関係の継続
離婚の場合
「別居」→「離婚調停・離婚訴訟」→「離婚」という推移を考えるとします。
前述したとおり、夫婦関係修復のために一時的に別居している場合は、永住者の配偶者等ビザが認められる可能性が高いです。
次の離婚調停・離婚訴訟中の場合は、下記の両方に該当する場合には、永住者の配偶者等ビザが認められる可能性が高いです。
- 訴訟・調停の状況から、申請人となる外国人配偶者の復縁の意思が認められる場合
- 訴訟提起から1年程度以内であり
最後に離婚した後の場合は、永住者の配偶者等ビザの該当性を喪失し、不許可となります。
しかし定住者ビザが認められる場合があるので、離婚後速やかにビザ変更をしましょう。(在留期限まで待っていてはいけません。)
重婚について
フィリピンなどのような制度上離婚が存在しない国の場合には注意が必要です。
フィリピンの場合は、行政的な離婚手続きは存在ものの、裁判所において婚姻取消・無効確認手続きを行うことができます。
従ってフィリピンの場合は慎重に進めれば問題ございませんが、他の国では国ごとに手続きが異なるので、外国人の本国の離婚手続きをしっかりと確認した上で進めることが必要です。
「子」に含まれるもの
永住者の子として出生した者の「子」は下記を指します。
- 生まれた日に父または母のどちらかが永住ビザ・特別永住者資格を有し、かつ、その嫡出子
- 生まれた日に父または母のどちらかが永住ビザ・特別永住者資格を有し、かつ、その認知された非嫡出子
実子には嫡出子と非嫡出子がありますが、嫡出子は法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子どもを意味し、非嫡出子は法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子どもを意味します。
また、永住ビザを有する父と永住ビザを有さない母の間の子で、生まれた日には父が亡くなってしまった場合も含みます。子が生まれた日以降に永住ビザを有さなくなった場合も含みます。
なお、日本国外で出産した場合には永住者の配偶者等ビザは認められません。日本国内で生まれたことが必要です。
下記は含まないことに留意してください。
- 普通養子・特別養子
- 子が生まれた日以降に、父または母が永住ビザを取得した場合
- 父母どちらかが永住ビザを有する場合でも、日本国外で出産した場合
注意点としては、渡航記録から妊娠時期に夫婦が同一地域に居なかった、認知した非嫡出子が現配偶者との交際期間中ではないなど、妊娠の経緯に疑義がある場合は不許可判断される可能性があります。
「日本で生まれた」について
前述したとおり、父母どちらかが永住ビザを有する場合でも、日本国外で出産した場合には永住者の配偶者等ビザは認められません。
海外で出産した場合は、定住者ビザが該当することになります。
収入要件について
永住者の配偶者等ビザの場合、ビザ該当性の文言からは収入要件を読み取れませんが、実際には「公共の負担となるおそれがある」と判断できる場合は、不許可となる場合があります。
「公共の負担となるおそれがある」とは、生活保護の支給される可能性のあるような者を指し、滞在費支弁人の収入・預金・その他資産で判断されます。
金額については入管からは公表されていないので伏字で記載しますが、外国人の経費支弁人となる方の「扶養を受ける者(国内外含む)」「滞在費支弁人本人」「申請する外国人」「他に身元保証している外国人」の合計人数に〇〇〇万円を乗じた金額が1年間の基準滞在費として判断されます。
従って、その金額に応じて滞在費支弁人の資産を示す資料で立証することになります。
立証資料は下記のようなものがあります。
- 住民税の納税証明書
- 在職証明書、または、確定申告書控え・営業許可書の写し
- 所得が記載された源泉徴収票
- 預貯金通帳の写し
- 年金等を受給していることを証明する文書
- 不動産の固定資産税書類
- 雇用予定証明書
- その他資産を証明する書類
- その他資産を有するに至った経緯を証明する資料
なお滞在費支弁人となる者は、申請人の滞在費を支弁するに合理的な理由がある者であり、例えば「配偶者」「申請人の親族」「配偶者の親族」などが挙げられます。
上記立証資料により許可を得て入国した後、比較的早い段階で生活保護を受給するようになった場合には、更新申請が不許可となる可能性が高いです。
参考:婚姻の実態に関係する裁判例解説
平成6年5月26日東京地方裁判所判決において、「日本人の配偶者等ビザは、日本人との婚姻が法律上有効なものであれば足りる」と判示しました。つまりこの時点では、同居等の婚姻実態を有することまでは要求していないと、裁判所の答えを出しておりました。
しかしその後、平成14年10月17日最高裁判所判決において、「日本人の配偶者等ビザは、日本人との婚姻が法律上有効なものがあるだけでは足りず、真しな意思をもって共同生活を営むことを本質とする婚姻である必要がある」と判示しました。
地方裁判所よりも上位の最高裁判所において、やはり実態性のある婚姻が必要だと答えを改めたものです。
また、同居は協力関係の継続に関する判決では、平成8年5月30日東京高等裁判所判決において、「同居・協力関係になくても、外国人が日本人配偶者との婚姻関係を修復し得る可能性があるような場合には、婚姻関係が実体を失っているまでは認めることができず、日本人の配偶者等ビザの該当性を肯定するのが相当である。」と判示した者もあります。
付与される永住者の配偶者等ビザの在留期間について
永住者の配偶者の場合
5年が付与される基準
下記のすべてに該当することが必要です。
- ① 入管法の届出義務を遵守していること
- ② 各種の公的義務を履行していること
- ③ 義務教育期間の子の場合は、子がきちんと通学していること
- ④ 主たる生計維持者が納税義務を履行していること
- ⑤ 結婚後の同居期間が3年を超え、かつ、今後も婚姻生活の継続性が高いもの
なお、婚姻の継続性の判断は、家族構成・婚姻期間・その他婚姻を取りまく諸状況を総合的に審査されます。
3年が付与される基準
下記のいずれかに該当することが必要です。
- ① 5年・1年・6月のいずれにも該当しない場合
- ② 5年ビザを有していたものが、ビザ更新時に5年ビザ基準の①②③④のいずれかに該当しなくなった場合
1年が付与される基準
下記のいずれかに該当する場合です。
- ① 在留状況・婚姻の継続性について1年に1度確認する必要がある場合
- ① 3年ビザを有していたものが、ビザ更新時に5年ビザ基準の①②③④のいずれかに該当しなくなった場合
- ③ 滞在予定期間が6ヶ月を超え1年以内の場合
特に3年の永住者の配偶者等ビザを有していた者で、入管法上の届出義務などを怠ると1年ビザに降格になることには留意が必要です。
また、在留状況等により3年から1年に降格する場合もあります。
6月が付与される基準
下記のいずれかに該当する場合です。
- ① 離婚調停・離婚訴訟が行われている途中で、夫婦の一方に婚姻継続の意思がある場合
- ② 夫婦の一方が離婚の意思を明確にしている場合
- ③ 滞在予定期間が6ヶ月以下の場合
永住者の子の場合
5年が付与される基準
下記のすべてに該当することが必要です。
- ① 入管法の届出義務を遵守していること
- ② 申請人または申請人を扶養する親が各種の公的義務を履行していること
- ③ 義務教育期間にある場合は、きちんと通学していること
- ④ 主たる生計維持者が納税義務を履行していること
3年が付与される基準
下記のいずれかに該当することが必要です。
- ① 5年・1年・6月のいずれにも該当しない場合
- ② 5年ビザを有していたものが、ビザ更新時に5年ビザ基準の①②③④のいずれかに該当しなくなった場合
1年が付与される基準
下記のいずれかに該当する場合です。
- ① 在留状況について1年に1度確認する必要がある場合
- ① 3年ビザを有していたものが、ビザ更新時に5年ビザ基準の①②③④のいずれかに該当しなくなった場合
- ③ 滞在予定期間が6ヶ月を超え1年以内の場合
特に3年の永住者の配偶者等ビザを有していた者で、入管法上の届出義務などを怠ると1年ビザに降格になることには留意が必要です。
また、在留状況等により3年から1年に降格する場合もあります。
6月が付与される基準
滞在予定期間が6ヶ月以下の場合に付与されます。