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この記事では医療ビザを取得するための条件である「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」について解説します。

「在留資格該当性」と「上陸許可基準」については、在留資格認定証明書や在留期間更新の一般要件をご確認ください。

外国人が取得したい在留資格が本当に取得できるのか否か、また要件に適合せずに取得できない場合は、日本での在留を諦めるのではなく他の在留資格の要件に適合するか否か、これらを考える上で実務上はまずこの「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」を正確に把握して検討を進めなければなりません。

医療ビザについて法で定められた「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」の解説に進めます。

医療ビザの「在留資格該当性」

まず入管法別表第1の2に定める法文は下記の通りです。

医師、歯科医師その他法律上資格を有する者が行うこととされている医療に係る業務に従事する活動

用語の定義・解説

「医師、歯科医師」とは

医療活動を行う医師や歯科医師の事を意味し、医療活動の範囲は医師法・歯科医師法で定められたものです。

「その他法律上資格を有する者」とは

日本の法律により、医療資格を有していなければ業務に携われないという限定された医療資格を有していなければなりません。

特定の医療資格を有していなくても、誰でも行うことができる医療業務に従事する活動は、医療ビザの活動範囲に含みません。たとえ医師資格を有していても、医師資格が不要な医療研究に携わる場合は医療ビザに該当しません。

具体的には下記の方が該当します。

  • 医師
  • 歯科医師、歯科衛生士
  • 助産師
  • 看護師、准看護師
  • 薬剤師
  • 保健師
  • 理学療法士、作業療法士
  • 診療放射線技師
  • 臨床工学技士
  • 義肢装具士
  • 視能訓練士

また、下記の場合は医療ビザが認められません。厳密には在留資格該当性を満たすものの上陸許可基準適合性がないとして許可されません。

  • 歯科技工士
  • 柔道整復師
  • はり師
  • きゅう師
  • あん摩マッサージ指圧師

「医療に係る業務に従事する活動」とは

医学に基づく「人」の「疾病の予防」又は「傷病の治療」又は「助産」に従事する業務と定義されています。

また、上記に付随する下記の業務も含まれます。

  • 診察
  • 看護
  • 検査

また、下記の業務は含まれません。

  • 臨床修練

臨床修練とは、外国における医師・歯科医・看護師等に相当する者が厚生労働大臣の許可を受けて、臨床の場で行う医療研修のことを意味します。

医療研修を目的とする入国でも、非実務研修である、医療現場見学・医療機器操作の練習等に限定されているので、報酬を伴うとされる医療ビザには適合しません。

なお、臨床修練が該当するのは、教授ビザ・研修ビザ・留学ビザ・文化活動ビザ等が該当し得ます。

他のビザとの境界

「研究」と「医療」

研究所で研究活動を専ら行う場合は研究ビザが該当します。

たとえ医師資格を有する外国人の方が行う場合であっても、医療機関で行う場合であっても医療ビザには該当しません。

医療ビザの「上陸許可基準適合性」

医療ビザの上陸許可基準について、基準省令1号~3号について、それぞれに分けて解説します。

平成22年に医療ビザの上陸許可基準は緩和改正されております。以前は、歯科医師に対しては、研修のみに限定する活動制限・免許取得後6年以内の入国に制限する年数制限・就労可能地域を制限する地域制限を定めていましたが、全て撤廃されました。

保健師、助産師、看護師に対しても、上記に近い制限がされていましたが撤廃されております。

以下、現在の上陸許可基準について解説を進めます。

各号対象者の整理

1号対象者

医師・歯科医師・保健師・助産師・看護師

1号・3号対象者

薬剤師・歯科衛生士・診療放射線技師・理学療法士・作業療法士・視能訓練士・臨床工学技士・義肢装具士

2号対象者

准看護師

基準省令1号

基準省令1号に定められている法文は下記の通りです。

一 申請人が医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、歯科衛生士、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、臨床工学技士又は義肢装具士としての業務に日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けて従事すること。

解説

「報酬」とは

ここでいう「報酬」は、役務の給付の対価であり、通勤手当・住宅手当などの実費弁償は含みません。また、扶養手当についても被扶養者の有無による審査上の不平等を生じさせないため、「報酬」に含めないこととされています。

また退職金・結婚祝金・見舞金・現物給付としての住宅・食事等・制服・旅費等については、その実質が見舞金・恩恵的・福利厚生的なものは「報酬」に含まれませんが、労働協約・就業規則・労働契約等で支給条件が明らかなものは「報酬」に含まれます。

「日本人~と同等額以上」とは

基本的には申請人が所属する個々の機関に在する日本人であって同等の地位の者と比較されます。

基準省令2号

基準省令2号に定められている法文は下記の通りです。

二 申請人が准看護師としての業務に従事しようとする場合は、本邦において准看護師の免許を受けた後四年以内の期間中に研修として業務を行うこと。

解説

准看護師として医療ビザが認められるためには、下記の要件を満たす必要があります。

  • 日本で准看護師資格を取得した事
  • 准看護師資格の取得日から4年以内に研修業務をする事
「研修として業務を行う」とは

技術・知識・技能を習得する目的に、報酬を受けて准看護師業務に従事することです。

研修ビザと異なり、報酬を受けて行います。

 

基準省令3号

基準省令3号に定められている法文は下記の通りです。

三 申請人が薬剤師、歯科衛生士、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、臨床工学技士又は義肢装具士としての業務に従事しようとする場合は、本邦の医療機関又は薬局に招へいされること。

解説

「招へいされること」とは

日本の医療機関や薬局との雇用契約等に基づいて、医療機関。薬局に招聘されなければなりません。

「日本人~と同等額以上」とは

基本的には申請人が所属する個々の機関に在する日本人であって同等の地位の者と比較されます。

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