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「国際結婚をした夫婦の離婚率ってどうなの?」

「国際結婚の離婚手続きって離婚届以外に何か必要?」

「離婚をしたらビザはなくなるの?」

「子供の親権は?親権が無くなったけど無理やり連れて行きたい」

「離婚後の夫婦や子供の苗字はどうなるの?」

このような疑問・要望を解決するために、国際結婚後の離婚について少し知っていきましょう。

この記事では、国際結婚後の離婚に関して知っておきたい5つの事について解説します。その5つの内容は下記のとおりとなっていますので、興味のある方はこのまま読み進めてください。

  • 国際結婚の離婚率
  • 国際結婚の離婚手続き
  • 国際離婚後のビザ
  • 国際離婚後の子供の親権
  • 国際離婚後の苗字

また、下記キーワードについても気になった方はこのまま読み進めてください。

  • 国際私法
  • ハーグ条約

 

国際結婚の離婚率

国際結婚をした方々は、様々な障壁・国境を超えて愛を誓い合ったことでしょう。しかし、違う文化の共生というものはそう簡単なものではないようです。

国際結婚の離婚率について、複数年の平均国際結婚件数と平均国際離婚件数の割合によって簡易的に計算してみました。(正確な離婚率ではありませんが、おおよその離婚率を掴めていると思います。)

平成17年~平成25年の平均離婚率
日本人夫婦 夫日本人/妻外国人 夫外国人/妻日本人
結婚数 660,639 23,800 7,258
離婚数 227,630 13,710 3,519
離婚率 34.5% 57.6% 48.5%

これを見ると夫が日本人で妻が外国人の場合は約60%も離婚しており、3人に2人近くは離婚していることになります。ではどんな事が夫婦間に亀裂を生じさせているのでしょうか?

結論としては、日本人夫婦同士が相手に不満を持つ内容と日本人が外国人配偶者に持つ不満の内容はあまり変わらないようです。国際結婚をした夫婦が裁判離婚をする際の申し立てにおける「申し立て理由」に関して、2008年の司法統計から下記の事が分かります。

日本人夫から日本人妻へ 日本人夫から外国人妻へ 日本人妻から日本人夫へ 日本人妻から外国人夫へ
1位 性格の不一致 性格の不一致 性格の不一致 性格の不一致
2位 異性関係 異性関係 暴力をふるう 暴力をふるう
3位 異常性格 浪費する 浪費する 生活費を渡さない

やはり程度の問題でしょうか。

例えば、仕事よりも家庭を強く大事にする文化圏で生まれ育った方々にとっては旦那さんが仕事中に電話に出ない事が不満に感じることもあります。また、生活費の事は二の次にして、母国の宗教儀式に対して多大な財産をつぎ込む方々もいらっしゃいます。

やはり文化というものの壁は非常に大きいのではないでしょうか。

しかし一方で、約40%の方は国際結婚を継続させています。(先ほどの離婚率60%の数字には、ビザ目的で国際結婚をした後に永住権を取得さえすれば、離婚するような方々の件数も含まれているので、実際には国際結婚を継続している方は多いと思います。)

国際結婚をして円満な結婚生活を営んでいる方にとっては、日本人同士の夫婦の生活には無い違いを楽しんでいるのでしょう。

 

国際結婚の離婚に関する手続きについて

日本人と外国人が結婚している場合、どのような離婚手続きが必要かについて解説します。

まず日本人同士の離婚の場合は、離婚届を提出することで離婚が成立し完了します。そして離婚届を提出するまでの過程でも、子供の親権はどうするか・離婚の方法は協議か調停か裁判か等、様々な事を決めなければなりません。

それらは全て日本の法律に基づいて進められます。しかし外国人が関わった場合に、どちらの法律に基づいて離婚を進めるのかを考えなければなりません。

そこで国際私法というものをまず確認しなければなりません。

国際私法とは、国際結婚のように複数の国の法律が抵触する場合にどちらの法律に基づくべきかを定めるものです。国際私法について詳しく知りたい方は国際結婚にまつわる法律に関する4つの基本-国際私法とはをご確認ください。

国際結婚の離婚についての日本の国際私法は下記のとおりです。

  • 夫婦の本国法が同一であるときはその法により、
  • その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、
  • そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法による。
  • ただし、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚は、日本法による。

この国際私法よると、日本人と外国人の結婚で日本に住んでいる場合は基本的に日本の法律によります。

日本の法律に従うとは、簡単にまとめると下記の内容のことをいいます。

  • 離婚届を受理されることによって離婚が成立
  • 夫婦のどちらか一方を親権者に設定する
  • 離婚の方法は協議離婚、調停離婚、裁判離婚が認められる
  • 等々

ここで一つ注意していただきたいことは、日本の法律に従って離婚届を受理された時点では、単に日本での離婚が成立しただけであり、外国では離婚は成立できていないということです。日本の法律に従った離婚をするのだから、日本にのみ認められればよいということにはなりません。

例えば日本人と外国人が日本の法律に従い日本に離婚届を提出しそれが受理されたとします。この時点で日本においては日本人と外国人は離婚が完了しているので、日本人に関しては(再婚禁止期間を経過すれば)再婚できることになります。しかし、外国人に関しては母国から離婚したと認められていないので、その外国人が次に再婚手続きをしようと思ったときに、重婚を指摘される場合があります。

こうならないように、国際結婚をした日本人と外国人が離婚する場合は双方の国から離婚を認められなければなりません。

また日本の法律に基づいて日本で離婚手続きをした後に、双方の国で離婚を認められるために外国人の母国で離婚手続きしたら却下されたということもあります。

それは外国には外国で認めている離婚手続きというものがあり、例えば日本では協議離婚が認められているが、裁判を通さないと離婚できないと決められている国もあり、その場合は日本の裁判所で裁判離婚を進める必要があるわけです。

従って日本で離婚を進める前に、外国人の母国で認められた離婚手続きを確認しておく必要があります。

一例ですが下記のような場合もありますので、在日の各国大使館等で必ず事前に確認してください。

  • 相手国では裁判離婚しか認められない
  • 相手国への届出は在日大使館で済む場合もあれば、相手国でしなければならない場合もある
  • 日本で離婚が成立し夫婦関係が終了してしまったら、相手国に届出することができない

離婚が成立しないという事は今後の再婚で非常に大きな障壁になりますので、まずは事前確認をする事が大切です。

在日外国大使館や領事館へのお問合せは、外務省HP-駐日外国公館リスト 目次-からご確認ください。

 

国際離婚後のビザ

国際結婚を経て「日本人の配偶者等」のビザ(在留資格)を保有することとなった外国人については、離婚した後のビザ(在留資格)が問題となります。(死別も含む)

(「永住者」や「就労資格」を保有している方は、ビザの認定条件が「日本人との結婚」ではありませんので問題となりません。)

簡単に解説しますと、離婚後6ヵ月以内に「日本人の配偶者等」を「定住者」もしくは「就労資格」に変更しなければなりません。

詳しくは、在留資格変更のページで紹介しておりますのでご確認ください。

 

国際離婚後の子供の親権

国際結婚をしたものの離婚してしまった場合、子供をどちらが引き取るかという親権が問題になることが多くあります。

日本人同士の離婚であった場合は、基本的には協議によって、また協議が難しい場合は調停や裁判によって、夫婦のどちらか一方を親権者に決めます。(日本の法律に基づいた方式)

このように日本では離婚後は単独親権と決められるのに対して、一方、外国の法律では離婚後も共同親権と定められている国も多々あります。

そこで日本人と外国人の間に生まれた子供の親権については、どの国の法律に基づいて決められるか、つまり国際私法を確認しなければなりません。

日本の国際私法では、下記のように定められています。

親子間の法律関係は、子の本国法が父又は母の本国法(父母の一方が死亡し、又は知れない場合にあっては、他の一方の本国法)と同一である場合には子の本国法により、その他の場合には子の常居所地法による。

要するにほとんどの場合は子どもが有する国籍の国の法律に従い、両親の国籍と子供の国籍が異なる場合は子供が住んでいる国の法律に従うとされています。

 

離婚後の子供の連れ去りについて(ハーグ条約)

日本人夫婦であれば、「実家に帰らせていただきます」と書置きをして子供と妻が居なくなったという風景は思い浮かぶと思います。子供にとって急に他県へ移ることとなっても、友達と別れる事は寂しいですが、新しい環境に適応していくでしょう。

しかし外国人と日本人の国際結婚の場合はそうはいきません。

離婚によって一方の親の勝手な判断で子供の意思も関係なく、海外から日本へまたは日本から海外へ連れていく事は、その国の言葉もわからない子供の成長に有害だと考えらえます。

このような国際離婚による子の連れ去りについて、複数の国家間で制限とルールを決めるハーグ条約があります。日本は遅れていましたが、2013年にやっと締結しました。

世界のハーグ条約加盟国については、外務省HP-【参考資料】「外国公文書の認証を不要とする条約(ハーグ条約)」の締約国(地域)-をご確認ください。

ハーグ条約のシステムは、子供が連れ去られた側と連れ去った側が条約締結国でなければ機能しません。

システムの流れとしては下記の通りです。

1.不法な子の連れ去りが発生した場合に、被害を受けた方が自国の中央当局もしくは子が連れ去られた国の中央当局に申請します。
  • 不法な連れ去りとは、監護権(≒親権)が侵害された場合であり、監護権を有していない方からの連れ去りは不法ではありません。
  • 日本なら外務省が中央当局にあたります。
  • 申請内容は子の返還に関する援助の申請と、子との面会交流に関する援助の申請の2つがあります。
2.連れ去られた側(自国)の国の中央当局と連れ去った側の国(相手国)の中央当局が、互いに調整しながら申請者を支援します。
3.最終的には、相手国の裁判所に申し立てをし、裁判所が内容を審査し返還するか拒否するか判断します。
  • 審査の考え方は、下記の【返還事由】に合致すれば子供が元々生活していた国に返還する事が原則だが、【返還拒否事由】に該当すれば拒否することもあるという考えです。

【返還事由】

  • 子供が16歳未満
  • 子供が元々住んでいた国の法律において不法な連れ去りである事。(監護権(≒親権)が侵害された場合であり、監護権を有していない方からの連れ去りは不法ではありません。)
  • 子供が元々住んでいた国がハーグ条約締約国であったこと

【返還拒否事由】

  • 子供の連れ去り後1年以上経過した後に裁判所に申立てがされ、かつ、子が新たな環境に適応している場合
  • 申立人が子供の連れ去りがあった時に監護の権利を行使していなかった場合
  • 申立人が子供の連れ去りの前に同意し、または事後に承諾した場合
  • 子供を元々住んでいた場所に返還することによって、子供の心身に悪影響を及ぼす場合
  • 子供の年齢と発達の程度に照らして子の意見を考慮することが適当である場合において、子供が返還されることを拒んでいる場合
  • 子供を返還することが人権及び基本的自由の保護に関する基本原則により認められない場合

 

子供の連れ去った場合の処罰

日本から外国人が母国に子供を連れ去った場合や、外国から日本人が日本に子供を連れ去った場合は処罰される可能性があります。

この処罰はハーグ条約とは関係がありません。ハーグ条約は連れ去られた子供を返還すべきかどうかである民事上の問題のみであり、直接刑罰を与えるものではありません。

しかしハーグ条約とは関係なく、国によっては子供の連れ去りについて刑事上の処罰を定めている国もあります。

外国から日本へ日本人が子供を連れ去った場合、例えばアメリカ・カナダ・イギリス等では、実子でも誘拐罪として刑事上処罰が与えられるとされており、日本人にも事例があります。中にはFBIの国際指名手配犯に挙げられる場合や、数億円という賠償金を請求され、または10年の禁固刑に処される場合もあります。

また外国人が日本から子供を連れ去った場合でも、日本では基本的には子供の連れ去りは犯罪ではないという立場でありつつも、未成年略取として有罪となった事例があります。

 

国際離婚後の苗字

日本人夫婦の離婚の場合は、原則は旧姓に戻ります。そして結婚していた当時の苗字を使いたい場合は3ヵ月以内にその旨の申請をする必要があります。

では外国人と日本人の国際結婚の場合はどうなるでしょうか?

国際結婚においては、日本人同士の結婚と異なり夫婦別姓が認められています。

その点で、離婚後の苗字についても下記のような違いがあります。

 

夫婦の苗字

外国人と日本人の国際結婚の場合は、日本人同士の結婚とは全く異なり、原則は結婚していた当時の苗字のままです。

そして旧姓に戻りたい場合に3ヵ月以内にその旨の申請をする必要があります。

3ヵ月を超えてしまった場合は家庭裁判所の許可が必要となってしまい、手続きも多くなってしまいます。

日本人夫婦と異なり、国際結婚の場合には夫婦別姓が認められているのでこのような違いがあるのでしょう。

 

子供の苗字

国際結婚の国籍・戸籍・苗字-国際結婚と苗字-において、国際結婚をした夫婦に生まれた子供は夫婦どちらの苗字を持つことになるかについて解説しました。

もう一度簡単に解説しますと、国際結婚中の子供の苗字のパターンは下記の通りです。

夫婦同姓の場合(日本人が外国姓を名乗っている)
  • 子供は日本人と同一戸籍に入り、外国姓を名乗ります。(①)
夫婦別姓の場合
  • 子供は日本人親の戸籍に入り、日本姓を名乗ります。(②)
  • 氏の変更届を提出することによって外国姓を名乗ることも可能であり、その場合は子の単独戸籍が作られる。(③)

それぞれの場合に離婚した後の苗字はどうなるでしょうか?

①の場合
  • 親権に関わらず、離婚してもそのまま日本人親の戸籍に入り、親と同じく外国姓を名乗ります。
  • 親と子供の苗字を日本姓に変更したい場合は、親が「氏変更の届出」を提出する際に、子の戸籍を親に入籍させる「同籍する旨の入籍届」を提出します。 要するに、親が日本姓に変更する届けを出した時に、戸籍も新しく作り替えられ、そこの子供の戸籍を入籍させるという考え方です。 そうすれば子供は自動的に親の日本姓を名乗ります
②の場合
  • そのまま子供は日本姓を名乗ります。
  • 離婚後に子供の苗字を外国姓に変更したい場合は、家庭裁判所に「子の氏変更許可申立」をすることになります。
③の場合
  • そのまま子供は外国姓を名乗ります。
  • 変更する場合は子の戸籍を親に入籍させる「同籍する旨の入籍届」を提出します。
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