「国際結婚の場合はどの国の法律に従うの?」
「国際私法とはどんなもの?」
このような疑問を解消するために、国際結婚にまつわる法律問題・国際私法について少し知っていきましょう。
この記事では、国際結婚にまつわる法律に関する4つの基本について解説します。その4つの基本とは下記のとおりとなっていますので、興味のある方はこのまま読み進めてください。
- 国際私法とは
- 婚姻の成立に関する法律
- 婚姻の方式に関する法律
- 婚姻の効力に関する法律
国際私法とは
日本人同士が日本で結婚する場合は、お二人の結婚は日本の法律にのみに従います。しかし外国が関係する結婚の場合は、全て日本の法律に従うわけにはいきません。
外国が関係する結婚とは例えば下記のような場合があります。
- 日本人同士が外国で結婚する
- 日本人と外国人が日本で結婚する
- 日本人と外国人が外国で結婚する
- 外国人同士が日本で結婚する
そして外国が関係する場合は、どちらの法律に基づくべきなのかという議論が発生します。
例えば20歳の男性と17歳の女性が両方とも日本人であった場合は結婚することが可能です。では、20歳の日本人男性と17歳の外国人女性が恋に落ち、結婚しようとした場合、果たして結婚できるのでしょうか?
法律の話をしますと、日本では女性は16歳から結婚できます。一方、外国の法律では18歳から結婚できると規定されている場合があります。
この場合はどちらの法律に従えばよいでしょうか。
このように、ある出来事に対して単純に国内法のみで解決できない場合は、諸外国の法律と抵触しないように各国で国際私法というものを定めています。日本では国際私法のうちの一つとして「法の適用に関する通則法」というものを定めており、文字通りどんな場合にどの法律を適用すればよいかを定めています。
そして結婚に関する諸外国や日本の国際私法は、国によって内容が異なりますが、おおむね次のような2つのパターンがあります。
- ~については、本国法による
- ~については、婚姻挙行地法による
本国法とは、その者が有する国籍の国の法律の事です。例えば対象となる方が日本国籍を有する者(日本人)なら日本の法律、アメリカ国籍を有する者(アメリカ人)ならアメリカの法律に従わなければなりません。
また、婚姻挙行地法とは婚姻する国の事です。日本人とアメリカ人がイギリスで結婚するなら、イギリスの法律に従わなければなりません。
ここで国際私法についての考え方を理解していただくためにも、日本人男性と中国人女性が日本で結婚する場合について一つの例を紹介したいと思います。
まず日本の国際私法には「結婚の成立については各当事者の本国法による」と規定されています。これは日本人男性については日本の法律を、中国人女性については中国の法律を適用するという意味です。
次に中国の国際私法を確認すると、「婚姻の成立については婚姻挙行地法による」と規定されています。従って、この場合は日本で結婚するので、結局は男性についても女性についても日本の法律に従えばよいこととなります。
なお「あちらの国の法律に従うものとする → やはりそちらの国の法律に従うものとする」と返ってくるような事を「反致」といいます。
このように、国際私法とはどの国の法律に従うべきかを各国が定めている法律という事です。
そして結婚(=婚姻)に関して下記の区分について国際私法が定められています。
- 婚姻の成立
- 婚姻の方式
- 婚姻の効力
以下、日本人と外国人の日本で結婚する場合の法律関係について解説します。
婚姻の成立に関する法律
国際結婚の成立について下記のような日本の国際私法の規定があります。
- 「婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による」
さらに海外の国際私法を確認してみます。
- A国:「婚姻挙行地の法律による」
- B国:「本国法による」
ほとんどがこの2パターンとなっています。
そして日本で日本人とA国の外国人が結婚する場合なら、婚姻挙行地が日本なので、婚姻の成立については全て日本の法律に従うという事になります。
一方B国の外国人の場合の婚姻の成立については、日本人には日本の法律を、外国人には外国の法律を適用することになります。
婚姻挙行地方主義を採用している国は、下記の通りです。
上記以外の国は「本国法による」とされる場合がほとんどであり、日本で日本人と韓国人が結婚する場合は、日本人には日本の法律を適用させ、韓国人には韓国の法律を適用することとなります。
ここで、日本法と韓国法の婚姻の成立に関する法律を見てみましょう。
日本法 | 韓国法 | |
婚姻年齢 | 男性18歳以上
女性16歳以上 |
男性18歳以上
女性18才以上 |
父母の同意 | 未成年の婚姻は父または母の同意が必要
(成人年齢は20歳) |
未成年の婚姻は父または母の同意が必要
(成人年齢は19歳) |
重婚 | 重婚禁止 | 重婚禁止 |
近親婚 | 従兄妹との結婚が可能 | 従兄妹との結婚が不可能 |
再婚禁止期間 | 離婚後6ヵ月 | 規定なし |
このとおり日本人は日本法、韓国人は韓国法に従うので、20歳の日本人と17歳の韓国人が日本で結婚することは当然できません。
では、日本人男性と離婚後3ヵ月の韓国人女性とが結婚する場合は、韓国法には再婚禁止期間の規定がありませんが、可能でしょうか?
これについては国際私法の一方的要件と双方的要件を理解しなければなりません。一方的要件とは一方だけの法律を満たせばよいという事であり、双方的要件とは双方の法律を満たさなければならないという意味です。
そして日本では重婚・近親婚・再婚禁止期間については双方的要件としています。従って、再婚禁止期間について韓国法に規定が無くても、日本で結婚する場合は日本の再婚禁止期間が追加的に適用されてしまうということになります。
従って離婚直後の韓国人女性は日本で結婚する事は出来ません。
なお、この二人が韓国で結婚することについては問題ありません。
また、イタリアでは300日間の再婚禁止期間が定められており日本よりも厳しい条件の国ですが、日本で日本人とイタリア人女性が結婚する場合は、双方的要件に従って300日の再婚禁止期間が適用されます。
ちなみに婚姻年齢については一方的要件とされていますので、もし相手国の法律で10歳から結婚できるとあれば、日本人と10歳の外国人が結婚できることになります。
婚姻の方式に関する法律
婚姻の方式とは形式的な婚姻の成立要件のことです。
前述した婚姻の成立とは婚姻の実質的な成立要件で、年齢や重婚などのようにその方が結婚できる条件が備わっているか否かの成立要件ですが、形式的な成立要件とはどのような手続きによって婚姻が成立するかということ意味します。
そして日本の婚姻の方式は、婚姻届けを提出することと規定されています。一方他の国では結婚の登録や登記が必要であったり、儀式が必要な場合もありますので、やはり国によって異なる方式が存在します。
この婚姻の方式についても、日本の国際私法と外国の国際私法を確認して、どの法律が適用されるかを理解しなければなりません。
まず日本の国際私法には下記のようなに規定されています。
つまり整理しますと、下記の事が言えます。
- 日本で日本人と外国人が結婚する場合
-
- 「日本法によらなければならない」
- 外国で日本人と外国人が結婚する場合
-
- 「外国法または日本法による。」
- つまり外国の国際私法においても「当事者の一方の本国法が有効」と規定されていれば日本法によることも可能であり、「婚姻挙行地による」としか規定されていなかったらその外国法に従わなければならない。
- 日本で外国人と外国人が結婚する場合
-
- 「外国法または日本法による。」
- つまり外国の国際私法においても「当事者の本国法が有効」と規定されていれば外国法によることも可能であり、「婚姻挙行地による」としか規定されていなかったらその日本法に従わなければならない。
ただし、日本人が外国の方式によって婚姻する場合は、住居地の市区町村へ報告することが必要です。
婚姻の効力に関する法律
婚姻の効力とは婚姻の成立後に発生する効果の事で、日本法では下記の効果が定められています。
- 夫婦同姓
- 夫婦は同居し互いに協力し扶助する義務がある
- 未成年が結婚すれば私法上は成年とみなす(成年擬制)
- 夫婦間での契約はいつでも一方から取り消すことが出来る
- 夫婦間での財産についての決まり事(夫婦財産制)
成年擬制とは結婚によって未成年者を成年とみなすということです。(私法上のみ)
20歳未満の未成年は契約などの行為について親の同意が必要であるように、未成年の行為は法律上制限されております。しかし未成年でも結婚することによって親の同意等が不要になり、自由に契約できるようになります。但しこれは私法上(一般人と一般人の契約など)の話であって、選挙権や刑法などの公法上は成年とみなされません。
また夫婦財産制とは、夫婦の財産はどちらの所有物にあたるものかを法律上決めるものです。普段夫婦で生活していると、財産に関しては曖昧に共有していることが多いと思いますが、離婚時などにトラブルが発生する場合もあるので法律上は規定されています。
例えば日本法では、夫婦の財産について夫婦財産契約があればそれに従います。そして夫婦財産契約がない場合は、夫婦一方の名義で取得した物の所有者はその名義人であり、どちらの所有物か分からない物や分担とすべき物は共有となるという規定がされています。
日本の法律上は婚姻によってこのような効果が発生します。
しかしその前に、国際結婚の場合はそもそも日本の法律に従ってよいかどうかを考えなければなりません。では、国際私法を確認してみましょう。
本国法とは前述したとおり、その人の国籍の国のことです。韓国人同士が日本で結婚した場合には韓国法が適用されるという意味です。
常居所地とは住んでいる場所、密接な関係がある地とは今は住んでいないが長く住んでいた場所とだけこの段階ではお考えください。どれくらいの期間を住めば常居所地や最密接地と認められるかについては少々複雑なテーマなのでここでは省略します。
例えば成年擬制については日本法では規定されていますが、規定されていない国もあり、どちらの法律に準拠するべきかを考えなければなりません。
また夫婦財産制についても日本と他の国の法律では異なる規定がされている場合もあるので、これも同様にどの法律に準拠すべきなのかについて注意する必要があります。但し、夫婦財産契約をする場合はある程度自由に決めることが出来るので、常居所地に関わらず、「この法律に従う」という決めごとをすることも可能です。
まとめ
これまで、国際結婚にまつわる法律に関する4つの基本について解説しました。
他の国が絡む国際法務と呼ばれる問題は、単なる国内法律問題より難しい面が多くあります。単なる国内法律問題であれば、確立された日本の法律に従い、判例を参照し解決に導く流れとなります。しかし国際法務の場合はその前段階として、どの国の法律に準拠すべきなのか、またそれぞれの法律に抵触はないかなどについて検討をしなければなりません。
そしてアメリカやイギリス等の先進国であれば、ある程度の明確な国際私法が存在しますが、発展途上国となるとそうはいかないことも多々あります。
国際法務に関わる問題に直面した場合は、まずは専門家への相談をお勧めします。
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