この記事では教育ビザを取得するための条件である「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」について解説します。
「在留資格該当性」と「上陸許可基準」については、在留資格認定証明書や在留期間更新の一般要件をご確認ください。
外国人が取得したい在留資格が本当に取得できるのか否か、また要件に適合せずに取得できない場合は、日本での在留を諦めるのではなく他の在留資格の要件に適合するか否か、これらを考える上で実務上はまずこの「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」を正確に把握して検討を進めなければなりません。
教育ビザについて法で定められた「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」の解説に進めます。
教育ビザの「在留資格該当性」
まず入管法別表第1の2に定める法文は下記の通りです。
本邦の小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、専修学校又は各種学校若しくは設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関において語学教育その他の教育をする活動
法文の整理
入管法の定める教育ビザの活動内容のポイントは、下記に示す①教育機関において、②一定の教育内容について教育をする活動です。
①教育機関
- 小学校
- 中学校
- 義務教育学校
- 高等学校
- 中等教育学校
- 特別支援学校
- 専修学校
- 各種学校若しくは設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関
②教育内容
- 語学教育
- その他教育
用語の定義・解説
では「各種学校若しくは設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関」とは何か、「その他教育」とは具体的にどのようなものが含まれるかなど、法文を見ても分かりにくいと感じる方が多いと思います。これらについて詳しく解説を進めていきたいと思います。
「教育機関において」とは
「教育機関において」とは場所的なものを意味しているのではなく、「教育機関と雇用契約関係がある場合において」という事を意味します。つまり、教育機関に所属する教育者が、契約している教育機関の指示によって一般企業に派遣されて教育をする活動は教育ビザが該当します。
逆に、一般企業に雇われており当該企業の指示によって教育機関でセミナー等の教育活動に従事する場合は教育ビザには該当せず、技術・人文知識・国際業務ビザが該当します。
教育機関に含まれるその他の機関
外国大学の日本分校
下記の教育機関のみについて教育ビザが認められます。
- ミネソタ州立大学機構秋田校(専門課程)
- サザン・イリノイ・ユニバーシティー新潟校(専門課程)
- ニューヨーク州立大学SUNY - SCCC(専門課程)
- ニューヨーク市立大学広島校(専門課程)
上記以外の外国大学日本分校の教員については技術・人文知識・国際業務ビザが該当します。
インターナショナルスクール
インターナショナルスクールの形態
インターナショナルスクールには2つの形態があります。
まず1つは、日本に生活する外国人の子供を対象に教育を施す事を目的として設立されたインターナショナルスクールです。この形態のインターナショナルスクールは、様々な国籍の生徒が在籍するので一目見てインターナショナルスクールだとわかります。
また教育課程としては、幼稚園(保育園)、小学校、中学校、高等学校まであります。幼稚園や保育園については、インタナショナルスクールとは呼ばずにプリスクールと呼んで区別したり、インターナショナル幼稚園、インターナショナル保育園と呼ぶこともあります。
インターナショナルスクールについて学校教育法上の定義はありませんが、文部科学省での見解は、「主に英語により授業が行われ、外国人児童生徒とする教育施設」が一般的なインターナショナルスクールとしております。
2つ目は、日本人を対象とした幼稚園や保育園において英語教育に力を入れている機関です。
近年は非常に増えている形態であり、インターナショナルスクールと聞いてこちらをイメージする方も多いと思います。
インターナショナルスクールの教員に認められるビザ
上記の1つ目の形態である外国人生徒を対象とするインターナショナルスクールの場合は教育ビザが認められます。
この教育ビザというのは通常は小学校以上の教員のみにしか認められませんが、一定の条件をクリアしたインターナショナル幼稚園・保育園の教員についても教育ビザが認められます。
詳しい条件については上陸許可基準の項目で解説します。
次に前述した2つ目の形態である、日本人児童に英語教育を施す幼稚園・保育園としてのインターナショナルスクールですが、こちらについては教育ビザは認められません。技術・人文知識・国際業務ビザが該当することになります。
この点、技術・人文知識・国際業務ビザが認められるかどうかの判断には注意が必要です。この形態でのスクールの場合、「英語教師」なのか「幼児教育者」なのか、どちらの立場でスクールに雇用されているのかが重要です。
「幼児教育者」の立場で教育活動に従事している場合は、大学の専攻や実務経験が幼児教育に関連するものでなければなりません。幼児教育関連の専攻卒業者は稀だと思いますので、これに該当する方はあまりいないと思います。
次に「英語教師」の立場で教育活動に従事している場合は、一日の業務の中で、英語教師としての活動が大半を占めていなければなりません。英語のレッスンが1日に1~2時間程度で、他の時間は園児のお世話をしたり他の科目のレッスンを担当するような場合はまず認められないでしょう。但し、身の回りのお世話や他の科目も全て英語を使用しているような場合、つまり一日通してすべて英語で園児と接し、かつ、当該幼稚園の教育方針が、英語レッスンだけではなく生活面すべてを通して自然に英語を身につけさせるようなものの場合は認められる可能性が高いと考えられます。
「設備及び編制に関して各種学校に準ずる教育機関」の定義
設備及び編制の観点から、おおむね各種学校規程に適合する教育機関を意味します。
具体的にどの教育機関が該当するかについては、留学告示(法務省HP―出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令の留学の在留資格に係る基準の規定に基づき日本語教育機関等を定める件)の別表第5に定められています。
「その他の教育」とは
語学教育だけが対象となるのではなく、数学や算数、社会、体育など、幅広く対象となることを意味しています。
他のビザとの境界
教育ビザとの区別が紛らわしいビザは主に教授ビザと技術・人文知識・国際業務ビザです。
「教育」と「教授」
教授ビザは大学・大学院・短期大学・高等専門学校との契約に基づいて教育活動や研究活動に従事する場合に認められるビザです。
教育ビザは小学校から高等学校・専修学校(専門学校)との契約に基づいて教育活動に従事する場合に認められます。
「教育」と「技術・人文知識・国際業務」
特に教育ビザと技術・人文知識・国際業務ビザの区別には注意が必要です。
まず基本的な考え方としては、教育ビザは、学校教育法に定められた小学校~高等学校・専修学校(専門学校)との契約に基づいて教育に従事することで、前述したとおり教育をする場所は関係ありません。契約する教育機関から指示を受けて、別の場所で教育を施す活動も教育ビザに該当します。
一方、一般企業との契約で教育を施す活動が技術・人文知識・国際業務ビザに該当します。英会話スクールの英語教師などが代表的な例です。
上記が基本的な考えですが、ほかにも紛らわしい点があります。
これも全て前述しておりますが、整理すると下記のとおりです。
- 外国大学の日本分校は、学校によって教育ビザか技術・人文知識・国際業務ビザが変わる
- インターナショナルスクールは、外国籍の児童向けのものなら教育ビザ、日本人児童向けなら技術・人文知識・国際業務ビザが該当する。
教育ビザの「上陸許可基準適合性」
教育ビザの上陸許可基準について、基準省令の1号~2号について、それぞれに分けて解説します。
基準省令第1号
基準省令第1号に定められている法文は下記の通りです。
一 申請人が各種学校若しくは設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関において教育をする活動に従事する場合又はこれら以外の教育機関において教員以外の職について教育をする活動に従事する場合は、次のいずれにも該当していること。ただし、申請人が各種学校又は設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関であって、法別表第一の一の表の外交若しくは公用の在留資格又は四の表の家族滞在の在留資格をもって在留する子女に対して、初等教育又は中等教育を外国語により施すことを目的として設立された教育機関において教育をする活動に従事する場合は、イに該当すること。
イ 次のいずれかに該当していること。
(1) 大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと。
(2) 行おうとする教育に必要な技術又は知識に係る科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと。
(3) 行おうとする教育に係る免許を有していること。
ロ 外国語の教育をしようとする場合は当該外国語により十二年以上の教育を受けていること、それ以外の科目の教育をしようとする場合は教育機関において当該科目の教育について五年以上従事した実務経験を有していること。
法文の整理
基準省令第1号の適用対象は下記の2点です。そして1.2.に該当する方はイロの要件を満たす必要があり、3.に該当する方はイに該当する必要があります。
- 各種学校・設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関において、教育活動に従事する場合
- 小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校又は専修学校において、教員補助等の教員以外の職に就いて教育活動に従事する場合
- 外国籍の園児・児童向けのインターナショナルスクールにおいて教育活動に従事する場合
2.について、教員になるためには一定の免許・資格が必要(教育職員免許法等)なので、当該免許を有するか否かが判断基準となります。但し、非常勤講師にあたっては、免許を有していなくても教育委員会への届出をもって基準省令第1号上の教員に含まれます。
用語の定義
「各種学校若しくは設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関」とは
在留資格該当性の項目をご確認ください。
「教員以外の職」とは
教育職員免許法第2条第1項に定められている「教育職員」以外の教育を行う職員を意味します。
「教育職員」とは、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校における、主幹教諭、指導教諭、教諭、助教諭、養護教諭、養護助教諭、栄養教諭及び講師を意味します。
「大学を卒業し」とは
日本の大学だけではなく、海外の大学を卒業した場合も含みます。
一方イ(2)の場合は「本邦の」とありますので、日本の専修学校専門課程を卒業しなければなりません。
「免許」とは
日本の教員免許だけではなく、海外の免許も含みます。
「当該外国語により12年以上の教育を受けていること」とは
中国語の教師に従事する場合は、その者が中国語を使用言語とした授業を12年間以上受けていることが必要です。
基準省令第2号
基準省令第2号に定められている法文は下記の通りです。
二 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
用語の定義
では、「報酬」とは通勤手当などは含まれるのか、「日本人~と同等額以上」とはどの程度の範囲まで許されるのかなど、用語の定義についての解説に進みます。
「報酬」とは
ここでいう「報酬」は、役務の給付の対価であり、通勤手当・住宅手当などの実費弁償は含みません。また、扶養手当についても被扶養者の有無による審査上の不平等を生じさせないため、「報酬」に含めないこととされています。
また退職金・結婚祝金・見舞金・現物給付としての住宅・食事等・制服・旅費等については、その実質が見舞金・恩恵的・福利厚生的なものは「報酬」に含まれませんが、労働協約・就業規則・労働契約等で支給条件が明らかなものは「報酬」に含まれます。
「日本人~と同等額以上」とは
基本的には申請人が契約する個々の企業に在する日本人であって同等の地位の者と比較されます。
当該企業に日本人居ない場合は、同種の職種の他の企業に在する同等の地位の日本人と比べ同等であるかで判断されます。
例えば、日本人大卒者の新入社員給与と外国人大卒者の新入社員給与を比較し、同等かどうかという事が審査されることになります。
留意点
在留資格認定証明書交付申請の際に、雇用契約書や在職証明書等を提出し、申請人が受ける予定の報酬額が入国管理局に把握されることになります。
その後の在留期間更新許可申請の際に、納税証明書、源泉徴収票、給与明細書等を提出した際に、当初の報酬予定額と実際に得た報酬額に相違が確認されれば、虚偽申請として疑義が生じます。
従って、下記の「報酬」の定義に解説する「報酬」の範囲をしっかりと理解し、通勤手当などの実費は含まないようにしてください。