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2015年12月に国家戦略特区法が改正され、今春から大阪と神奈川で外国人家事労働の受け入れが可能となりました。

外国人家政婦が始まると話題になっていものの、あまり詳しいことが分からなかったので、自分なりにいろいろ調べてみました。

まだ始まったばかりなので、不明な点もありますが、法律に基づいて解釈しています。

外国人家政婦に関する最新の記事は、事業者向け-ゼロから始める外国人家政婦(家事代行・家事支援)をご確認ください。

外国人の家事代行とは

国家戦略特区法上では今回の外国人家政婦の受入に関して国家戦略特別区域家事支援外国人受入事業と名称をつけています。

そして、国家戦略特別区域家事支援外国人受入事業とは、法文から引用すると、

国家戦略特別区域内において家事支援活動を行う外国人を、本邦の公私の機関が雇用契約に基づいて受け入れる事業をいう。

としています。

さらに法文中では、家事支援活動の内容、家事支援活動が出来る外国人の要件、雇用機関の基準についても規定しています。

外国人ができる家事代行の内容とは

外国人ができる家事代行の内容は、基本的に一般家庭がしている家事が出来るとされています。(炊事・洗濯・掃除・買物・子育て・その他日常生活に必要な行為)

ソースは国家戦略特区法から「家事支援活動とは、炊事、洗濯その他の家事を代行し、又は補助する業務で政令で定めるものに従事する活動」と記載しており、さらに政令には下記のように記載しています。

次に掲げる家事を代行し、又は補助をする業務とする。
一  炊事
二  洗濯
三  掃除
四  買物
五  児童の日常生活上の世話及び必要な保護(前各号又は次号に掲げるものと併せて実施されるものに限る。)
六  前各号に掲げるもののほか、家庭において日常生活を営むのに必要な行為

つまり、一般家事はしてもらってもよいが、仕事の手伝い等はダメという事だと思います。

家事代行を頼んでいるユーザーからしてみると、色んなことを頼みたいというのが現実ですが、日本に在留する外国人にとって決められた活動内容以外を許可なくする事というのは法律違反となります。

外国人とその雇い主にとっては、決められた活動以外をする事は後々非常に困ることになります。(強制送還という可能性も無きにしも非ず・・・)

外国人家政婦がどこまでできるかというのが今後難しい問題になるだろうと私は考えています。

要するに上記の施行令からは読み取れない業務内容も考え出せば結構ありますが、どこまで出来るのでしょうかという事です。

例えば、子供の学校の送り迎えはどうなのか? 五号に規定されていますが、日常生活の定義が分からないし、他の各号と併せて実施されるものではないと考えられます。

疲れたからマッサージしてほしいというのはどうなのか? 六号では日常生活を営むのに必要な行為と規定されていますが、必要というわけではないので、これは依頼できないのでしょうか・・・

では、親の介護を手伝ってもらうのは? 同居する介護が必要な方にとっては日常生活を営むのに必ず必要な事だと考えられますが、果たして認められるのでしょうか。

今後これらのような業務範囲の問題は必ず発生すると思われます。

どんな外国人が家事代行できるの?

国家戦略特区法では「年齢、家事の代行又は補助に関する職歴その他の政令で定める要件を満たすものに限る」と規定しており、政令の内容は長いので下記に簡潔にまとめます。

  • 年齢が満十八歳以上
  • 家事代行に関する実務経験が1年以上
  • 家事代行に必要な知識と技能を有する
  • 家事代行に必要な日本語能力を有する

要するに、日常生活で家事を完璧にできても、仕事として家事代行業務に携わってなかったり、日本語が出来なかった場合は認められないという事です。

また、外国人が単独で家事代行をするために日本に入国することはできません。

国家戦略特区法上は、特定の機関に雇用される外国人のみを対象としています。

ではその特定の機関には誰がなれるのでしょうか。

外国人家政婦を雇用する特定の機関とは

国家戦略特区法では「第三項に規定する指針に照らして必要な措置を講じていることその他の家事支援活動を行う外国人の受入れを適正かつ確実に行うために必要なものとして政令で定める基準に適合するものに限る。」と規定しており、第三項に規定する指針は、首相官邸HPから-国家戦略特別区域家事支援外国人受入事業における特定機関に関する指針(PDF)-に公開されています。

指針を簡潔にまとめると、適正な活動を提供して、法律を遵守し、一定の報告をし、監査を受け入れなさいという事などが書かれています。

さらに政令も簡潔にまとめると、

  • 上記の指針に照らし、措置を講じていること
  • 事業を遂行するための経済的・能力的に充分であること
  • 日本において家事代行事業を三年以上している者
  • (その他暴力団や法律違反者等が除外されています。)

要するに、新規参入者や海外での家事代行事業者がいきなり日本で外国人家政婦事業を展開する事はできないという事です。

外国人家政婦に与えられる在留資格について

よくネットニュースのトピックで、「在留資格なしで外国人家政婦を認める」と書かれていますが、それは誤りで、ちゃんと「特定活動」という在留資格が与えられます。

在留資格がないという事は不法滞在者です。

在留資格とは、日本に滞在するために必要な資格であり、在留資格によって活動内容が決められています。

「特定活動」の在留資格は従来からも存在し、これまでも下記の外国人などに付与されてきました。

  • 外交官等の家事使用人
  • ワーキング・ホリデー
  • ボランティア

そしてその特定活動の活動内容は、「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」とされており、今回の改正により、法務大臣が家事労働という活動を指定できる事になったと考えてよいでしょう。

なお、在留期間は5年を超えない範囲で法務大臣が個々の外国人に指定することになってますが、初めのうちは短い期間が与えられると思います。

家政婦ビザって何?

これまでも外国人の家政婦はあった

今回の改正前から外国人の家事代行業などが存在しますが、それと今回の外国人家政婦受入事業は全く違います。

従来から外国人が家事代行として働いていますが、その外国人とは、下記の場合などです。

外交官等の家事使用人

<dd”>外交官や一定の経営者などは外国人の家事使用人を雇うことが許されています。「日本人の配偶者等」の在留資格保有者がするアルバイト日本人配偶者は活動内容に制限がなく、アルバイトの選択の一つとして家事代行業を選ぶことが出来ます。「留学」の在留資格保有者がするアルバイト留学生は本来働くことはできませんが、資格外活動許可を得て、アルバイトをすることが出来ます。

それに対し、今回の国家戦略特区法での外国人家政婦受入事業では、日本で家事代行をする事を目的として外国人を日本に受け入れる事です。

つまり、今後は従来から存在する日本人配偶者の外国人家政婦と「特定活動」の外国人家政婦が共存することとなります。

従来の外国人家政婦と今後の外国人家政婦の違い

上記でも述べたように、従来も外国人家政婦は存在していました。

そして今後は、国家戦略特区法に定められた、家事代行を主目的とした外国人家政婦が増えていくと思われます。

ひとつ注意しなければならない点は、国家戦略特区法に定められた基準・指針・家事の内容は、後者の国家戦略特区法の外国人家政婦のみに適用されるという事です。

つまり、今後は従来の外国人家政婦と国家戦略特区法の外国人家政婦が共存することになりますが、前者には家事代行の実務経験・日本語能力・雇用機関の基準はないということです。

外国人家政婦の必要性

外国人家政婦を受け入れる必要性はどこにあるのでしょうか?

まず現在の日本における根本的な問題は少子高齢化です。

日本の高齢化率は異常なレベルに達しており、先進国中トップです。さらにその上昇率の大きさが他の国と比較して問題視されています。

さらに子供の出生率は最低ランクです。

韓国よりはマシですが、幾つかの国が下から世界第二位の出生率を奪い合っているところです。

この高齢化率の高さと出生率の低さのダブルパンチにより、日本の少子高齢化は最悪の事態とされています。

安倍政権はこれを懸念して、今回の法改正を発案したということです。

要するに、もう日本人だけでは国の維持は難しいので外国人を活用していきたいという事です。

これまでの外国人家政婦

外国人家政婦を受けるメリットとデメリット

外国人家政婦を受けるメリットとデメリットについて出来るだけ客観的視点で考察します。

メリットやデメリットというのは、その人の立場によって変わるので、ここで記載する内容は一般ユーザーの視点に立ってという意味です。

外国人家政婦を受けるメリット

外国人家政婦を受けるメリットや賛成意見は、パッと思いつくところで下記があると思います。

  1. 家事作業から解放される
  2. 日本人家政婦より安いのではないか

1.については、お金を払って家事をしてもらうわけですから当たり前の事ですね。

でもこれは家政婦を雇うメリットであって、日本人家政婦と比べて外国人家政婦を雇うメリットではないです。

2.は皆さんが感じるメリットではないでしょうか?

でも本当に安くなるのでしょうか?

内閣の定める指針において「外国人家政婦の報酬は日本人家政婦の報酬と同等以上でなければならない」としています。

従って、従来よりも安価な価格で家政婦が雇えるという事にはならないでしょう。

外国人家政婦を受けるデメリット

逆に外国人家政婦を受けるデメリットや反対意見は、パッと思いつくところで下記があると思います。

  1. 被害を受けるかもしれない・・・
  2. そもそも家政婦を必要としていない

今回、このような外国人家政婦の受入事業が決定されましたが、一般人にとって、家主不在の時に外国人を家に入れるのは不安だという声もあるかと思います。

そこには外国人への差別という意味ではなく、日本は平和であるという事と日本人の真面目さを自負している事からくるものだと私は思います。

ただ、不安の声もあるというのは事実なので、これらの声をどのように解決していくかが、今後の国と事業者の腕の見せ所だと思います。

私自身は、これまでの法律解釈から、あまり不安視する必要もないのではないでしょうかと考えています。

つまり、国家戦略特区法を読み解くと、下記のような厳しめの基準を設けています。

  • 雇用機関が内閣の指針に基づき、適正なシステムにしなくてはいけない
  • 家事代行業の経験もない新規参入者はできない
  • 外国人家政婦にしても、家事代行業を1年以上あり、日本語もそれなりに勉強しているような真面目さはある(かもしれない・・・)

そして今回の外国人家政婦の受入事業を利用して犯罪等が発生すると、何より国が一番困ると思います。(ではなく被害者が一番困りますね・・・ 国は二番です。)

少子高齢化の中、国の対策として今回の法律改正が決定したのですから、問題が多発して支持率が下がるような事は避けたい所だと思います。

従って、指針の充実や雇用機関の監査をしっかりしてくれるという意味で、1の被害に関する不安は少し和らぐのではないでしょうか。

2.については、これを言うと元も子もないですが、家事を好きな方は別として家事業から解放されるのは非常にメリットがあると思います。

「家政婦が必要ない」という意見の行間を読むと、おそらく「お金を払ってまで家政婦を雇う必要はない」ということなのでしょう。

ちなみに海外転勤者等は家の清掃・洗濯代行を利用している人は多々います。

人それぞれ、価格と忙しさの事情によるということですね。

外国人家政婦の今後の課題

外国人家政婦の今後の課題と展望について述べていきます。

あくまで私見なのでそこはご理解ください。

まず、今回の国家戦略特区法改正による外国人家政婦受入制度は今後間違いなく悪用されると思います。

例えば、家政婦として外国人を雇い入れて、性風俗産業で働かす事などがあります。

これについては、従来からも留学生などが性風俗産業で働く事例も多々あるので、新しい悪用の形ではないですが、悪用の手段が一つ増えたという事ですね。

今後取り締まりをしていく必要があると思います。

次に、外国人家政婦から被害を受ける者も出る可能性はゼロではないですね。

人が関わる時点で日本人と外国人に関係なく、可能性をゼロにすることは出来ないですが、事業者と国が限りなく可能性をゼロにする努力と、そうなるシステム作りが必要です。

外国人家政婦のメリット

私見

私見といいつつ、これまでも私見も多々混じっていますが、ここで私の意見を述べたいと思います。

ユーザーの立場で考えると、私はお金を払ってまで家政婦を雇いません。(安いのであれば、積極的に活用したいですが・・・)

しかし、日本の異常な少子高齢化を解決するためには、外国人を活用することは妥当な政策だと私は思います。

つまり、私は政策としてこの外国人受入事業には賛成ですが、ユーザーとしては当分の間は利用しないということですね。

あとは今後の展開がどうしていくかが重要だと思います。

少子高齢化の問題から、今後外国人の活用を増加する事は間違いないと思いますが、今回の家事代行がうまくいけば、次は「外国人介護士」でしょうか・・・

 

以下、国家戦略特区法から引用

(出入国管理及び難民認定法 の特例)
第十六条の三  国家戦略特別区域会議が、第八条第二項第二号に規定する特定事業として、国家戦略特別区域家事支援外国人受入事業(国家戦略特別区域内において家事支援活動(炊事、洗濯その他の家事を代行し、又は補助する業務で政令で定めるものに従事する活動をいう。以下この項において同じ。)を行う外国人(年齢、家事の代行又は補助に関する職歴その他の政令で定める要件を満たすものに限る。以下この条において同じ。)を、本邦の公私の機関(第三項に規定する指針に照らして必要な措置を講じていることその他の家事支援活動を行う外国人の受入れを適正かつ確実に行うために必要なものとして政令で定める基準に適合するものに限る。以下この項及び第三項において「特定機関」という。)が雇用契約に基づいて受け入れる事業をいう。第三項及び別表の四の三の項において同じ。)を定めた区域計画について、内閣総理大臣の認定を申請し、その認定を受けたときは、当該認定の日以後は、法務大臣は、本邦に上陸しようとする外国人から、特定家事支援活動(特定機関との雇用契約に基づいて、国家戦略特別区域内に限って行う家事支援活動をいう。以下この項及び次項において同じ。)を行うものとして、出入国管理及び難民認定法 (昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)第七条の二第一項 の申請があった場合には、当該特定家事支援活動を入管法第七条第一項第二号 に規定する入管法 別表第一の五の表の下欄に掲げる活動として法務大臣があらかじめ告示をもって定めるものに該当するものとみなして、入管法第七条の二第一項 の証明書を交付することができる。
2  外国人が前項の証明書を提出して入管法第六条第二項 の申請をした場合における入管法第七条第一項第二号 の規定の適用については、当該申請に係る特定家事支援活動を入管法 別表第一の五の表の下欄に掲げる活動として法務大臣があらかじめ告示をもって定めるものに該当するものとみなす。
3  内閣総理大臣は、国家戦略特別区域家事支援外国人受入事業に関して、受け入れる外国人に対する研修の実施及び情報の提供、関係行政機関との連携の確保その他のその適正かつ確実な実施を図るために特定機関が講ずべき措置を定めた指針(以下この条において単に「指針」という。)を作成するものとする。
4  内閣総理大臣は、指針を定めようとするときは、国家戦略特別区域諮問会議の意見を聴かなければならない。
5  内閣総理大臣は、指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
6  前二項の規定は、指針の変更について準用する。

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