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経営者ではなくとも、時には経営判断に参画する事もあり得ると考えられます。

在留資格「技能・人文知識・国際業務」や「技能」の活動内容は「本邦の公私の機関との契約に基づいて・・・業務に従事する活動」とされていますが、事業の経営に係る活動は資格外活動にあたるのでしょうか?

結論の先取り

  • 「技能」の方は資格外活動にあたります。
  • 「技術・人文知識・国際業務」の方は資格外活動ではありません。

「技能」も「技術・人文知識・国際業務」も同じように『業務に従事する活動』と規定されているにもかかわらず、経営活動をする事について、「技能」には認められず、「技術・人文知識・国際業務」には全てではないが認められています。

解説

事業の経営活動をするためには原則は在留資格「経営・管理」を有しなければなりません。

まずは在留資格「経営・管理」「技術・人文知識・国際業務」「技能」について入管法に定められた活動内容を紹介します。

経営・管理
本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動
技術・人文知識・国際業務
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動
技能
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動

 

 

つまり「経営・管理」は『経営管理に従事する活動』、「技術・人文知識・国際業務」「技能」は『業務に従事する活動』と定められています。

そしてこの入管法に定められた活動以外をする場合には、在留資格を変更するか資格外活動許可を得なければなりません。

しかし経営者ではなくとも、「技術・人文知識・国際業務」を有する役員であったり、「技能」を有する料理長などが、一定の経営判断を要するような場面に出くわすことも日常的にあると考えられます。

このような場合でも本当に在留資格変更や資格外活動許可が必要なものなのでしょうか?

在留資格「技能」

名古屋地裁平成17年2月17日判決は下記のような判事をしています。

  • 「契約」とは事業主体を雇用主とする雇用契約ないし事業主体がその目的
    を達成するために一定の事項を依頼する委託契約などが想定されている
    というべきであり、かつ、公私の機関との契約に「基づいて」との文言
    からは、自らが事業主体となって行う活動ではなく、従属的な立場で当
    該事業に従事することを要すると解されるによると、在留資格技能においては事業の経営判断を含む深津動画含まれると 考えることは困難である。
  • そうすると、在留資格「技能」においては、事業の経営判断という要素を含む活動を想定していると考えることは困難である。
  • 原告(申請者)は本件店舗を実質的に経営する傍ら、調理等の業務に携わることも予定しているとしても、在留資格「技能」が想定している活動を超える活動を企図していると判断することができる。

このように在留資格「技能」については、事業の経営判断はできないとの裁判所が答えを出しております。

これに対して在留資格「経営・管理」を有する外国人は、経営活動に加えて業務に従事することは可能です。従って例えば外国料理のコックさんが経営判断をするよう必要がある地位に至った場合には、「経営・管理」の在留資格に変更すれば、経営判断もしながら実際に調理に携わることも出来ます。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」

上記の名古屋地裁判決は、文言からすると「技術・人文知識・国際業務」にも同じことが言えます。しかし、実務上では同じようには扱っていないという事が実情です。

それは在留資格「経営・管理」にある制限が原因です。「経営・管理」は経営に携わる者全てに与えられるわけではなく、実務上は経営者と専務などのように事業規模に合わせて人数として制限されています。

しかし、例えば中小企業であって一族経営の場合は、家族の全員が経営判断に携わるという場合も考えられるし、大企業であっても役員になる方は多いものと考えられます。そのような場合に、入管側は事業の主となる者のみに「経営・管理」を付与し、残りは「技術・人文知識・国際業務」を与えるという事が多く想定されます。

そうするとやはり在留資格「技術・人文知識・国際業務」にも一定の経営判断という行為を認めざる負えません。

ただし、あくまでも経営者等の者の下で従属的に経営判断をする場合に認められるものであって、自らが主体となって経営活動を行おうとする場合には、やはり在留資格「経営・管理」が必要です。

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