執行猶予の言い渡しを受けた場合、退去強制はされませんが、上陸拒否事由には該当します。
この場合、再入国許可を受けて自ら出国して、再び日本に戻る事は可能なのでしょうか?
結論の先取り
答えは、できる です。
再入国許可時に、執行猶予中である旨を伝え、上陸拒否の特例に関する通知書を受け、それを持って出国・再入国します。
解説
上陸拒否の特例と上陸特別許可について
上陸拒否とは、入管法の定める要件に該当する外国人は日本に上陸することができないという事を意味しており、入管法第5条1項4号には「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、一年以上の懲役若しくは禁錮又はこれらに相当する刑に処せられたことのある者。」としています。そしてこの範囲は執行猶予中の者も含むとされております。
一方、退去強制とは、入管法の定める要件に該当する外国人を日本から強制的に出国させることができるという事を意味しており、入管法第24条一項4号リには「一定の犯罪を除き、一年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた者。ただし、執行猶予の言渡しを受けた者を除く。」とされています。
つまり、執行猶予の言い渡しを受けたのみの外国人の場合、日本からの出国を強制されるまではないが、一度出国したら、上陸できなくなると、法文から読めます。
しかし、時には母国に帰らなければならない特別な事情があるものです。そのような外国人に日本への再上陸を全く認めないという事は妥当ではないと考えられます。
また入管法第25条の2には、出国確認の留保について規定されており、執行猶予の言い渡しを受けたのみの外国人の場合は当然に出国が認められております。
つまり、日本で在留を継続することも認められ、出国することも認められているが、特別な事情で自ら出国したら、再び日本に戻ってこられないというのは理不尽ではないでしょうか。
そこで、入管法は上陸特別許可と上陸拒否の特例というものを定めております。
上陸特別許可とは、日本への上陸審査時に上陸拒否事由に該当する外国人に対して法務大臣が特別に上陸を許可する制度であり、入国審査管の審査→特別審理官の口頭審理→法務大臣の裁決を経てそれでも上陸できない外国人が受けることが出来ます。
また上陸拒否の特例も似ている制度ですが、再入国許可やその他一定の場合に、特別な事情を認める外国人に対して「上陸拒否事由に該当するのみをもって上陸拒否しない」という通知書を交付するものです(入管法施行規則第4条の2第2項)。この通知書をもって上陸すれば、上陸拒否事由に該当していない者が上陸する事と同様なものとなります。
そしてこの二つの制度で大きく異なるのは「ぶっつけ本番かどうか」ということです。上陸拒否の特例の場合は、再入国許可時点で通知書をもらうので、その時点で上陸拒否の特例が適用されることが判明するが、上陸特別許可は一度海外に出てその後日本に再入国する時に受ける上陸審査で適用されるかどうかという事になるので、明らかに上陸拒否の特例の方が有利です。
再入国許可を申請する際の留意点
執行猶予中の外国人が、再入国許可申請について入管側から不許可となる可能性も考えられます。
しかしそれは妥当な判断では無いと考えられます。
前述したように出国確認の留保要件には、執行猶予中の者は含まれておりません。
また、執行猶予中の外国人は「退去強制事由に該当しない」が「再入国許可はしない」という事があるとすれば、「日本に在留し続けてもよい」が「日本に戻って在留を継続してはいけない」と矛盾します。
さらに再入国の許可に関して定める入管法第26条では、「法務大臣は、日本に在留する外国人がその在留期間の満了の日以前に本邦に再び入国する意図をもつて出国しようとするときは、法務省令で定める手続により、その者の申請に基づき、再入国の許可を与えることができる。」としています。
つまり、「日本に正規に在留し」、「在留期限が切れる前に入国する」場合は再入国許可できるとしており、犯罪要件は入っていません。
但し、「できる」という文言から、一定の裁量を有すると考えられます。個人的見解としては、このような事例においては再入国許可は当然認められるものであるべきと考えていますが、法務大臣に一定の裁量がある事により、不許可となる可能性も少なからず存在します。
このような場合にはやはり「主張すべきことを主張する」という事が大切です。出国の理由に関する資料と執行猶予を受けるに至った反省文を提出し、再入国許可を得る必要性をしっかりと主張しておくべきでしょう。
補足
執行猶予中の外国人であっても、再入国許可を受けずにみなし再入国許可による出国も可能です。
しかしこのみなし再入国許可による出国の場合は、上陸拒否の特例ではなく上陸特別許可となってしまい、いわば「ぶっつけ本番」になるので、この方法は推奨できません。
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