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外国人を適正にサポートし在留許可へ向けて実務をこなすビザ専門行政書士の私としては、入管側が外国人の在留をどのように管理しているかについても理解しておきたいものです。ここでは、2017年入管内部基準に記されている、入管側の中長期在留者の在留管理について詳しく記述します。

中長期在留者の在留管理

法務大臣による在留管理

中長期在留者には在留カードが交付され、必要な情報について届出義務が課せられております。法務大臣は、これらの届出義務に加え、市区町村の住民基本台帳制度と連携して、長期在留者の在留状況を正確かつ継続的に把握しています。

法務大臣が市区町村の住民基本台帳制度と連携している理由は外国人の届出義務を軽減させる目的でもあります。

中長期在留者

法務大臣が継続的に情報を把握する対象となる中長期在留者は、入管法上の在留資格をもって日本に在留する外国人で、次に掲げる者を除いたものです。

  • 3月以下の在留期間が決定された者
  • 短期滞在ビザの者
  • 外交・公用ビザの者
  • 特定活動ビザの台湾日本関係協会職員等
  • 特定活動ビザの駐日パレスチナ総代表部職員等

なお、下記の方は中長期在留者には該当しませんが、住民基本台帳制度の対象となっています。

  • 特別永住者
  • 一時庇護のための上陸許可を受けた者
  • 仮滞在許可を受けた者
  • 出生・国籍喪失により一時的に在留することができる者

在留管理制度に係る手続

法務大臣は下記の制度によって中長期在留者の在留管理をしています。

  • 新規上陸後の住居地の届出(入管法第19条の7関係)
  • 在留資格変更等に伴う住居地の届出(入管法第19条の8関係)
  • 住居地変更の届出(入管法第19条の9関係)
  • 住居地以外の記載事項変更の届出(入管法第19条の10関係)
  • 在留カードの有効期間更新申請(入管法第19条の11関係)
  • 紛失等による在留カードの再交付申請(入管法第19条の12関係)
  • 汚損等による在留カードの再交付申請(入管法第19条の13関係)
  • 交換希望による在留カードの再交付申請(入管法第19条の13関係)
  • 在留カードの返納(入管法第19条の15関係)
  • 中長期在留者による所属機関等に関する届出(入管法第19条の16関係)
  • 所属機関による届出(入管法第19条の17関係)

在留カード

在留カードは法務大臣が中長期在留者に対して交付するものであり、下記の性質を持ちます。

  • 在留していることを証明する「証明書」
  • 在留を認める「許可書」
  • 記載事項の変更義務に伴う法務大臣の情報把握担保

在留カードの交付

新規上陸に伴う交付

在留カードを交付できる出入国港とそうでない出入国港が存在します。

在留カードを交付できる出入国港の場合は、新規上陸許可時に在留カードが交付されます。

在留カードを交付できない出入国港の場合は、中長期在留者が上陸後に市区町村へ住居地を届け出た後、当該住居地充てに簡易書留で在留カードが送付されます。

在留カードに係る申請・届出に伴う交付

中長期在留者から、下記の届出・申請があったときは、当該中長期在留者に対し、新たな在留カードを交付されます。

  • 在留カード記載事項の変更届出(住居地以外)
  • 在留カードの有効期限の更新申請
  • 紛失等による在留カードの再交付申請
  • 汚損等による在留カードの再交付申請
在留資格変更許可等に伴う交付

下記の許可に伴い、中長期在留者に対して在留カードを交付されます。

  • 在留資格の変更許可
  • 在留期間の更新許可
  • 永住許可
  • 在留資格の取得許可
  • 在留特別許可

在留カードの記載事項

在留カードには、基本的身分事項として下記の事項が記載されます。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 性別
  • 国籍・地域
  • 住居地
  • 在留資格
  • 在留期間
  • 在留期限
  • 許可の種類
  • 在留カードの番号
  • 就労制限の有無
  • 資格外活動許可を受けている旨
  • 写真
  • 在留カードの有効期間

これらに変更を生じたときは、中長期在留者は記載事項の変更届出をしなければなりません。それによって新たな在留カードが交付されます。

氏名について
基本

ローマ字大文字で表記され、パスポートの氏名と同一の表記となります。

なお、在留資格取得許可申請の場合はパスポートの提示が不要な場合もあります。この場合で下記の要件を満たす場合は漢字表記となる場合があります。ただしこの場合でも、旅券発給後にローマ字氏名が判明した後、更新や再交付があった時には氏名に係る記載事項の変更届出をさせられた上でローマ字表記に変更されます。

  • 漢字国の外国人の子であること
  • 出生届受理証明書に表記された漢字に対応するローマ字と申請したローマ字表記が明らかに正しくない場合
漢字氏名の併記

パスポートやその他公的書類の氏名に漢字が使用されている者から漢字氏名の併記の申出があったときは、在留カードの氏名欄に漢字・ひらがな・カタカナ表記を併記できます。ただし使用できる漢字は限られており、漢字告示で定められた正字のみが使用でき、それ以外の漢字(簡体字等)を用いることはできません。

パスポート氏名が簡体字等によって表記されている者から漢字氏名の併記の申出があった場合には、告示で定められた正字-簡体字の対応関係に基づき入管側で併記されます。

また、いったん在留カード上に漢字氏名の併記が行われた場合、「ローマ字表記+漢字併記」が法律上の在留カード記載事項の「氏名」となり、漢字氏名に変更があった場合にも届出義務が課せられます。さらに、漢字併記を取りやめることもできません。

なお、いったん漢字表記がなされると、在留資格変更や更新、再交付の際に改めて漢字氏名併記の申出がなくても漢字氏名が表記されることとなります。

その他公的書類について

漢字氏名併記の際のパスポート以外の公的資料は下記の通りです。

  • BNO旅券所持者:香港永久性居民身分証
  • 韓国旅券所持者:韓国国民登録証、家族関係証明書、基本証明書
  • 以前からの継続在留者:外国人登録証明書
通称について

本邦のみで用いる通称は在留カードに表記されません。

通称は住民票の通称欄に記載されるものですが、在留管理制度において、市区町村から提供される事項ではありません。

生年月日について

西暦を使用します。

性別について

パスポートの身分事項欄に記載された情報が表記されます。

そして、パスポートに男女以外の性別であ「X」(unspecified、 indeterminate、 intersex)が記載されている場合は、本人への聴取等を行った上で本人の申し立てに従い、男女のいずれかを入力することになります。

国籍・地域について

国民旅券を有する方は発給国・地域名が記載されます。

日本国政府が承認した外国政府が自国民以外の者に発行する旅券に代わる証明書を有する方は、原則「無国籍」が表記され、他に国籍・地域を証明する文書を所持しているときは当該国籍・地域が表記されます。

また、地域というのは「台湾」と「ヨルダン川西岸地区及びガザ地区」の2種類しか現状存在しません。後者の場合は「パレスチナ」と表記されます。

住居地について
住居地の定義

住居地とは、本邦における主たる住居の所在地であり、外形上住居としての実態を備え、継続的に居住することが予定されている場所であって、かつ、海外に生活の本拠があると認められる場合でも本邦内における生活の根拠を表す概念です。

例えば、中長期間継続して宿泊することが予定されているホテルや旅館などは住居地としての届出が認められるが、道路や公園など、社会通念上、客観的に人の住居としての実態を具備していないものや、ホテルや旅館に宿泊する日数が短期間のものなどは、住居地としての届出は認められないこととなります。

在留カード上の住居地表示

【新規上陸時】

新規上陸した際はまだ住居地が決まっていないので、交付される在留カードには、「未定」と自動的に記載されます市区町村へ住居地を届け出たときに裏面に記載されます。

ただし、在留カードが交付されない出入国港を使用したことにより、在留カードが後日交付される場合は、市区町村での住居地届出後に在留カードを発行して郵送されるため、この場合には、在留カードの住居地欄には住居地が記載されます。

【新規上陸時以外】

在留期間更新や在留資格変更、在留カードの再交付などにより新たに在留カードの交付を受ける場合、最後に届出た住居地が自動的に記載されます。

在留資格・在留期間・在留期限について

上陸許可、または、在留許可の際に、許可する在留資格・在留期間・在留期限が自動的に記載されます。

許可の種類について

この項目は、当該在留カードに示される在留資格が、新規上陸によるものなのか、更新によるものなのか。また、処分庁はどこか、ということを記載します。

下記が例です。

  • 上陸許可(入国審査官)
  • 在留資格変更許可(大阪入国管理局長)
  • 永住許可(法務大臣)
就労制限の有無について

在留資格により就労制限の有無が明記されております。

記載の種類は下記のとおりです。

  • 就労不可
  • 就労制限なし
  • 在留資格に基づく就労活動のみ可
  • 指定書記載機関での在留資格に基づく就労活動のみ可
  • 指定書により指定された就労活動のみ可
資格外活動許可を受けている旨について

資格外活動許可の有無は在留カードの表面には記載されません。

パスポートに資格外活動許可の証印を押すとともに、在留カード裏面の資格外活動許可欄に、下記のどちらかのゴム印が押印されます。なお、偽造防止のため在留カードのICチップにも記録されています。

  • 許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く)
  • 許可(資格外活動許可書に記載された範囲内の活動)
写真について

在留期限が16歳の誕生日の翌日以降の日として交付する在留カードには、中長期在留者の写真が表示されます。

在留カードの有効期間について

在留カードの有効期間は、原則として中長期在留者の在留期間が満了する日までです。

しかし在留期限のない永住ビザや高度専門職2号ビザの場合は在留カード交付日から7年間が在留カードの有効期間となります。

なお、永住ビザ等でもそれ以外のビザでも、16歳の誕生日が経過すれば顔写真を表示しなければなりませんので、在留期限が残っていても、在留カードの有効期間は16歳の誕生日となる場合があります。

在留カードの失効

在留カードが失効したときは、返納期間内にその在留カードを法務大臣に返納しなければなりません。なお、返納といっても、パンチで穴をあけたものを本人へ戻してくれる場合もあります。

失効事由と返納期間は下記のとおりです。

  • 中長期在留者でなくなったとき
  • 中長期在留者でなくなったときから14日以内

  • 在留カードの有効期間が満了したとき
  • 在留カードの有効期間が満了したときから14日以内

  • 再入国許可・みなし再入国許可を受けずに入国審査官から出国の確認を受けたとき
  • その場で在留カードを返納する

  • 再入国許可・みなし再入国許可を受けて出国し、許可期限内に再入国しなかったとき
  • 期限日から14日以内

  • 新たな在留カードの交付を受けたとき
  • その場で在留カードを返納する

  • 死亡したとき
  • 親族・同居人が死亡の日から14日以内に返納する

また、偽造確認のツールとして、在留カードの失効はインターネットで確認できます。

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