Pocket

2017年入管内部基準に記載されている、「日本人実子を監護・養育する者に付与される定住者ビザ」における詳細要件について記載します。

他の定住者ビザの種類については、【2017年入管内部基準】定住者ビザの種類について(ビザ)を読んでください。

日本人実子を監護・養育する者に付与される定住者ビザの詳細要件

要件の俯瞰

要件について箇条書きします。各要点に関する詳細解説を読む場合はその下まで読み進めてください。

この定住者ビザは、日本人と結婚した外国人が3年程度に満たない間に離婚したが、その配偶者との間の子の親権者となっている場合に、その親権を持つ外国人に認めるべきビザの事案を想定しています。

日本人実子を監護・養育する者に付与される定住者ビザが認められるためには、下記の全てに該当なければなりません。

  • ① 日本人の実子の親権者であること
  • ② 実態的に監護・養育すると見込まれること
  • ③ 相当期間、当該日本人の実子を監護・養育していたこと
  • ④ 生活が維持できる資産や能力を有すること
  • ⑤ 素行が善良であること

「日本人の実子の親権者であること」とは

「日本人の実子」とは、子が生まれた時点で、父または母のどちらかが日本国籍を有している場合を指します。実子の国籍を問うものではありません。

また、非嫡出子(婚外子)で、かつ、実子が日本国籍を有さない場合、日本人の父から認知されていなければなりません。ただし、出生から相当期間が経過し、さらに、当該特定活動ビザの申請直前に認知するような場合は、合理的な事情を説明しなければなりません。

実態的に監護・養育すると見込まれること

単に親権を有するのみで監護・養育していない場合には不許可となります。

この点、日本人実子を親権者の親族や児童施設等、どこかに預けられていることのみで「監護・養育していない」と判断されるものではなく、面会の頻度や親としての関わりの内容などを考慮し、子の教育・監護・健康に対してどの程度親の義務が果たされているかをもって判断されます。

ただし、外国人親が一人で日本に在留し、監護するべき日本人実子は本国の親族に預けるような場合は要件に適合しないと判断される可能性は非常に高いです。

そして、日本人実子の年齢に関してですが、実子が成人すれば親権者ではなくなるので基本的には要件には該当しません。しかし、子が未成年の時から「監護・養育」しており、当該定住者ビザを有していたが、年数が経過することによって子が成人に達した場合は、その事実のみをもって不許可となるわけではありません。

また子が18歳に達し、かつ、就労している場合、または婚姻している場合、これもそのことだけをもって不許可となるわけではありませんが、金銭的・精神的な扶助活動があると立証しなければなりません。

相当期間、当該日本人の実子を監護していたこと

相当期間については、具体的な年数基準は公開されておりませんが、1年~2年程度の婚姻期間は必要だと考えられます。

また、当該定住者ビザは不正な在留を誘発する恐れがありますので、ブローカー等の介在に関して慎重な審査がなされます。

生活が維持できる資産や能力を有すること

原則は、外国人親が就労し、または、監護養育するに必要な資産を有していなければなりません。しかし、この定住者ビザは日本人実子を監護養育する1人親であるパターンが多いので、外国人の方が就労できずに生活保護が支給されている場合もよくあります。

この点、生活が安定すれば就労する予定である意思があり、かつ、実態を伴った監護養育活動があれば、当該要件に該当しなくても許可される可能背はあります。

素行が善良であること

素行が善良か否かは下記のように審査されます。

素行が善良と認められるためには下記のすべてに該当しない者でなければなりません。

  • ①日本・海外の法令違反で懲役・禁錮・罰金・これらに相当する刑に処せられたことがある者。(注1)
  • ②少年法による保護処分(1号・3号)が継続中の者。(注2)
  • ③違法行為や風紀を乱す行為を繰り返し行うなど、素行善良と認められない事情がある者。(注3)
  • ④不法就労のあっせんや、自己または他者のビザ手続きにおいて不正行為を行った者。

(注1)

道路交通法違反による罰金は除かれます。ただし、道路交通法違反による罰金を何度も繰り返しているような場合には③に該当する可能性もあります。

また「刑の消滅の規定の適用を受ける者」又は「執行猶予の言渡しを受けた場合で当該執行猶予の言渡しを取り消されることなく当該執行猶予の期間を経過し、その後更に5年を経過した者」は、これに該当しないものとして扱われます。

刑の消滅の規定とは下記のとおりです。(刑法第34条の2)

  • (1)禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで10年を経過したときは、刑の言渡しは効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで5年を経過したときも、同様とする。
  • (2)刑の免除の言渡しを受けた者がその言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで2年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。

また、海外における刑罰も審査の対象なので、犯罪経歴証明書や無犯罪証明書を求められる場合があります。

日本の法令違反の審査は前科照会等がなされます。

(注2)

保護処分の1号とは保護観察所の保護観察に付することであり、3号とは少年院に送致することです。

(注3)

「①日本の法令違反で懲役・禁錮・罰金に処せられたことがある者」に該当しないような軽微な法令違反であっても同様の行為を繰り返し行うような場合や、地域社会に多大な迷惑を及ぼす活動を繰り返し行う者が該当します。

例えば、交通違反の反則金は罰金ではありませんが、何度も繰り返すような場合にはこれに該当します。また反則金や罰金がなくとも街宣活動などで何度も指摘を受けているような場合にもこれに該当します。

これらの事情については、関係機関からの報告や一般人からの通報などを調査し、事実と認定した場合に素行善良と認められない特段の事情があるものと判断されます。

Pocket