2017年入管内部基準に記載されている、「高齢で身寄りのない親を呼ぶ老親扶養の特定活動ビザ」の申請方法や認められる要件について記載します。
特定活動ビザの全般的な概要と、特定活動ビザのその他の種類については、下記を参照してください。
【2017年入管内部基準】特定活動ビザの審査について(ビザ)
度専門職ビザや特定研究活動の特定活動ビザを有する外国人・その配偶者の親を呼ぶ特定活動ビザについては、下記を参照してください。
高度専門職ビザや特定研究活動の特定活動ビザを有する外国人・その配偶者の親を呼ぶ特定活動ビザ【2017年入管内部基準】
高齢で身寄りのない親を呼ぶ老親扶養の特定活動ビザ
申請方法
高齢で身寄りのない親を呼ぶ老親扶養の特定活動ビザの申請方法は、当該親が一度短期滞在ビザで来日し、在留資格変更許可申請をすることにより、短期滞在ビザから特定活動ビザへ変更することになります。
本体人である子が日本の入管で在留資格認定証明書交付申請して親を呼び込むことができない点は留意が必要です。
特定活動ビザが認められる要件
要件は下記のとおりです。
- ①親の呼込み側となる子の資格
- ②親が高齢か否か
- ③親の配偶者の有無
- ④親の呼込み側となる子の兄弟の存在
- ⑤親の呼込み側となる子の収入・資産
- ⑥呼込んだ親を子が扶養し扶助するか否か
- ⑥人道上配慮を要すべき特別の事情がある場合
基本的に上記の①~⑥に該当しなければ認められません。ただし、⑦に該当する場合は他の要件に該当しなくても認められる可能性はあります。
①親の呼込み側となる子の資格
子が違法に在留している場合には、高齢で身寄りのない親を呼ぶ老親扶養の特定活動ビザは認められません。
子は違法でなければよく、日本人、帰化日本人、在留資格を有する外国人であれば問題ございません。
②親が高齢か否か
親が高齢でなければ、老親扶養の特定活動ビザは認められません。
この基準は一般に公開されていないので伏字で記載しますが、〇〇歳以上である必要があります。
(ヒント:高齢者の定義は様々な機関により定義されていますが、以下のいずれかに準拠しています。)
- 国連による定義
- 国連機関である世界保健機関「WHO」による定義
- 高齢者医療の確保に関する法律の中での定義
- 公的機関が実施する人口統計の中での定義
- 日本老年学会が提言した定義
→60歳以上:高齢者
→65歳以上:高齢者
→65歳~74歳:前期高齢者
→75歳以上:後期高齢者
→64歳以下:現役世代
→65歳~74歳:前期高齢者
→75歳以上:後期高齢者
→65歳~74歳:准高齢者
→75歳~89歳:高齢者
→90歳以上:超高齢者
③親の配偶者の有無
海外に居る親に配偶者がいる場合は、老親扶養の特定活動ビザは認められません。「身寄りがない」状態である必要があります。
特定活動ビザの場合は、特別に事情がある者に対して認められるものですが、夫婦がご健在の場合は認められないのです。
ただし、夫婦が婚姻関係を継続しているものの破綻状態にあり、かつ、同居が見込めない場合も「身寄りがない」に含まれます。
④親の呼込み側となる子の兄弟の存在
本要件を考える上では、下記の3つのパターンがあります。
- (A)呼び込み側の子以外に子が存在しない場合
- (B)呼び込み側の子以外の子が存在するが、その子も日本に住んでおり、親が居住する国には子がいない場合
- (C)呼び込み側の子以外の子が存在するが、その子は日本と親が居住する国を除く海外の国に住んでおり、親が居住する国には子がいない場合
- (D)呼び込み側の子以外の子が親が居住する国に居住している場合
例えば、「海外に住む外国人の母親」を「日本に住む長男」が呼ぶ場合で、次男等がいない場合は(A)、次男も日本に住む場合は(B)、次男がアメリカ等に住む場合は(C)、次男が中国に住む場合は(D)となります。
このうち、(D)の場合には、親と同一の国に住む他の子がいるのだから「身寄りがない」わけではなく、老親扶養の特定活動ビザは認められません。
(A)(B)(C)に関しては、親の居住する国においては「身寄りがない」状態なので、老親扶養の特定活動ビザが認められます。
しかし(C)に関しては、海外に居る子の側で親を呼び込んで扶養する方法もありますので、日本で呼び込む必要性を立証しなければなりません。
⑤親の呼込み側となる子の収入・資産
金額については入管からは一般に公表されていないので伏字で記載しますが、親の呼込む子の側の世帯収入が、「扶養を受ける者(国内外含む)」「子本人」「他に身元保証している外国人」の合計人数に〇〇〇万円を乗じた金額以上である必要があります。
親を受入れる子に配偶者・子・子がいる場合、合計人数は5人となります。
また、世帯収入なので呼び込む親の子とその配偶者の収入を足しても構いません。
なお、納税義務を果たしていない場合には必ず不許可になりますのでご注意ください。
上記金額に応じて、下記のような立証資料を準備して立証することになります。
- 住民税の納税証明書
- 在職証明書、または、確定申告書控え・営業許可書の写し
- 所得が記載された源泉徴収票
- 預貯金通帳の写し
- 年金等を受給していることを証明する文書
- 不動産の固定資産税書類
- 雇用予定証明書
- その他資産を証明する書類
- その他資産を有するに至った経緯を証明する資料
⑥呼込んだ親を子が扶養し扶助するか否か
親を短期滞在ビザから特定活動ビザへ変更する目的が、「日本に居る子に扶養を受け、日本で在留する為」である必要があります。
従って来日後に子の扶養に入る必要があります。
⑦人道上配慮を要すべき特別の事情がある場合
人道上配慮を要すべき特別の事情がある場合には、前述した①~⑥の要件にに該当しなくても認められる可能性はあります。
人道上配慮を要すべき特別の事情とは例えば下記のようなものがあります。
- 介護が必要な程、日常生活に支障をきたしている場合
- 本国での治療が困難な病気があり、日本での治療が必要な場合で、かつ、医療ビザ等他のビザに該当しない場合
介護が必要といっても、単に介護者が近くに居たほうが安心というレベルでは認められません。日本でも「要支援認定」「要介護認定」の制度がありますが、「要支援認定レベル」では認められません。
また要介護の場合でも、病気の場合でも、それを証明する書類によって立証しなければなりません。