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2017年入管内部基準に記載されている、ビザ審査における「技術・人文知識・国際業務ビザの審査」について記載します。

技術・人文知識・国際業務ビザの審査要件(法文)

技術・人文知識・国際業務ビザは、学術的な専門技術・知識を必要とする業務や外国特有の感性を要する業務に従事する外国人に付与されるビザです。

入管における審査では、入管法に定められたビザ該当性と基準省令に定められるビザ基準省令に従って判断されます。

ビザ該当性(法文引用)

本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授の項、芸術の項及び報道の項の下欄に掲げる活動並びにこの表の経営・管理の項から教育の項まで、企業内転勤の項及び興行の項の下欄に掲げる活動を除く。)

ビザ基準省令本文(法文引用)

申請人が次のいずれにも該当していること(注:基準省令第1号から第3号までをいう。)。ただし、申請人が、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法(昭和六十一年法律第六十六号)第五十八条の二に規定する国際仲裁事件の手続についての代理に係る業務に従事しようとする場合は、この限りでない。

ビザ基準省令1号(法文引用)

申請人が自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務に従事しようとする場合は、従事しようとする業務について、次のいずれかに該当し、これに必要な技術又は知識を修得していること。ただし、申請人が情報処理に関する技術又は知識を要する業務に従事しようとする場合で、法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格し又は法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有しているときは、この限りでない。

イ 当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと。
ロ 当該技術又は知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと。
ハ 十年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に係る科目を専攻した期間を含む。)を有すること。

ビザ基準省令2号(法文引用)

申請人が外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は、次のいずれにも該当していること。

イ 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること。
ロ 従事しようとする業務に関連する業務について三年以上の実務経験を有すること。ただし、大学を卒業した者が翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合は、この限りでない。

ビザ基準省令3号(法文引用)

日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

ビザ該当性・ビザ基準についての詳細解説

ビザ該当性

技術・人文知識・国際業務ビザを取得する外国人のパターンは3つに分類されます。いずれかに該当すれば技術・人文知識・国際業務ビザへの該当性を有します。

  • (類型1)日本の公私機関と契約し、理系分野の学術的素養を背景とする業務に従事する者
  • (類型2)日本の公私機関と契約し、文系分野の学術的素養を背景とする業務に従事する者
  • (類型3)日本の公私機関と契約し、外国に特有な文化・思考・感受性を背景とする業務に従事する者

ビザ該当性に内包される要件

上記の類型を踏まえて、ビザ該当性に内包される要件を知るためには下記の事を理解しなければなりません。

  • 日本の公私機関とは
  • 契約とは
  • 理系分野とは
  • 文系分野とは
  • 学術的素養を背景とするとは
  • 外国に特有な文化・思考・感受性を背景とするとは

日本の公私機関とは

日本の公私機関とは、下記の機関を指します。

  • 地方公共団体
  • 独立行政法人
  • 会社
  • 公益法人等の法人
  • 任意団体
  • 日本に事業所を有する個人事業主
  • 日本に事業所を有する外国に位置する上記の機関

ただし任意団体は権利能力はないので、契約書の署名当事者となることはできません。

契約とは

契約形態には下記を含みます。

  • 雇用契約
  • 委任契約
  • 委託契約
  • 嘱託契約
  • など

ただし、不特定機関ではなく特定機関でなければなりません。また複数の機関との契約でも構いません。

契約書面の記載事項や契約当事者に関する注意点は、【2017年入管内部基準】本邦の公私の機関との契約・外国の公的機関・外国の教育機関とは(ビザ)を参照してください。

理系分野とは

下記の分野を指し、これらに属する技術又は知識がなければないとされています。

  • 数学
  • 化学
  • 科学
  • 生物学
  • 地学
  • 物理学
  • 統計学
  • 情報学
  • 工学
  • 経営工学
  • 農学
  • 水産学
  • 獣医学
  • 病理学
  • 歯科学
  • 薬学

文系分野とは

下記の分野を指し、これらに属する技術又は知識がなければないとされています。

  • 語学
  • 文学
  • 哲学
  • 教育学
  • 心理学
  • 社会学
  • 地域研究
  • 法学
  • 政治学
  • 経済学商学
  • 経済統計学

学術的素養を背景とするとは

技術・人文知識・国際業務ビザを取得するためには、前述した理系分野や文系分野に属する技術・知識は一定以上の学術的素養を必要とする業務であることが求められております。

「学術的素養」とは、大学卒業者が一般的に取得する技術や知識レベルであり、業務の分野が一般的な大学に課程として設置されているようなものを指します。

例えば、設計業務であれば、一般的に大学で学ぶ機械設計学が活かされるものであり、学術的素養を要する業務として認められる場合がほとんどです。

生産技術・生産管理の場合には、量産立上げや試作品検証や見積もりに関して、一般的に生産ライン上において材料学や工学、機械設計知識が必要な場合には街区術的素養を要すると認められます。

組立業務の場合では、マニュアルや上司の指示に従って単純に分解や組立を行うような場合は学術的素養がないと判断されます。一方、機械等の組立に関して、機械学的な知識や光学的知識を要するチューニングが必要な場合や、その他高度な知識が必要な場合には認められます。

外国に特有な文化・思考・感受性を背景とするとは

外国に特有な文化・思考・感受性を背景とするとは業務についてはビザ基準省令で具体的な業務内容が定められております。(後述)

ビザ基準省令

本文:該当条項と免除

本文は、後述する1号から3号のすべてに該当することを要求しています。

ただし、特別措置法として外国弁護士による国際仲裁事件の代理業務の場合はこれらの要件に該当する必要はありません。(詳細は後述します。))

1号:学歴・実務経験

1号は外国人の学歴または実務経験を定めています。

(類型1)の理系分野業務、(類型2)の文系分野の業務に従事する場合は、下記のいずれかの要件に該当する必要があります。

ただし、特定の情報処理資格を有し、または、情報処理試験に合格している場合は1号要件が免除されます。(後述します。)

  • 大学卒業と同等以上の教育を受け、かつ、専攻内容と予定する業務内容が関連していること
  • 専修学校の専門課程(専門学校)修了により(高度)専門士を称し、かつ、専攻内容と予定する業務内容が強く関連していること
  • 予定する業務内容に関して10年以上の実務経験を有すること
「大学卒業と同等以上」とは

大学卒業とは、一般的に「学士」・「短期大学士」以上の学位を取得した者を指します。

中国の場合は下記の場合を指します。

  • 大学院を卒業した者
  • 大学(本科)を卒業した者
  • 大学(専科)を卒業した者
  • 学院(本科)を卒業した者
  • 学院(専科)を卒業した者
  • 専科学校を卒業した者
  • 短期職業大学を卒業した者
  • 学位授与が可能な成人教育機関の学位取得者

「同等以上」については、【2017年入管内部基準】学歴要件について(ビザ)を参照してください。

「専攻内容と関連」とは

大学卒業と同等以上の教育を受けた場合は、専攻内容と業務内容が関連している必要がありますが、大学というものは広範な知識を学ぶことを趣旨としているので、比較的に緩やかに判断されます。

この関連の度合いについて、一致するレベルではなく関連していればよく、概ね理系専攻なら一般的な理系の就職先と考えられる業務であれば大丈夫です。つまり、船舶工学科なら造船に関連する業務ではなければならないレベルではなく、一般機械設計でも問題ありません。

また、これらの関連性の判断は、専攻コースの名称や、必修科目をもって審査されます。船舶工学科であってもプログラミング等の情報学を履修していれば、SEに従事することも認められます。

ビザ申請における必須書類ではありませんが、大学が発行する成績表などがあれば立証しやすいです。

「専攻内容と強く関連」とは

専修学校の場合は、広範な科目を学習する大学とは異なり、入学当初から専門的な科目を学習します。

従って大学よりは専攻内容と業務内容の関連性が強く求められます。

「10年の実務経験」について

この「10年の実務経験」は、下記において実務経験と関連する科目を専攻した期間を含みます。

  • 大学
  • 高等専門学校
  • 高等学校
  • 中等教育学校後期課程
  • 専修学校の専門課程

2号:外国文化業務

2号は、外国の文化特有の業務に従事する場合に要求される条項であり、下記いずれかに該当する必要があります。

  • 外国の文化特有の(A)の業務に従事し、かつ、関連する業務の実務経験が3年以上であること
  • (B)の業務に従事し、かつ、当該業務の実務経験が3年以上であること
  • (B)の業務に従事し、かつ、従事する言語が母国語であり、かつ、大学を卒業していること

(A)の業務は下記のとおりです。

  • 広報
  • 宣伝
  • 海外取引業務
  • 服飾
  • インテリアデザイン
  • 商品開発
  • これらに類似する業務

なお、これらの業務では外国の文化特有でなければなりません。つまり外国で生活環境の中で生かされるようなデザインを活用するような業務であったり、外国の商取引ルールが適用されるような業務である必要があります。

(B)の業務は下記のとおりです。

  • 通訳
  • 翻訳
  • 語学指導
  • これらに類似する業務

3号:日本人と同等の報酬

技術・人文知識・国際業務ビザを取得するためには、外国人が業務に従事する機関において、日本人と同等の報酬を得る必要があります。

「日本人と同等の報酬」については、例えば外国人が従事する機関において、同等の地位・技術レベル・経験を有する日本人と比較して、明らかに外国人の給料を安くしていないか否かで判断されます。また、他に日本人従業員がいない場合には同一業種の一般的な報酬額で判断されます。

平均的な新卒の月収は下記のとおりですが、これよりも極端に安い場合は、当該企業におけるほかの日本人の給与についても立証資料として提出したほうがよいでしょう。

  • 大学院卒:22.8万円
  • 大学卒:20.2 万円
  • 高専・短大卒:17.5万円
  • 高校卒:16.0万円

また、報酬に含まれるものと含まれないものがあります。

報酬には、役務の対価としての給与・賞与のみを含み、通勤手当、扶養手当、住宅手当等の実費弁償の性格を有するものは含みません。課税対象となるかどうかが報酬に含まれるかどうかの見極めとなります。

その他の解説

ビザ基準省令が免除される外国弁護士について

外国弁護士としてに国際仲裁事件手続の代理人となる業務に従事する場合はビザ基準省令に該当する必要はありません。

この「外国弁護士」は、外国で法律事務を行う弁護士に相当する者であり、かつ、外国法事務弁護士資格を有さない者を指します。

外国弁護士は法律・会計業務ビザ、技術・人文知識・国際業務ビザ、特定活動8号ビザ、短期滞在ビザが該当し得るところ、下記のような違いがあります。

  • 法律・会計業務ビザ:法務大臣から外国法事務弁護士資格の承認を受けた場合
  • 技術・人文知識・国際業務ビザ:外国法事務弁護士資格がない、かつ、日本の公私機関との契約に基づく場合
  • 特定活動8号ビザ:外国法事務弁護士資格がない、かつ、個人との契約に基づく場合
  • 短期滞在ビザ:報酬がない場合

また、「国際仲裁事件」とは、下記のすべてに該当するものを指します。

  • 民事に関する仲裁事件
  • 日本国内を仲裁地とするもの
  • 当事者の全部または一部が外国に住所を有する場合
学歴・実務経験の要件が免除される情報処理資格・情報処理試験について

情報処理技術者の受入れ促進政策に基づき、法務大臣によって告示「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令の技術及び特定活動の在留資格に係る基準の特例を定める件」で定められています。

インドのDOEACC(ドアック)

DOEACC(ドアック)とは、インドのIT省が認定する教育機関の制度であり、資格レベルO・A・B・Cのうち、A・B・Cを有する者に対して学歴要件である1号基準省令をクリアさせるものです。

他のビザとの区別

研究に関する業務における、教授ビザ/技術・人文知識・国際業務ビザ/研究ビザ

教授ビザは、日本の下記の機関で研究・研究指導・研究教育をする場合に該当します。なお、契約相手ではなく従事する場所であることに留意する必要があります。

  • 大学
  • 大学に準ずる機関
  • 高等専門学校

研究ビザは、教授ビザの機関以外の機関で従事し、かつ、研究が主目的である場合に該当します。

技術・人文知識・国際業務ビザは、機関に関わらず、契約期間の業務遂行に直接資するもので、その手段として研究業務に携わる場合を指します。

経営・管理ビザ/技術・人文知識・国際業務ビザ

経営管理ビザは事業の意思決定権を有する経営者に付与されるビザであり、地位としては出資している取締役または代表取締役が該当します。

一方、技術・人文知識・国際業務ビザの場合は、経営の意思決定をしない、会社と契約する一般従業員や役員報酬を得る取締役が該当します。

重複する場合は基本的には経営管理ビザが該当することになりますが、経営活動に従事する割合が少ない場合は技術・人文知識・国際業務ビザとなる場合もあります。

なお、出世により技術・人文知識・国際業務ビザを有する外国人が経営者となった場合は、直ちに経営管理ビザに変更しなければならないというわけではなく、在留期限の満了時にそこで審査することになります。

法律業務における、法律・会計業務ビザ/技術・人文知識・国際業務ビザ/特定活動8号ビザ/短期滞在ビザ

前述の「ビザ基準省令が免除される外国弁護士について」を参照してください。

医療業務における、医療ビザ/技術・人文知識・国際業務ビザ

医療ビザは、医療資格がなければできない医療業務に従事する場合です。

技術・人文知識・国際業務ビザは、医療資格がなくてもできる医療業務に従事する場合です。

教育業務における、教授ビザ/教育ビザ/技術・人文知識・国際業務ビザ

教授ビザは、日本の下記の機関で教育活動に従事する場合に該当します。

  • 大学
  • 大学に準ずる機関
  • 高等専門学校

教育ビザは、日本の下記機関で教育活動に従事する場合に該当します。

  • 小学校
  • 中学校
  • 高等学校
  • 中等教育学校
  • 特別支援学校
  • 専修学校
  • 各種学校
  • 設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関

(「設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関」とは、非認可の教育施設で、校地・校舎等の施設設備・生徒数・教員組織等に関して、専修学校や各種学校に準じて設立されている教育機関を指します。)

  • 一方、技術・人文知識・国際業務ビザは、教授ビザおよび教育ビザの機関以外の一般企業などで研修としての教育活動に従事する場合に該当します。
  • 企業内転勤ビザ/技術・人文知識・国際業務ビザの要件の違い

    企業内転勤ビザも技術・人文知識・国際業務ビザも、業務内容に関する制限は同じですが、企業内転勤ビザの場合は下記のような特徴があります。

    • ① 転勤元と転勤先の関係性に関する要件がある。
    • ② 期間を定めた転勤である必要がある。
    • ③ 転勤した特定事業所のみで従事する必要がある。
    • ④ 転勤前の機関で、転勤後に行う業務に関連する業務に1年以上従事していたことが必要。

    一方、技術・人文知識・国際業務ビザの場合は、①②③④の要件はありませんが、代わりに学歴・実務経験が厳しいです。

    付与される技術・人文知識・国際業務ビザの在留期間について

    5年が付与される基準

    下記の①②③④、または、①②③⑤に該当することが必要です。

    • ① 入管法の届出義務を遵守していること
    • ② 義務教育期間の子が居る場合は、子がきちんと通学していること
    • ③ 就労予定期間が3年を超えること
    • ④ 契約機関がカテゴリー1またはカテゴリー2であること
    • ⑤ カテゴリー3以下であり、かつ、3年の技術・人文知識・国際業務ビザを有し、かつ、日本で継続的に5年以上技術・人文知識・国際業務ビザの活動に従事している

    3年が付与とされる基準

    下記の①、または②、または③のいずれかに該当することが必要です。基本的にカテゴリー2以上(法定調書合計表が1500万円以上)とならなければほとんど認められません。

    ① 下記のabcd、または、abceに該当すること

    • a.入管法の届出義務を遵守していること
    • b.義務教育期間の子が居る場合は、子がきちんと通学していること
    • c.就労予定期間が1年を超え、3年以内であること
    • d.契約機関がカテゴリー1またはカテゴリー2であること
    • e.カテゴリー3以下であり、かつ、3年の技術・人文知識・国際業務ビザを有し、かつ、日本で継続的に5年以上技術・人文知識・国際業務ビザの活動に従事している

    ② 5年の在留期間を決定されていた者が在留期間更新の際に、5年基準の①②のいずれかに該当しなくなった者であり、就労予定期間が1年を超える者

    ③ 5年、1年、4月又は3月の項のいずれにも該当しないもの

    1年が付与とされる基準

    他の付与基準に該当しない場合はほとんどがこの1年ビザが付与されます。

    特に3年の技術・人文知識・国際業務ビザを有していた者で、入管法上の届出義務などを怠ると1年ビザに降格になることには留意が必要です。

    また、在留状況等により3年から1年に降格する場合もあります。

    3月が付与とされる基準

    就労予定期間が3ヶ月以内のもの

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