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2017年入管内部基準に記載されている、ビザ審査における「経営管理ビザの審査」について記載します。
経営管理ビザの審査要件(法文)
経営管理ビザは、外国人が事業の経営管理業務に従事するために必要なビザです。
入管における審査では、入管法に定められたビザ該当性と基準省令に定められるビザ基準省令に従って判断されます。
ビザ該当性(法文引用)
本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動(この表の法律・会計業務の項の下欄に掲げる資格を有しなければ法律上行うことができないこととされている事業の経営又は管理に従事する活動を除く。)
ビザ基準省令1号(法文引用)
事業を営むための事業所が本邦に存在すること。ただし、当該事業が開始されていない場合にあっては、当該事業を営むための事業として使用する施設が本邦に確保されていること。
ビザ基準省令2号(法文引用)
申請に係る事業の規模が次のいずれかに該当していること。
イ その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する二人以上の常勤職員(法別表第1の上欄の在留資格をもって在留する者を除く。)が従事して営まれるものであること。
ロ 資本金の額又は出資の総額が五百万円以上であること。
ハ イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること。
ビザ基準省令3号(法文引用)
申請人が事業の管理に従事しようとする場合は、事業の経営又は管理について三年以上の経験(大学院において経営又は管理に係る科目を専攻した期間を含む。)を有し、かつ、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
ビザ該当性・ビザ基準についての詳細解説
ビザ該当性
概要
経営管理ビザを取得する外国人のパターンは3つに分類されます。いずれかに該当すれば経営管理ビザへの該当性を有します。
- 日本で事業経営をスタートさせ、当該事業の経営および管理に従事する外国人
- 日本ですでに営業されている事業に参加し、新たに経営および管理に従事する外国人
- 日本ですでに営業されている事業の経営者に代わって、新たに経営および管理に従事する外国人
経営とは、代表取締役、取締役、監査役等の役員の地位に立って事業を統括して経営活動を行うことを指します。具体的な活動内容は、事業の運営の重要事項決定、業務の執行、監査の業務などが挙げられます。特に事業の意思決定権を当該外国人が有していなければ、経営管理ビザは認められません。
管理とは、役員の地位までではなくても、比較的大きな規模の企業の中で本部長や工場長、支店長などの部門の管理を任されているものを指します。中小規模の企業では、「管理」としてのビザはほとんど認められません。
ビザ該当性に内包される要件
ビザ該当性の法文からは具体的な要件のようなものは一見ないように思えますが、実際には下記のような要件が内在します。
- 業種
- 登記の有無
- 実務活動(現業)の占める割合
- 経営の実質性
- 事業の継続性
これらについて詳しく解説します。
業種について
日本において適法に行われる事業でなければ認められません。適法であれば業種に制限はありません。
また、外国人や外国法人が投資している会社のみならず、日本人や日本法人のみが投資している会社でも差し支えありません。
また事業の営利性については問われません。非営利企業であっても、外国の国や地方公共団体の機関事業として行われるものでも差し支
えありません。
登記について
法人の場合には基本的には登記が存在しなければ認められません。
ビザ申請の段階では登記がまだ完了していなくても、認証済み定款などを提出することは可能ですが、ビザ基準における規模の審査において登記事項証明書が必要なので、申請後の早い段階で登記が終えていなければなりません。
個人事業主の場合は登記がないので必要ありませんが、その場合は受理印が押された開業届などを提出することになります。
経営活動と実務活動(現業)について
活動のほとんどが経営活動ではない現業活動を占めている場合は経営管理ビザは認められません。
純粋な経営活動に従事する中で、その一環として行う現業に従事する活動の場合は経営管理ビザとして該当します。
経営活動の実質性
経営管理ビザが認められるためには、外国人が経営活動に実質的に従事し、かつ、その事業が継続性を有していなければなりません。
実質的に経営活動に従事しなければなりませんので、名義だけの経営者では認められません。このことについては、当該外国人の経営経験や出所を含めた資本金に関する事項、複数の経営者との活動内容の区別、役員報酬なども含めて判断されます。
特に複数の経営者や管理者がいる場合は、その人数を必要とする事業規模・業務量・売上げ・従業員数などを審査され、その中で外国人が経営活動に実質的に従事するか否か、経営に従事する合理的な理由が存在するか否かが判断されます。
不許可事例としては、下記のようなものがあります。
- 事業規模が小さく、複数の経営者の中で外国人が経営活動する合理的な理由が見当たらない
- 他の経営者と外国人の業務の区別が明確ではない
- 役員報酬が定められていない、または、従業員よりも少ないなど、役員としても地位に疑義が存在する。
逆に考えると、「合理的な理由」「区別の明確性」「役員報酬」が適正に存在していれば、複数の外国人であってもそれぞれに対して経営管理ビザが許可される可能性があります。
事業の継続性について
また、事業の継続性については、新規事業であれば事業計画をもって審査され、また既存事業であれば決算状況によって判断されます。
事業計画について
新規事業の場合は、事業計画書ただ1つをもって継続性が審査されますので、非常に重要な申請書類です。
事業計画には以下のような事項を記載されており、事業の具体性・合理性・実現性が認められなければなりません。
- 営業内容
- 取扱品目
- 必要な営業許可書に関する事項
- 主要取引先
- 具体的な売上・利益計画
- 売上・利益計画の根拠
決算状況について
決算状況は単年度のみで判断されるものではありません。決算状況を下記のとおり分類し、それぞれで判断が変わります。
- 直近期末において剰余金がある場合又は剰余金も欠損金もない場合
- 直近期末において欠損金があるが、債務超過となっていない場合
- 直近期末において欠損金があり債務超過であるが、直近期前期末は債務超過ではない場合
- 直近期末・直近期前期末ともに債務超過である場合
- 直近期・直近期前期ともに売上総利益がない場合
(用語の解説)
- 直近期:直近の決算が確定している期を指します。
- 剰余金:法定準備金を含むすべての資本剰余金及び利益剰余金を指し、「貸借対照表」から判断されます。
- 欠損金:期末未処理損失、繰越損失を指し、「賃借対照表」から判断されます。
- 債務超過:負債が資産を上回った状態を指し、「貸借対照表」から判断されます。
- 売上総利益:純売上高から売上原価を差し引いた金額を指し、「損益計算書」から判断されます。
直近期末において剰余金がある場合又は剰余金も欠損金もない場合
直近期において純利益があって剰余金が存在する場合は事業の継続性に何ら問題はありません。また直近期に純損失となった場合でも剰余金が減少しただけで欠損金まで至らない場合も事業の継続性があると認められます。
直近期末において欠損金があるが、債務超過となっていない場合
事業計画を検めて、今後1年間の予想収益を含めた事業計画書を提出することになります。事業が行われていることに疑義があるなどの場合を除いて、原則として事業の継続性があると認められます。
事業計画書の内容によっては、追加資料として第三者が評価した書面を求められ、審査が厳しくなる場合もあります。
この第三者とは中小企業診断士や公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する者です。
直近期末において欠損金があり債務超過であるが、直近期前期末は債務超過ではない場合
債務超過状態は、一般的に企業としての信用力が低下し、事業の存続が危ぶまれる状況であると判断されます。
しかし債務超過が直近期のみの場合は、中小企業診断士や公認会計士が評価した具体的な改善の見通しを記述した書面を提出し、事業の継続性を判断されます。
直近期末・直近期前期末ともに債務超過である場合
基本的には事業の継続性がないと判断されます。
ただし、増資やほかの企業からの救済等、何かしらの金銭的な改善策があれば認められる場合もあります。
直近期・直近期前期ともに売上総利益がない場合
売上高が売上原価を下回るということは、通常の企業活動を行っているものとは認めれないと判断されます。
なお、営業外損益や特別損益による利益は本来の業務から発生するものではないので含まれません。
ただし、増資やほかの企業からの救済等、何かしらの金銭的な改善策があれば認められる場合もあります。
ビザ基準省令
1号:事業所の確保
外国人が経営・管理に従事する事業所が日本において確保されていなければなりません。そして事業所であれば何でもよいわけではなく、下記のすべてを満たすものではなければなりません。
- 区切られた一区画を占めて、事業者により経営活動が行われていること
- 一区画において継続的に人と設備を有していること
つまり、住居用の中に明確な区分けもないような場合や、短期間契約のレンタルスペース等、容易に処分できる屋台等の施設の場合は経営管理ビザ上の事業所としては認められません。住所と電話番号を借り受けるバーチャルオフィスのようなものも認められません。
具体的には下記の事に注意して事業所を確保する必要があります。
- 賃貸契約書の名義が法人であること(個人事業の場合は経営者であること)
- 賃貸契約書の使用目的の条項に、「事業用」「店舗」「事務所」などの記載があること
- 賃貸借契約の期間が短期間ではないこと
- 役員および従業員数に対して適正な広さを有すること
また、特に住居用賃貸物件の一部を事業所として使用する場合には下記の注意が必要です。なお、この場合は住居用賃貸の借主が法人へ一区画を転貸借する形態となります。
- 賃貸契約書上で、住居目的以外での使用を貸主が認めていること
- 賃貸契約書上で、転貸借されることを貸主が同意していること
- 転貸借契約書上で、法人が事業所として使用することを認めていること
- 転貸借契約書上で、公共料金等の共用費用の支払に関する取決めが明確になっていること
- 事業スペースが明確に区分され、事業占有スペースであること
- 事業占有スペースに電話・PC・デスク等の業務を遂行するために必要な設備が備わっていること
- 玄関のドア、ポスト、建物等に看板を掲げていること(マンションの場合は建物は不要)
2号:事業規模
経営管理ビザが認められるためには一定水準以上の規模であることが要求されます。
この一定水準以上とは、簡単にいいますと、「2名以上の常勤職員を雇用する規模」「出資金500万円以上の規模」「これらと同等の規模」の3つです。
要件ロ
この中では「出資金500万円以上の規模」であることが最も立証しやすく、審査もスムーズです。立証は法人の登記事項証明書を提出して行いますが、一目見ればわかります。
要件イ
「2名以上の常勤職員を雇用する規模」については、経営管理ビザを取得する予定の外国人を除いて2名以上雇わなければなりません。さらに、「常勤職員」に該当するか否か、「常勤職員のビザまたは国籍」は何か、について審査されます。
まず常勤職員は下記ビザまたは国籍を有する日本居住者である必要があります。
- 永住者
- 特別永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
- 日本国籍
次に「常勤職員」とは、下記のような者を指します。
- 労働日数が週5日以上、かつ、週労働時間が30時間以上、かつ、年間217日以上の者
- 雇用保険の被保険者
- 労働基準法に基づき、年次有給休暇が付与されていること
要件ハ
「これらと同等の規模」とは、下記の2パターンがあります。
- ① 「常勤職員が1名」+「出資金250万円以上」の規模
- ② 個人事業として500万円以上を投資して事業を営む規模
①の常勤職員については前述したとおり「常勤職員」として認められる雇用でなければなりません。
②については新規事業の場合は下記の目的で投資された分の総額をもって判断されます。新規事業以外の場合は直近期における決算文書を見て、500万円以上の投資が継続していることが必要です。
- 事業所の経費
- 雇用する職員の人件費(役員、常勤・非常勤は問わない。経営ビザの申請人の役員報酬は含まない)
- その他の経費(事務機器購入経費・事業所維持に係る経費など)
ただし、個人事業の場合を除き、この要件に該当することを立証してビザ申請に挑むのはあまり推奨できません。
3号:管理の場合
この要件は経営者として経営管理ビザを取る場合ではなく、比較的大規模な事業の管理者として経営管理ビザを取得する場合に求められる要件であり、「3年以上の経験」と「日本人と同等の報酬」がある必要があります。
この「3年以上の経験」には、日本・外国問わず、大学院において経営または管理に関する科目を専攻した期間を含みます。つまり大学院において2年間の経営コースを専攻し、その後経営者として1年間事業を営めば、この要件に該当することになります。3年の専攻期間があれば実務経験は不要となります。
「日本人と同等の報酬」については、例えば支店長に携わる外国人の審査の場合、他の支店の日本人支店長と比較して判断されます。他に支店が存在しない場合は、同一業種の一般的な報酬に照らし合わせて判断されます。
在留期間「4ヶ月」の経営管理ビザについて
この「4ヶ月」の経営管理ビザは平成26年に新設されたものです。
以前は海外在住の外国人が日本に会社を設立して経営管理ビザを取得する場合に、下記①の手順を踏む必要があったところ、在留管理制度の変更により、中長期在留者でなければ住民登録がされないようになったため、法人設立手続きが困難な状態となりました。
① 短期滞在ビザで来日→外国人登録→会社設立登記→経営管理ビザの認定証明書交付申請
そこで、下記②の手順を認めるかたちとなりました
② 「4ヶ月」の経営管理ビザの認定証明書交付申請→来日→住民登録→会社設立登記→経営管理ビザの更新許可申請
ただし、②の場合でも「4ヶ月」の経営管理ビザの認定証明書交付申請においての必要書類として、「会社の設立がほぼ確実に見込まれることがわかる書類」が必要であり、事業所の確保や定款などを進めるためにどちらにしろ短期滞在ビザで事前に来日する必要があります。
他のビザとの区別
技術・人文知識・国際業務ビザ
経営管理ビザは事業の意思決定権を有する経営者に付与されるビザであり、地位としては出資している取締役または代表取締役が該当します。
一方、技術・人文知識・国際業務ビザの場合は、経営の意思決定をしない、会社と契約する一般従業員や役員報酬を得る取締役が該当します。
重複する場合は基本的には経営管理ビザが該当することになりますが、経営活動に従事する割合が少ない場合は技術・人文知識・国際業務ビザとなる場合もあります。
なお、出世により技術・人文知識・国際業務ビザを有する外国人が経営者となった場合は、直ちに経営管理ビザに変更しなければならないというわけではなく、在留期限の満了時にそこで審査することになります。
法律・会計業務ビザ
法律・会計業務ビザは弁護士や公認会計士などの国家資格をもって法律業務に携わる外国人に付与されるビザです。
そして、弁護士事務所や公認会計士事務所を経営するような場合も法律・会計業務ビザが該当することになり、経営管理ビザではないことに留意する必要があります。
医療ビザ
医療ビザは医師や歯科医などの国家資格をもって医療業務に携わる外国人に付与されるビザです。
法律・会計業務ビザとは異なり、病院や歯科医院を経営するような場合は経営管理ビザが該当し、医療ビザではないことに留意する必要があります。
付与される経営管理ビザの在留期間について
5年が付与される基準
下記の①②③④、または、①②③⑤に該当することが必要です。
- ① 入管法の届出義務を遵守していること
- ② 義務教育機関の子が居る場合は、子がきちんと通学していること
- ③ 在留予定期間が3年を超えること
- ④ 経営または管理する機関がカテゴリー1またはカテゴリー2であること
- ⑤ カテゴリー3以下であり、かつ、3年の経営管理ビザを有し、かつ、日本で継続的に5年以上経営管理ビザの活動に従事している
3年が付与とされる基準
下記の①、または②、または③のいずれかに該当することが必要です。基本的にカテゴリー2以上(法定調書合計表が1500万円以上)とならなければほとんど認められません。
① 下記のabcd、または、abceに該当すること
- a.入管法の届出義務を遵守していること
- b.義務教育機関の子が居る場合は、子がきちんと通学していること
- c.在留予定期間が1年を超え、3年以内であること
- d.経営または管理する機関がカテゴリー1またはカテゴリー2であること
- e.カテゴリー3以下であり、かつ、3年の経営管理ビザを有し、かつ、日本で継続的に5年以上経営管理ビザの活動に従事している
② 5年の在留期間を決定されていた者が在留期間更新の際に、5年基準の①②のいずれかに該当しなくなった者であり、在留予定期間が1年を超える者
③ 5年、1年、4月又は3月の項のいずれにも該当しないもの
1年が付与とされる基準
他の付与基準に該当しない場合はほとんどがこの1年ビザが付与されます。
特に3年の経営管理ビザを有していたもので、入管法上の届出義務などを怠ると1年ビザに降格になることには留意が必要です。
また、経営状況等により3年から1年に降格する場合もあります。
4月が付与とされる基準
新たに会社を設立する場合で、登記事項証明書の提出がない場合にこの4ヶ月の経営管理ビザが付与されます。
3月が付与とされる基準
在留予定期間が3ヶ月以内で、かつ、4月基準に該当しないもの