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2017年入管内部基準に記載されている、「永住者・永住ビザ(永住権)の審査の取扱い」について記載します。

永住ビザについての概要

永住ビザを外国人に付与する趣旨は下記の2点です。

  • その後の一生涯において日本に生活の本拠を置いて過ごす者に対して永住ビザ付与を想定
  • 日本へ入国・在留を促進すべき高度人材外国人へのインセンティブとしての永住ビザ付与を想定

審査のハードルは他のビザよりも高いです。なぜなら永住ビザを付与された外国人は、その後の活動と在留期間に制限はなく、在留資格の更新申請における審査の機会が失われることから、永住許可の審査が入管における最終審査になるからです。

永住ビザの許可に関する基礎的な考え方は、下記2点です。そして何をもって「問題がなく」と判断するかが具体的な要件となります。

  • 相当期間日本に在留した間の在留状況に「問題がない」
  • 将来にわたってその在留に「問題がない」ことが想定されること

なお、入管特例法に規定される特別永住者は永住ビザとは異なります。特別永住者は法第2条の2第1項に定める「他の法律に特別の規定がある場合」に該当し、入管法別表第二所定の「法務大臣が永住を認める者」には当たりません。

永住ビザの法律要件

概要

入管法第22条第2項に従って、永住ビザの法律要件は下記の3つに整理されます。

  • ①素行善良要件:素行が善良であること
  • ②独立生計要件:独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
  • ③国益要件:法務大臣が日本国の利益に合すると認めたこと(居住年数等を含む)

基本的にはほとんどの外国人は上記3つに該当しなければなりませんが、下記の場合には③の国益要件のみを満たせばよいとされています。

  • 日本人の配偶者
  • 日本人の子
  • 永住者の配偶者
  • 永住者の子
  • 特別永住者の配偶者
  • 特別永住者の子

なお、「子」は実子・(普通)養子・特別養子を含みます。

また難民認定を受けた外国人の場合は①の素行善良要件と、③の国益要件を満たせばよいです。

3つの要件の解説

素行善良要件

下記のすべてに該当しない者でなければなりません。

  • ①日本の法令違反で懲役・禁錮・罰金に処せられたことがある者。(注1)
  • ②少年法による保護処分(1号・3号)が継続中の者。(注2)
  • ③違法行為や風紀を乱す行為を繰り返し行うなど、素行善良と認められない事情がある者。(注3)
(注1)

「刑の消滅の規定の適用を受ける者」又は「執行猶予の言渡しを受けた場合で当該執行猶予の言渡しを取り消されることなく当該執行猶予の期間を経過し、その後更に5年を経過した者」は、これに該当しないものとして扱われます。

刑の消滅の規定とは下記のとおりです。(刑法第34条の2)

  • (1)禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで10年を経過したときは、刑の言渡しは効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで5年を経過したときも、同様とする。
  • (2)刑の免除の言渡しを受けた者がその言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで2年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。
(注2)

保護処分の1号とは保護観察所の保護観察に付することであり、3号とは少年院に送致することです。

(注3)

「①日本の法令違反で懲役・禁錮・罰金に処せられたことがある者」に該当しないような軽微な法令違反であっても同様の行為を繰り返し行うような場合や、地域社会に多大な迷惑を及ぼす活動を繰り返し行う者が該当します。

例えば、交通違反の反則金は罰金ではありませんが、何度も繰り返すような場合にはこれに該当します。また反則金や罰金がなくとも街宣活動などで何度も指摘を受けているような場合にもこれに該当します。

独立生計要件

下記の両方を満たす必要があります。

  • ①日常生活において公共の負担となっていない
  • ②職業・収入・資産等から見て将来において安定した生活が見込まれる

①においては、生活保護を受けていないこと、納税義務を果たしていること、公的年金や社会保険などの納付義務を果たしていることが必要です。

そして②においては、将来的に①の状態が継続すると見込まれる職業・収入・資産を有することが必要です。

なお、この独立生計要件は世帯収入で判断されます。申請人自身が収入ゼロでも配偶者などの収入によって許可となる場合があります。また収入や資産については明確な基準があるわけではありません。子などの扶養者が多ければ、より多くの資産や収入が求められます。

国益要件

次のすべてに該当することが求められます。

  • ①居住要件:定められた期間、日本に居住していること(注1)
  • ②法令遵守要件:納税義務や公的年金、社会保険などの公的義務を履行していることを含め、法令を遵守していること(注2)
  • ③公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと(注3)
  • ④著しく公益を害する行為をするおそれがないと認められること(注4)
  • ⑤公共の負担となっていないこと
(注1)

下記の両方を満たす必要があります。

  • (1)現在留資格の在留期間が3年以上であること
  • (2)下記のとおり定められた一般原則の期間、または特定の者に関しては特例期間、日本に在留していること

一般原則:継続10年以上在留し、かつ、このうち5年以上が就労系ビザまたは身分系ビザであること(※1 ※1.1)

特例期間:下記に該当する期間。なお、2つ以上に当てはまる場合は申請人にとって有利な方が適用されます。

  • 「日本人・永住者・特別永住者」の「配偶者」:結婚期間3年以上+継続在留期間1年以上(※2)
  • 「日本人・永住者・特別永住者」の「実子・特別養子」:継続在留期間1年以上(※3)
  • 定住者:定住者ビザを取得してから数えて継続在留期間5年以上(※4)
  • 高度専門職ポイントが70点以上の高度専門外国人:申請時点からさかのぼって3年間継続して70点以上であること(※5)
  • 高度専門職ポイントが80点以上の高度専門外国人:申請時点からさかのぼって1年間継続して80点以上であること(※6)
  • 難民の認定を受けている者:継続在留期間5年以上
  • インドシナ定住難民:定住者ビザを取得してから数えて継続在留期間5年以上
  • 構造改革特別区域内の特定事業者:事業が日本への貢献性が高い+継続在留期間3年以上
  • 地域再生計画区域内の公私機関における特定活動ビザ(告示36号・37号)の者:活動が日本への貢献性が高い+継続在留期間3年以上
  • 外交・社会・経済・文化等の分野で日本への貢献性が高い者:継続在留期間5年以上(※7)

※1 就労ビザでも身分系ビザでもないとは、留学ビザ・文化活動ビザ・研修ビザ・家族滞在ビザを指します。ただしこれらのビザであっても家族と共に申請し、「永住者の配偶者」となることが見込まれる場合には同時申請が可能です。

※1.1 「10以上の在留」や「5年以上の就労系ビザまたは身分系ビザ」という要件は絶対的な要件ではありません。これらに満たない場合でも申請人の在留状況・家族状況・日本への貢献度等を考慮して特別に認められる場合もあります。例えば下記の例があります。

  • 「日本で生まれた者や親と一緒に日本に入国した者」かつ「義務教育の大半を日本の学校で過ごした者」
  • 親や配偶者について永住ビザが許可相当であり、それらの者と同一世帯に所属する配偶者や子
  • 元々、永住ビザや特別永住資格を有してた者が、海外留学や病気等のやむを得ない事情でその資格を失っていた場合で、現在は何かしらのビザを有している者
  • 元々、就労系ビザまたは身分系ビザを有してた者が、出国中に病気等のやむを得ない事情でその資格を失っていた場合で、現在は同一の資格を再取得しており、合計で10年以上の在留となる場合

※2 実体を伴う結婚であることを要し、同居しているかどうかなどについて申請人の配偶者にも確認して事実認定を行われます。また扶養関係にあるかどうかは要求されません。

※3 扶養関係にあるかどうかは要求されません。また年齢制限もありません。しかし学生または就職活動中または社会人であることを要し、一般的な社会生活を行っていない場合は公共の負担になる恐れがあるとして条件に適合しません。

※4 離婚定住のような「日本人の配偶者等」ビザから「定住者」ビザに変更があった場合は、「日本人の配偶者等」ビザの在留期間も含めてもよいとされております。

※5 高度専門職ビザを取得して3年以上継続して日本に在留している、または、永住許可申請日から3年前の時点において70点以上である必要があります。さらに申請日の時点でも70点以上である必要があります。

※6 ※5の「70点」を「80点」と置き換えて読んでください。

※7 「我が国への貢献」に関するガイドラインを参照してください。

(注2)

納税申告だけではなく、遅滞なく納税義務を完納していることが求められます。ただし、会社員などの場合は事業者が代わりに納付しますが、事業者都合で納税義務を果たしていない場合は、そのことをもって不許可となるわけではありません。

また申請人が扶養を受けている場合、扶養している側も公的義務なども含めて法令を遵守している必要があります。

(注3)

特定の感染症疾患者や慢性中毒者などが公衆衛生上有害となるおそれがあるとして取り扱われます。

(注4)

過去と現在の状況を総合に判断して将来的に公益を害する行為をしないだろう推察されることが必要です。考えとしては前述した素行善良要件の①②③に該当しないことが重要です。

その他注意点

継続在留期間と出国期間の関係

永住ビザを取得するためには継続した在留が10年以上必要であったり、特例によって3年以上等と定めれらております。この間に出国した場合にリセットされるのか否かについてよく問い合わせを受けます。

よくネット情報などで6ヶ月などの情報が出回っていますが、正確には期間だけで判断されるものではありません。

日本に生活基盤がないような場合でも、長期出国の理由・過去の出国期間・家族状況・今後の日本における活動及び生活の計画などを総合的に判断されます。

例えば、会社員として就労ビザを有している外国人が、会社から長期出張の支持があった場合で、支持のあった長期出張期間終了後は日本で生活すると見込まれる場合は、合理的な理由として判断されます。また、日本で生活していた外国人が災害により家を失う等特別な事情で日本から出国せざるを得なかった場合もやむを得ない事情があったとして認められる場合があります。

永住許可申請中における現在留資格の期限に関する注意

在留期間更新許可申請の場合は、在留期限ギリギリで申請しても特例期間として2か月間の在留延長がなされます。しかし永住許可申請の場合はそのような特例期間の適用ありません。従って、永住許可申請中であっても在留期限が切れそうな場合は、在留期間更新許可申請をしなければなりません。

家族滞在ビザを有する子がいる者が単独で永住ビザ申請をする場合の注意

家族滞在ビザの該当性は「技術・人文知識・国際業務」ビザなどの就労ビザを有する者から扶養を受けて日本で生活をする必要がありますが、永住ビザを有する者から扶養を受ける場合は家族滞在ビザの該当性を満たしません。

このような場合は家族滞在ビザから定住者ビザへ在留資格変更を検討することになりますが、子が成人に達してしまっている場合などはこれも適用できません。

こうなると家族滞在ビザを有する子はどのビザにも該当しない状況となってしまいます。

永住ビザを他のビザに在留資格変更をする

基本的に永住ビザは活動内容や在留期間において優遇されているので、永住ビザから他のビザへ変更するメリットはあまりありません。しかし家事使用人や親の帯同という点では高度専門職ビザや経営管理ビザに変更するメリットがある場合があります。

このような場合には、要件に適合し、かつ、変更する理由に合理性があると認められれば許可されます。

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