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外国人を適正にサポートし在留許可へ向けて実務をこなすビザ専門行政書士の私としては、入管側の審査に対する考えや組織を理解しておきたいものです。
ここでは、2017年入管内部基準に記されている、入管側の審査に関する心構えや留意点、組織のかたちと役割について記述します。

入国・在留審査の心構え

在留審査の目的は下記の2つの両方を達成することです。

  • 日本の外国人受入れ政策・方針に合致する外国人を円滑に受入れること
  • 日本の外国人受入れ政策・方針に合致しない外国人を確実に拒むこと

この2点を根柢の考えとして入管審査官は皆様の在留申請を審査します。

また、入管の場所によって、また、審査官によって、異なった基準で審査するべきではなく、法律・規則・通達・省令などを熟知して審査を遂行すべきとあります。

そして審査の流れは、①事実認定→②その事実を法律・規則にあてはめ→③処分をすることです。この過程においては,極力入国審査官等の主観や価値観を排除し、ダブルチェック・トリプルチェックでなされることが必要であると考えられています。

入国・在留審査の留意点

すべての審査手続に共通して、下記の事項を留意すべきと入管は考えています。

在留資格の活動範囲や上陸許可基準を理解する

的確に事実認定を行う

行政処分は、法令に基づく許認可の要件に適合するかを判断して行う必要がありますが、その前提として、当該要件に当てはまる事実の存否が問題となります。この事実認定が客観的・公正に行われることが、適正な行政処分を行う上で何よりも重要です。具体的には、次のそれぞれの手法により、的確な事実認定を行われます。なお、申請人に不利益な事実については、可能な限り申請人に反証の機会を与えることとしています。

  • 立証資料(書類)による事実認定
  • 申請人が提出した資料・入管が法令に基づいて収集した資料に基づき、事実認定を行います。その際、まずはその文書の真偽の判断を行い、提出書類が真正であると認定する場合には、客観的事実の積重ねにより当該書類の記載内容の真偽について判断します。

  • 実態調査による事実認定
  • 1.について書面審査を行った後、更に事実を確認する必要があるときは、電話・面接・実地調査などの実態調査が行われます。

  • 蓄積した情報による事実認定
  • 中長期間在留する外国人に関する情報を,継続的・一元化に把握し、それらの関連情報を綿密に収集し,丁寧に分析することにより,的確な事実認定に活かします。つまり、関連情報は申請1件に使用されてその役割を終えるのではなく,蓄積されてさらに幅広く活用されることになります。

  • 社会通念・常識による事実認定
  • 1~3までの事実認定に際して,判断に迷うことがあれば,最終的には社会通念,社会常識によって判断されます。

認定した事実を法律・規則に当てはめる

前記のようにして事実を確認した上で,最後にその事実を法律・規則等に当てはめます。

この際、他の行政処分と同様、行政処分については,法令が明示する要件以外の要件は一切あり得ないとされています。しかしながら、入管法での多くの法要件が「適当と認めるに足りる相当の理由」という文言が多いことから、審査官にある程度の裁量が認められております。しかしそれでも画一的に審査すべく、各種ガイドラインが公表されており、当該ガイドラインに沿って裁量判断するものとされています。

裁量が認められているからと言って、恋意的な判断や適正な事実認定に基づかない判断が認められるものではありません。適正な事実認定に基づき,適正・公平に判断することが必要です。

適切な処分を行う

法令の明文の規定に基づき適切に処分します。処分に係る裁量判断で迷うことがあれば,規則法令の制定背景・趣旨、さらには政策的背景をしっかりと理解して対処しなければなりません。それでも迷う場合は社会常識・社会通念により判断を行います。

不利益処分をする場合は、いずれの要件に適合しないか明示しなければならないとされています。本来、入管審査は行政手続法の除外分野であり、法律上の明示義務はありませんが、これは自主的配慮として、内部基準として明示義務を負っています。また、特定の国籍等に属することをもって一律に不利益処分を行う等、法令の定める要件に適合しないこと以外の理由により不利益処分を行うことはできません。

手続の在り方

「外国人の出入国,難民の認定又は帰化に関する処分及び行政指導」は、行政手続法の適用除外です。しかしながら、行政手続法の目的に掲げる行政運営における公正の確保と透明性の向上を入管行政が志向しなくていいはずはなく,行政手続法に定める各規定は可能な限り噂重すべきであるとしています。

各部門組織の在り方と機能

組織のかたち

入管組織は下記の役職のピラミッド構造となっております。

  • 首席審査官
  • 統括審査官
  • 上席審査官
  • 一般審査官

そしてそれぞれの役割は以下の通りです。

各役職の役割

首席審査官の役割

  • 部門を適正に運営すること
  • 本省からの審査方針及び指示の把握と必要な措置をとること、部下職員の指導
  • 部門の意思決定において最終判断を行い、また、部下が行った処分を検証し,必要な措置及び指導を行う
  • 部門内の諸状況を総合的に把握し,適時次長や審査監理官等に報告する
  • 各部門間又は出張所との事務の調整を図る
  • 部門の業務に関する対外的説明責任
  • (本局の首席審査官は)支局及び管下出張所の状況の把握、必要な指導の実施
  • (支局の首席審査官は)管下出張所の状況の把握、必要な指導の実施

統括審査官の役割

  • 部門次席として部門の適正な運営に貢献すること
  • 本省からの審査方針及び指示を理解し,部下職員を指導してその具体的実施を統括すること
  • 部下が行った処分を検証し, 必要な指導を行うこと
  • 部門の諸状況を十分把握し,適時首席審査官等に報告すること
  • 首席審査官を補佐するとともに,首席審査官に対して,部門の円滑な運営に資する提言を行うこと
  • 担当業務について,対外的な説明を行うこと

上席審査官の役割

  • 統括審査官が不在等の場合に,統括審査官に代わる役割を果たすこと
  • 本省からの審査方針及び指示を理解し,職員を指導すること
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