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平成28年3月1日から、外国の事業所から外国人の方を技術移転目的で受け入れ、生産活動に従事させることができる制度が始まりました。

この記事では、受け入れ可否に係る要件、手続きの流れ、審査期間、必要な書類、入管申請などについて解説します。

従来から存在する企業内転勤ビザの場合は生産活動に従事するいわゆる現業は認められません。また技能実習ビザとして受け入れる場合でも、様々な制限があります。

製造事業者にとっては非常に有効活用できる制度ではないでしょうか。

制度概要

平成28年3月1日から開始された制度であり、この製造業外国従業員受入事業制度を活用することにより、外国人を海外から受け入れて、本来入管法上原則的に禁止されている生産活動に従事させることが出来ます。

但し単に生産活動に従事する目的では認められず、あくまでも技術移転を目的とするものでなければなりません。

また、製造業外国従業員受入事業制度を活用して受け入れるためには、下記の要件をクリアしなければなりません。

  • 事業内容の要件
  • 事業者の要件
  • 受入れる外国人の要件
  • 受け入れる事業所の要件
  • 受入れる人数の要件

これらの要件をクリアして経済産業大臣の認定を受けることで、外国人を特定活動ビザで最大1年間受け入れることができます。

製造業外国従業員受入の要件

1.事業内容の要件

事業内容が製造業外国従業員受入事業制度の趣旨に合致することが必要です。趣旨に合致するとはおおむね下記に該当する必要があるとお考えください。

事業内容の観点

  • 受注条件に現地生産が課せられていること
  • 地産地消型の産業であって、日本からの輸出実績が現時点でない製品であること
  • 新規生産拠点の設置によって日本からの部品輸出の増加が見込まれること
  • 日本国内の生産体制・生産余力では対応できず、現地工場の新設、ライン増設・改良の必要があること

人材の観点

  • 受入外国従業員が技術移転を受ける者として資質・能力・役割を有していること
  • 受入人数が海外の生産拠点の規模・生産能力等に鑑み、必要な人数であること

製造業外国従業員受入事業制度の趣旨としては、日本の製造業の海外進出が進んでいる状況を鑑みて、国内拠点に関しては研究開発や設備投資を強化し、それを海外拠点へ技術移転させ生産拠点とするというような、日本と海外の拠点の役割分担を図り、日本の製造業の国際競争力を高める事を目的とします。

そして製造業外国従業員受入事業の実施によって、日本の生産拠点が海外に移転してしまい、空洞化が促されるような場合は、日本の従業員雇用が減少するために適当ではないとされます。

また、受入れる外国人についても、外国の生産拠点で中心的役割に従事する事が見込まれる人材を日本に受け入れて技術承継させるものであって、単なるワーカーを受け入れて単純労働をさせる場合は、製造業外国従業員受入事業制度の趣旨に合致しません。

2.事業者の要件

事業者が経済産業省所掌の製造事業者であることが必要です。製造事業者であっても他省所掌の場合は認められません。

例えば、経済産業省所掌の製造事業者とは、航空機・自動車・武器・フィルム・貴金属加工・エネルギー等の製造に係るものがあります。

他所掌の製造事業者とは、おおまかに下記のようなものがあります。共通所掌であったり木材であっても一定の場合には経済産業省所掌となる場合など細かく区分されていますので詳しくは(参考)をご確認ください。

  • 農林水産大臣所管事業:木材・農器具・食品等
  • 厚生労働大臣所管事業:医薬品・食品・化粧品等
  • 国土交通大臣所管事業:運送・一部船舶製造・舶用機器製造・鉄道車両製造・建設
  • 総務大臣所管事業  :通信工事
  • 環境大臣所管事業  :廃棄物処理業

(参考)各事業所管大臣の所管事業一覧

3.外国事業所職員の要件

外国にある事業所職員とは、特定外国従業員受入企業の外国にある同一法人の事業所の他、特定外国従業員受入企業の子会社・関連会社から転勤又は出向する者を指します。

また、転勤・出向前の外国の事業所において、継続1年以上勤務している必要があります。

さらに受入れ後は、同等の技能を有し、同等の生産活動に従事する日本人と、同等の報酬を受けなければなりません。

なお、子会社や関連会社の定義は、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則-第8条第3項・第5項」に基づきます。

簡単に説明すると、子会社とは、特定外国従業員受入企業が過半数の議決権を所有している会社又は意思決定機関を支配している会社であり、関連会社とは、特定外国従業員受入企業が 20%以上の議決権を所有している会社又は財務、営業、事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる会社とされています。

4.国内受入事業所の要件

特定外国従業員受入企業の事業所の他、特定外国従業員受入企業の子会社の事業所も含みます。

外国事業所とは異なり、関連会社は含まないことに注意が必要です。

5.受入れ人数の要件

外国の生産拠点の視点からは、外国の生産拠点で中心的役割に従事する事が見込まれる真に必要な人数である必要があります。

国内の受け入れ事業所の視点からは、常勤職員数からの制限があり、「計画認定による受入人数」が「当該事業所の常勤職員数」を超えてはいけません。

「計画認定による受入人数」とは既に計画認定により受入れ中の外国人と、これから計画認定の申請にあたって受け入れる人数を含みます。また、「当該事業所の常勤職員数」とは、日本人・外国人の人数を含みますが、計画認定による受入れ外国人の人数は含みません。

手続きから帰国までの流れ

①経済産業省へ計画認定申請→

②入管へ計画認定報告→

③入管へ在留資格認定証明申請→

④在外日本公館へ査証申請→

【受入開始】→

⑤3ヵ月に1回、経済産業省・入管へ報告→

【受入終了】→

⑥経済産業省・入管へ帰国時報告→

⑦経済産業省へ帰国1年後報告

審査期間

計画認定の審査に約1ヵ月程度かかります。

また在留資格認定証明書交付申請においても約1ヵ月程度かかります。在留資格認定証明書交付申請は標準機間が1ヵ月~3ヵ月となっていますが、計画認定の段階である程度の審査がされるので、在留資格認定証明書交付申請の審査はそこまで長くかかりません。

さらに、特定活動ビザの認定証明書を受け取ってから、外国に送付して査証が下りるまで約15日程度必要となります。

申請書の準備も含めて合計3ヵ月程度必要であると想定しておいた方が良いでしょう。

計画認定申請の申請単位について

同一のプロジェクト単位で申請することができ、特定外国従業員1名ごとに申請をする必要はありません。

なおプロジェクトの同一性とは、技術移転の必要性の根拠が共通である場合、つまり、海外の新設工場等の設立や生産ラインの拡大・改良という1つのプロジェクトの一環で受け入れる場合に認められます。

判断に迷う場合は、申請の前に業種別相談窓口に確認したほうがいいでしょう。

プロジェクトの同一性について事例として紹介すると、

  • 現地生産工場を新設する場合に技術移転目的として10人ずつ2回に分けて受け入れる場合は同一性が認められます。
  • 1度に20人受け入れる場合でも、10人は技術移転目的、10人は管理手法移転目的の場合は同一性は認められません。

複数人をまとめて計画認定申請する注意点について整理すると、下記の事項が挙げられます。

  • 受入期間・受入時期は同一である必要はない
  • 移転する技術の内容は同一である必要はない
  • 受け入れ後の報告については認定された計画単位で行う
  • 1人でも計画変更があれば個別に変更にかかる認定が必要

計画認定申請の提出書類一覧

主となる申請書類

  1. 製造特定活動計画認定申請書(様式第1号)
  2. 製造特定活動計画(様式第1号 別紙)
  3. 製造業外国従業員受入事業に関する事項(様式第1号 別紙1)
  4. 特定外国従業員になろうとする者に関する事項(様式第1号 別紙2)
  5. 製造業外国従業員受入事業に係る実施体制図(様式第1号 別紙3)

添付書類

  1. 特定外国従業員受入企業の登記事項証明書
  2. 特定外国従業員受入企業の海外の生産拠点において実施する事業内容が確認できる書類
  3. その他、特定外国従業員受入企業の海外の生産拠点に関する内容が告示第3の趣旨に合致すると判断する為に必要と認められる書類(必要に応じて)
  4. 特定外国従業員受入企業が、特定外国従業員と締結することを予定している雇用契約書及び雇用条件書の写し又はそれに準ずる書類
  5. 特定外国従業員受入企業と外国事業所との資本関係を確認できる書類
  6. 外国事業所の概要を明らかにする書類
  7. 企業買収の事実が確認できる書類(必要に応じて)
  8. (特定外国従業員になろうとする者を受け入れる事業所が特定外国従業員受入企業になろうとする者の子会社である場合)特定外国従業員になろうとする者を受け入れる事業所と特定外国従業員受入企業になろうとする者との資本関係等が確認できる書類
  9. 特定外国従業員毎の業務計画
  10. 同等の技能を有し・同等の生産活動に従事する日本人の報酬額が確認できる書類
  11. 特定外国従業員の勤務年数が確認できる書類
  12. 特定外国従業員を受け入れる事業所ごとの常勤職員数を明らかにする書類
  13. 特定外国従業員受入企業になろうとする者の直近の損益計算書及び貸借対照表

在留資格に関する内容

在留期間として、個々の特定外国従業員の製造特定活動の期間は最大1年です。入国時に6ヵ月の特定活動ビザが付与されて、1回に限り更新が可能です。

なお、製造業外国従業員受入事業により本邦に在留する特定外国従業員は、家族を帯同することはできません。

また、計画認定が許可されたことをもって、在留資格認定証明書が交付されることを保証するものではない事には注意が必要です。

在留資格認定証明書交付申請の必要書類

  1. 在留資格認定証明書交付申請書
  2. 写真(縦4 cm ×横3 cm)
  3. 返信用封筒(定形封筒に宛先を明記の上、送料分の切手(簡易書留用)を貼付したもの)
  4. 告示第4の認定を受けた製造特定活動計画認定証の写し
  5. 雇用契約書の写し
  6. 申請人(特定外国従業員になろうとする者)の履歴書
  7. 申請者の身分を証する文書(パスポートの写し等)
  8. 特定外国従業員受入企業の概要が確認できる書類
  9. 特定外国従業員受入企業の外国にある事業所と特定外国従業員になろうとする者との間で締結された契約書等の写し(本国の所属機関が作成し、申請人に交付した出向命令書、転勤命令書・辞令など)

在留機関更新許可申請の必要書類

  1. 在留期間更新許可申請書
  2. 旅券及び在留カード(提示)
  3. 告示第4の認定を受けた製造特定活動計画認定証の写し
  4. 在籍証明書
  5. 住民税の課税(又は非課税)証明書及び納税証明書(1年間の総所得及び納税状況が記載されたもの)
  6. 申請者の身分を証する文書(申請取次者等が申請を提出する場合)

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