強制送還・・・
それは外国人の方にとって、日本でこれまで培った生活環境を失い、家族と離れ離れになり、仕事も失ってしまう最も避けるべき重大なものです。
日本から強制送還されないために、まずは強制送還についてしっかりと理解しておきましょう。
この記事では、国外強制送還について理解するべき5つの事について解説します。その5つの内容は下記のとおりとなっていますので、興味のある方はこのまま読み進めてください。
- 強制送還とは
- どんな場合に強制送還になる?―退去強制事由―
- 強制送還の流れ
- 強制送還と出国命令の違い
- 強制送還されそうになった場合の対処
また、下記キーワードについても気になった方はこのまま読み進めてください。
- 仮放免許可
- 在留特別許可
強制送還とは
強制送還とは、適法に在留していない外国人を強制的に国外に送還する制度です。
なお正式な名称は退去強制といいます。他にも退去命令や強制退去、国外退去とも呼ばれることがありますが、一般的に広く認知されているのは強制送還という言葉だと思います。従ってこの記事では強制送還と表記します。
この記事ではどんな場合にが強制送還の対象となるのか、また強制送還の手続きの流れ、似た制度である出国命令について解説します。
どんな場合に強制送還になる?―退去強制事由
強制送還の対象となる者は出入国管理及び難民認定法24条に定められています。
簡潔に言うと、下記のような外国人が対象となります。
- 不法に入国した者
- 適法に在留したが、在留資格を取り消された者や在留期限が過ぎた者(オーバーステイ)
- 適法に在留したが、本来の活動をせずに専ら資格外活動を行っていた者
- テロ・偽造・破壊活動などの一定の犯罪に関与したもの
詳しくは、出入国管理及び難民認定法をご確認ください。
強制送還の流れ
強制送還になる基本的な流れは下記のとおりです。
- 1.調査のきっかけ
- ・第三者の通報・入管資料からの発覚・警察官の職務質問による発覚・本人の申告などが主なきっかけとなります。
- 2.入国警備官による違反調査
- ・形式は、摘発・出頭要請・本人自ら出頭する場合があります。
- ・この調査が完了して「容疑無し」ならそのまま在留継続となり、「容疑有り」なら入管の収容施設に収容される(身柄が拘束される)ことになります。
- 3.入国管理局収容施設に収容
- ・最長60日間収容され、さらに強制送還が決まれば出国まで無期限に収容されます。
- ・一定の場合は入国管理局により即時仮放免がされる場合もあります。
- ・外国人の側から仮放免許可の申請をすることもできます。仮放免許可については仮放免許可についてのすべてをご確認ください。
- 4.入国審査官による違反審査
- ・この審査が完了して「容疑無し」ならそのまま在留継続となり、「容疑有り」と判断された場合で、外国人が在留を希望するなら口頭審理を請求します。
- 5.特別審理官による口頭審理
- ・この審査で入国審査官の認定に誤りがないと判定された場合は、外国人から法務大臣へ異議を唱えることができます。
- ・口頭審理では、弁護士や行政書士などの代理人や、許可を得れば知人を1人立ち会わせることが出来ます。
- 6.法務大臣による裁決
- ・法務大臣が外国人の異議を認めた場合は在留継続となり、認めなかった場合は本来は強制送還となります。
- ・異議を認めなかった場合でも特別の事情により在留する事を認める「在留特別許可」がされる場合もあります。
- 7.退去強制令書の発付
- ・強制送還が決定され、強制送還が実施されるまで引き続き収容施設に収容されます。
それぞれの調査や審理の中で、在留したいという希望を主張せずに出国を希望する場合はその時点で審査は終了します。
また出国を希望する方がメリットのある場合もあり、詳しくは後述します。
出国費用については原則は外国人の方が負担します。しかしどうしても支払うことができない外国人の場合は、そのような強制送還対象者を集めてチャーター便で送還されます。
外国人の自費出国を原則とする理由は、出国費用を支払いたくない事を理由にわざと強制送還される外国人の方が増えるからです。
一方でどうしても支払うことができない外国人を、出国できないからと言って長期間収容することも、日本にとっては費用が掛かってしまいます。
従って上記のように原則は自費出国とし、ごく例外としてチャーター送還が検討されます。
強制送還と出国命令の違い
前項において、出国を希望する方がメリットがある場合があると述べました。
国外強制送還として出国した場合、強制送還後5年間は日本に再入国できません。(二度目の強制送還からは10年間となります。)
一方、強制送還ではなく特定の場合に出国命令の対象となった場合には、日本への再入国禁止期間が出国後1年間のみに緩和されます。
その出国命令の対象となる特定の場合とは、下記のような条件が必要です。
- 出国の意思をもって自ら自首出頭をしたこと
- 不法残留以外の強制送還事由に該当しないこと
- 懲役・禁固に処せられたものではないこと
- 過去に強制送還・出国命令を受けたことがないこと
- 速やかに日本から出国することが確実と見込まれる事
強制送還事由「不法残留」とは、在留資格取り消し後に未だ在留している者や、在留期間を過ぎた後も在留している者です。つまり、「不法残留」は「テロリスト」や「不法入国」などよりも軽微な強制送還事由とされており、緩和された出国命令の対象となり得ます。
出国命令により出国する場合は、収容されることなく出国準備に入る流れとなります。
強制送還されそうになった場合の対処
強制送還の対象となった外国人の方が日本に在留することを希望する場合は、唯一の手段として在留特別許可が残されております。
在留特別許可については在留特別許可のすべてをご確認ください。