このページの目次
この記事では家族滞在ビザを取得するための条件である「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」について解説します。
「在留資格該当性」と「上陸許可基準」については、在留資格認定証明書や在留期間更新の一般要件をご確認ください。
外国人が取得したい在留資格が本当に取得できるのか否か、また要件に適合せずに取得できない場合は、日本での在留を諦めるのではなく他の在留資格の要件に適合するか否か、これらを考える上で実務上はまずこの「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」を正確に把握して検討を進めなければなりません。
家族滞在ビザについて法で定められた「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」の解説に進めます。
家族滞在ビザの「在留資格該当性」
まず入管法別表第1の4に定める法文は下記の通りです。
一の表、二の表又は三の表の上欄の在留資格(外交、公用、技能実習及び短期滞在を除く。)をもつて在留する者又はこの表の留学の在留資格をもつて在留する者の扶養を受ける配偶者又は子として行う日常的な活動
法文の整理
入管法の定める家族滞在ビザの活動内容は、下記の在留資格保有者の「扶養」をうける配偶者・子が行う日常的な活動です。
- 「教授」「芸術」「宗教」「報道」「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「興行」「技能」「文化活動」「留学」
「外交」「公用」については、「同一の世帯に属する家族の構成員としての活動」と規定されているように、「外交」「公用」ビザ保有者の家族も「外交」「公用」が該当するので、除外されています。
「特定活動」については、個別の状況によっては、扶養を受ける配偶者・子にも「特定活動」ビザが決定されることになります。
「留学」については、注意する点があり、内容については後述します。
用語の定義・解説
では「扶養を受ける」や「日常的な活動」とは具体的に何なのか、「配偶者」には内縁等は含まれるのか、「子」には養子等が含まれるのかなど、法文を見ても分かりにくいと感じる方が多いと思います。これらについて詳しく解説を進めていきたいと思います。
「扶養を受ける」とは
扶養者について
まず本体人である扶養者の観点からは、被扶養者を扶養できる資金力がある事を要求されています。また、「留学」や「文化活動」などの非就労資格をもって在留する者の扶養を受ける場合は、被扶養者の在留期間中の生活費が確実に支弁される手段が存すると認められることが必要です。
ではその資金力の具体的な金額はいくらなのでしょうか?
これについては明確な基準はありませんが、就労資格に関しては、実務上は、下記に該当していなければ許可を受ける事が難しくなるとお考えください。(該当しなければ必ず不許可になるものでも、該当すれば必ず許可になるものでもありません。)
- 滞納している税金がない
- 月額18万円程度の定時収入があり、かつ、年収250万円程度ある
一方、留学等の非就労資格に関しては、これも明確な基準はありませんが、経費支弁能力=扶養能力とされています。
経費支弁能力については、留学生が住んでいる所の生活保護支給額1年間分を超える世帯資産を有していれば、1年間の生活費を賄える経費支弁能力があると認められる取扱となっています。
また、扶養者及び被扶養者が資格外活動許可の範囲内で行った就労活動(アルバイト)による預貯金を扶養能力として認められます。
さらに、第三者による援助についても、継続的なものであれば認めるとされています。
被扶養者について
被扶養者は扶養を受けるている事が要求されています。
被扶養者が配偶者である場合
配偶者については原則、同居を前提として、かつ、扶養者に経済的に依存している状態であることが必要です。
そしてこの「経済的に依存している」について、家族滞在ビザで在留する外国人は就労する事が出来ませんので、通常は「経済的に依存している」状態が多いでしょう。
しかし、資格外活動許可を受ければ、週28時間以内で収入を得る活動が出来るところ、時給が高ければ年収として数百万円になる可能性があります。(資格外活動許可の条件は1週間当たりの時間に対する縛りであって、金額面での縛りはありません)
これについても「経済的に依存している」状態を逸脱する明確な金額は存在しませんが、まず扶養者の収入を超えるような収入を被扶養者が得ていれば、在留資格該当性は失うでしょう。
では扶養者が300万円の収入で、被扶養者が250万円の収入ならどうか。また、扶養者が3000万円の収入で、被扶養者が300万円の収入ならどうか。
おそらく前者は「経済的に依存していない」と判断され、後者は「経済的に依存している」と判断されがちでしょう。
「経済的に依存している」という文言は、最低限の生活を維持できないから扶養者に経済的依存をする、というよりも、現状の生活をできないから扶養者に経済的依存をしている状態という意味に近いと考えられます。
なお「扶養」という言葉は、入管法上の「扶養」・税制法上の「扶養」・健康保険上の「扶養」等がありますが、これらは一致しているわけではありません。
つまり、例えば、被扶養者が103万円以上の収入を得て、健康保険上の「扶養」から外れた場合でも、それが入管法上の「扶養」にも該当しなくなるとは必ずしも言えません。
被扶養者が子である場合
子についても原則、同居を前提として、かつ、扶養者の監護養育を受けている状態のことを意味します。
従って、経済的に独立している子は在留資格該当性を失われます。
なお、20歳以上の子であっても、学生である等の理由で親の扶養を受けてい
る者は認められます。
「日常的な活動」とは
「日常的な活動」とは家事に従事する活動以外でも、教育機関で教育を受ける活動等も認められますが、、就労活動は認められません。
「家族滞在」ビザで在留する方が就労するためには、資格外活動許可を取得する必要があります。詳しくは、資格外活動許可に向けて理解するべき7つの基本をご確認ください。
また、配偶者又は子として行う「日常的な活動」と規定されている事から、原則として、扶養を与える側の扶養者が日本に在留する間に限って、扶養を受ける被扶養者も日本に在留することが出来ます。
正確には「家族滞在」ビザが期限を満了するまで、または、「家族滞在」としての活動を正当な理由もなく3ヵ月間行わずに在留資格を取消されてしまうまでは、適法に在留することが出来ます。
「配偶者」とは
「配偶者」には、現に婚姻中の者に限られますので、相手方の配偶者が死去した者や離婚した者は含まれません。また、内縁関係にある配偶者、外国で有効に成立した同性婚による者も含まれません。
「子」とは
「子」には、嫡出子のほか、普通養子、特別養子、認知された非嫡出子が含まれ、年齢制限も入管法上はありません。
ここで押さえておきたいことは、「普通養子」が認められる事、「年齢制限」が無いことです。
「日本人の配偶者等」ビザは、普通養子は認められず、特別養子のみしか認められません。また「定住者」ビザは、6歳未満の養子・実子のみしか認められません。
(ただこの事は入管法に対して疑念を感じざる負えません。
というのは、例えば、「教授」などの就労資格をもって在留する者は、20歳の普通養子を「家族滞在」ビザをもって連れてくることが出来ます。
しかし「教授」から、国益要件・素行要件・生計要件等を全て満たして帰化し「日本人」となった者が、外国にいる養子を迎え入れたい場合、「告示定住者7号」ビザが最も近いビザと考えられますが、この「告示定住者7号」は6歳未満という年齢要件付きであり、普通養子を迎え入れることが出来なくなるという問題が生じます。)
但し、「家族滞在」ビザでも年齢制限が無いものの、成年に達し、さらに年齢が上がるにつれて許可されにくくなる傾向にあります。
なお、「家族滞在」ビザは配偶者と子についてのみ認められる者で、親は認められませんのでご注意ください。親については、告示外特定活動の連れ親類型などがあります。
留意点
扶養者が子を呼び寄せる場合の注意点
既に扶養者が日本に居て、子を後から呼び寄せる場合には、「家族滞在」ビザを検討する事になりますが、これまでは監護養育の必要が無かったのにもかかわらず、これからは日本でなぜ監護養育の必要があるのかという疑義が生じます。
従って下記の事を合理的に説明する必要があります。
- これまで監護養育していた者は誰か
- 事情がどのように変わって、日本で扶養者が監護養育することとなったのか
「家族滞在」ビザ保有者が他のビザへ変更する場合の注意点
「家族滞在」ビザは前述した通り、扶養を受け、経済面で扶養者に依存しなければなりません。
しかし一旦、他の在留資格へ変更すれば、それは扶養者に依存する形ではなくなったとみなされます。
従って原則は、他のビザに変更した後に、再び「家族滞在」ビザに戻る事は認められないという事については注意が必要です。
家族滞在ビザの「上陸許可基準適合性」
家族滞在ビザの上陸許可基準について、基準省令の本文について解説します。
基準省令本文
基準省令本文に定められている法文は下記の通りです。
申請人が法別表第一の一の表若しくは二の表の上欄の在留資格、文化活動の在留資格又は留学の在留資格(この表の法別表第一の四の表の留学の項の下欄に掲げる活動の項第一号イ又はロに該当するものに限る。)をもって在留する者の扶養を受けて在留すること。
基準省令は、在留資格の活動内容の法文とほとんど同じ内容の事が記入されていますが、注意深く確認してみます。
①在留資格の活動内容では扶養者となる本体人の在留資格は下記のとおりです。
- 「教授」「芸術」「宗教」「報道」「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「興行」「技能」「文化活動」「留学」
②一方、基準省令では扶養者となる本体人の在留資格は下記のとおりです。
- 「外交」「公用」「教授」「芸術」「宗教」「報道」「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「興行」「技能」「技能実習」「文化活動」「留学(イロハの内のイロのみ)」
比較して確認してもらえると、①だけに含まれているビザが「留学(ハ)」、②だけに含まれているビザが「外交」「公用」「技能実習」、①②共に含まれていないのが「研修」「短期滞在」「特定活動」「身分資格」、その他は①②の両方に含まれております。
(留学ハとは、高等学校以下の留学生です。)
なぜこのような不一致があるのか不明ですが、「家族滞在」ビザが認められる為には①②双方に該当しなければなりません。
在留資格の取得条件 関連コンテンツ
- 在留資格認定証明書や在留期間更新の一般要件
- 技術・人文知識・国際業務ビザを取得するための条件
- 企業内転勤ビザを取得するための条件
- 技能ビザを取得するための条件
- 経営・管理ビザを取得するための条件
- 興行ビザを取得するための条件
- 留学ビザを取得するための条件
- 文化活動ビザを取得するための条件
- 日本人の配偶者等ビザを取得するための条件
- 定住者ビザを取得するための条件