過去には入管手続きやビザという分野で、多くの裁判が行われています。
一般の方が過去に行われたビザ関連の裁判まで理解する必要はありませんが、私どものようなビザ専門家にとっては知っておかなければならない重要な事柄です。
この記事では、ビザ関連の裁判例が私どもの業務にとってどのような武器となるかについて紹介します。
ビザ申請の入管による審査と裁判の関係
ビザ申請というものは、入管が裁量的に審査する色が強い分野です。裁量的とは、基準が厳格ではなく、入管職員が明確ではない要件の中で独自に審査するような事を言います。
従って、要件が厳格な許認可よりも、同じような状況の申請者に対して異なる処分が下される事や、行き過ぎた判断により不当な処分を受ける事も多くあります。
そのような不平等な判断や不当な判断に対して、時には裁判まで発展する事例も多々あります。そして、入管の判断が取り消された事例も多々あります。
私どものようなビザ専門家は、これらの過去に行われた裁判の判決文を理解した上で申請に臨むことになります。
確定された裁判の判決文というのは、一種の答えのようなものと考えることができます。裁判所が「入管がAと判断した点は間違い」と判決した場合、今後は「Aという判断は間違い」という拘束力が発生します。
しかしながら、ビザ手続きには多くの要件・基準・要領もあれば、過去から最新の裁判まで数多くの情報が存在します。この点、審査する担当者にとってすべて理解する事は困難であり、時には「Aという判断」がされ、それが誰の指摘も受けずに、申請者が不許可処分を受ける場合もあり得ます。
このような事態にならない為にも、私たちは入管側が判断を誤らないように申請段階で補正するような立証資料を作成します。
一見不利益な判断がなされそうだが、過去の判決によると判断の考慮に入れるべきではないという場合も多くあります。
私たちは判例を引用し、つまり判例を武器に立証資料を作成することになります。
なお、私どものようなビザ専門家の多くは、あまり裁判まで発展させることは推奨していません。なぜなら、費用・期間・裁判に負けた場合の残される手段などを考えた場合にあまりにもリスクが大きく、再申請という行政手続き内で納める方がベターだからです。
あくまでも、過去の裁判を理解する目的は申請段階における適切な立証資料の作成を目指すものがほとんどです。
裁判の判決文の読み方
判決文は非常に長く、1万文字程度はザラにあります。
私は基本的にはすべて一読しますが、重要な部分は第一にどちらが勝訴したかです。
入管側が敗訴した判決は、入管側を行った判断が間違っているという裁判所の答えが読みとれますので、まずどちらが勝訴したかを確認します。
次に裁判所の判断文が重要です。申請者の勝敗に関わらず、重要な裁判所のセリフが一文一文に散りばめられています。
たとえ申請者が敗訴したような判決であっても、裁判所のセリフとして「申請者がAの状況なら許可すべきだが、申請者の実態的な状況はBなので不許可が相応しい」というものがあったとすれば、「申請者がAの状況なら許可すべきだが」という一文をピックアップして、ビザ申請の引用(武器)に活用する場合もあります。
このように判決文を読み、私たちはビザ申請に臨んでおります。