この記事では芸術ビザを取得するための条件である「在留資格該当性」と「その他実務上の要件」について解説します。
「在留資格該当性」については、在留資格認定証明書や在留期間更新の一般要件をご確認ください。
外国人が取得したい在留資格が本当に取得できるのか否か、また要件に適合せずに取得できない場合は、日本での在留を諦めるのではなく他のビザの要件に適合するか否か、これらを考える上で実務上はまずこの「在留資格該当性」を正確に把握して検討を進めなければなりません。
そして「在留資格該当性」だけではなく、在留審査の中で行われている「その他実務上の要件」というものも非常に重要となります。
教授ビザについて法で定められた「在留資格該当性」と法にはない「その他実務上の要件」の解説に進めます。
芸術ビザの「在留資格該当性」
まず入管法別表第1の2に定める法文は下記の通りです。
収入を伴う音楽、美術、文学その他の芸術上の活動(二の表の興行の項の下欄に掲げる活動を除く。)
用語の定義・解説
では「収入」には何が含まれるのか、「その他の芸術上の活動」とは具体的にどのようなものが含まれるかなど、法文を見ても分かりにくいと感じる方が多いと思います。これらについて詳しく解説を進めていきたいと思います。
「その他の芸術上の活動」とは(芸術と認められる範囲)
芸術ビザは、音楽・美術・文学だけではなく、演劇や映画などもに従事する活動も含まれます。
芸術ビザに該当する具体例は下記のとおりです。
- 画家、工芸家、彫刻家、写真家、著述家、作曲家、作詞家、等の芸術家
- 音楽、美術、文学、写真、演劇、舞踊、映画その他の芸術上の活動について指導を行う者
しかし、興行ビザも一部これらの活動に従事することとなっており、非常に紛らわしいところです。詳細は「他のビザとの境界」の項目で解説します。
「収入」とは
必要な収入の程度
芸術ビザ保有者が日本で芸術活動を継続的に行う為に十分な金額が要求されます。
具体的には、芸術ビザ保有者の生活費、旅費等の滞在費に加えて、画材や楽器等の芸術活動に必要な金額です。
他のビザとの境界
「教授」と「芸術」
大学・大学に準ずる機関・高等専門学校等において、芸術に関する研究、研究指導、教育を行う活動は、教授ビザが該当することになります。
「文化活動」と「芸術」
収入を伴わない芸術上の活動は文化活動ビザが該当することになります。
「興行」と「芸術」
興行ビザと芸術ビザは最もややこしいビザのうちの一つです。
区別の考え方としては、興行ビザは自らの身体・活動を公衆に見せる活動が対象となるのに対し、芸術ビザは自らが創作した創作物を公衆に見せる活動です。
従って、演劇・演芸・演奏等を自ら行う活動は興行ビザに該当し、芸術ビザには該当しません。オーケストラの演奏もたとえ芸術性があったとしても、自らの演奏を公衆に見せる活動であり、興行ビザに該当します。
さらに興行ビザも芸術ビザも、他人の活動の補助的・裏方的な活動も認められており、このような補助活動の場合にも興行ビザも芸術ビザの区別には注意が必要です。
例えば振付師という分類だけを見ると、興行ビザも芸術ビザも該当し得ます。区別の考え方としては、当該振付師が演出者に随伴して入国する者の場合には興行ビザが該当し、当該振付師が独立して入国する者の場合には芸術ビザが該当します。
つまり、芸術ビザ保有者は、様々な演出者に対して振付師という芸術活動を単独で行いながら日本に在留することができます。
一方興行ビザ保有者は、演出者に随伴し入国し、当該演出者に振付を指導し、興行活動期間が終了すれば、演出者と共に出国しなければなりません。(若干のタイムラグは認められます。)
芸術ビザの「その他実務上の要件」
芸術ビザにも法に定められた在留資格該当性以外にも、実務上考慮される要件というものが存在します。
実績要件
芸術ビザが認められる為には、過去に芸術家としての実績があることが要求されます。
例えば、展覧会への入選した事がある、賞を取得したことがある等が必要です。立証資料としても作品目録や、入選を証明するものが必要です。